
中国工業情報化部(工信部)のサイバーセキュリティ脅威・脆弱性情報共有プラットフォーム(NVDB)は2026年7月8日、米国のAIスタートアップ企業アンソロピック(Anthropic)が開発したAIプログラミングツール「クロード・コード(Claude Code)」に深刻な危害を及ぼす「安全上のバックドア」の隠れたリスクを発見したとして、公式ウェブサイトにリスク提示を掲載した。これを受け、中国のテック大手アリババ(阿里巴巴)は同ツールの社内使用を全面的に禁止する措置に踏み切った。中国メディアの観察者網などが伝えた。
未同意のデータ送信と対象バージョン
工信部の発表によると、Claude Codeはテキストの要求に応じてコードの作成や修正、デバッグ、分析などを自律的に実行できるAIエージェントツールである。しかし、同ツールには監視メカニズムが内蔵されており、ユーザーの同意を得ることなく、ユーザーの地域(位置情報)や身元に関連する識別子(ID)などの機微情報を遠隔サーバーに送信する脆弱性が存在するという。
監視対象として指定されたのは、バージョン2.1.91から2.1.196までのClaude Codeである。工信部は関係機関やユーザーに対し、直ちに全面的な調査を展開し、該当するバージョンがインストールされている開発端末からは「直ちにアンインストールするか、関連コードがクリアされた最新の安全なバージョンへアップグレードする」よう勧告した。あわせて、基幹業務ネットワーク内における開発ツールの外部接続権限の管理統制とトラフィック監視を強化し、機微データの違法な外部流出を防止するよう呼びかけている。
中国ユーザーの凍結と特定仕組みの暴露
背景には中米間のAIを巡る対立がある。アンソロピック社は中国や同社が敵対国とみなす国からのプラットフォーム利用を禁止している。しかし中国のユーザーは、VPNによる地域制限の回避、サードパーティのAPI中継サービス、あるいは海外で登記したシェルカンパニーやクラウド事業者を経由する形で同ツールを利用してきた。
報道によると、6月末以降、これら大量の中国ユーザーのClaudeアカウントが予告なしに一斉に凍結(バン)される事態が発生していた。その原因を調査する過程で、アンソロピック側がユーザーの端末情報を利用して、中国との関わりを秘密裏に特定する仕組みが存在することが明らかになった。このシステムは、ローカルのタイムゾーンやプロキシアドレスなどの情報からユーザーが中国に関係しているかどうかを判別し、その結果をシステムプロンプト(システム提示詞)の中に隠してサーバーへ送り返す仕組みになっていたとされる。
アンソロピック側エンジニアの弁明
これらの指摘に対し、アンソロピック社全体としての公式コメントは出されていないが、Claude CodeのエンジニアであるThariq Shihipar氏がX(旧Twitter)上で報道に言及する形でメカニズムの存在を認めた。
同氏の説明によると、この仕組みは今年3月に導入された「実験的」な不正利用防止策(反濫用措置)であった。目的は「許可されていないディストリビューターによるアカウントの不正利用の防止」および「データ蒸留(ディスティレーション攻撃)からの自社保護」であるとしている。同氏は、チームはすでにさらに厳格な安全措置を実施しており、以前からこの機能の削除を計画していたとした上で、「明日のアップデートで完全に削除される」と投稿した。
アリババと米アンソロピックの応酬
今回の工信部の警告に先立つ7月3日、アリババ内部ではClaudeを「逆禁止」することが発表されていた。アリババ内部の関係者が明らかにしたところによると、Claude Codeにバックドアが植え付けられている安全上のリスクが暴露されたことを受け、総合的な評価を行った結果、同ツールを高リスクソフトウェアのリストに組み入れた。
アリババは7月10日より、社内スタッフが業務環境下でClaude Codeを使用することを全面的に禁止する。また、代替案としてアリババが自社開発したプログラミング支援AI「Qoder」の使用を推奨している。
なお、両社の間には以前から摩擦が生じていた。今年6月、アンソロピック社が米国連邦議会に送った書簡の中で、アリババが約2万5000個の偽アカウントを通じてClaudeの中核的な能力を不正に詐取したと告発し、同社がこれまでに遭遇した中で最大規模の「蒸留攻撃」であると指摘していた背景があり、技術流出を巡る応酬が激化している。
出典
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