中国、出入国管理を大幅強化 新規則で出国制限拡大、海外では恣意的運用に懸念

中国政府は2026年7月31日、「国務院による出入国管理に関する規定」を公布し、9月15日から施行すると発表した。新規則は全19条で構成され、国家安全や産業・技術安全を理由とした出国制限を明文化したほか、出入国審査や出入国仲介サービスへの管理を強化する内容となっている。中国政府は、中国国民の海外渡航に伴う安全リスク対策や外国人入国管理の適正化を目的とする制度整備だと説明している。一方、海外では当局の裁量権拡大や恣意的な運用につながるとの懸念が広がっている。

中国出入国管理規定 国家安全を理由に出国制限を明文化

新規則では、中国国民が海外で国家安全や国家利益を損なう違法行為を行った場合や、輸出管理、技術輸出入管理などの規定に違反し、国家の産業安全や技術安全に危害を及ぼすおそれがあると判断された場合、関係機関は出国を認めないことができると規定した。また、高リスク国・地域へ渡航しようとする中国国民に対しては、必要に応じて渡航自粛を勧告できる。

さらに、海外で国家安全や国家利益を害する行為を行ったと認定された中国国民は、帰国後も6か月から3年間出国を禁止される可能性がある。規定では「おそれがある」との文言が繰り返し用いられ、省級政府や商務主管部門などにも出国禁止を決定する権限が与えられた。

出国審査を厳格化 電子データ提出や非通知措置も

新規則では、出国理由の確認に当たり、関係機関は書類や資料に加え、「電子データ」の提出を求めることができる。また、国家安全や刑事事件の捜査に影響を及ぼすおそれがある場合には、出国禁止の理由を本人に通知しないことも認められた。このため、本人が空港で出国手続きを行う段階で初めて出国できないことを知らされる可能性がある。

中国司法部、公安部、国家移民管理局は8月1日の記者会見で、新規則制定の背景として、①中国国民の海外渡航時の安全リスク対策、②外国人入国管理の規範化、③出入国仲介サービスの管理強化――の3点を挙げた。中国政法大学法学院の成協中教授も、中国司法部への寄稿で、国家安全と利益を守る上で極めて必要性と緊急性が高い制度だと評価した。

海外では裁量権拡大や恣意的運用を懸念

一方、海外では新規則への懸念が相次いでいる。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)は、条文で「おそれがある」との表現が繰り返し用いられており、当局の判断だけで出国を制限できる余地が大きいと指摘した。また、これまで内部運用されてきた出国制限措置を制度化したものだと報じた。

シンガポール経営大学の高樹超教授は、第4条によって政府の出国禁止権限が大幅に拡大され、国家安全上のリスクがあると判断された人は、本人に通知されないまま出国を制限される可能性があるほか、司法審査を求める機会も失われる恐れがあると指摘した。また、地方政府にも権限が委ねられたことで、地域ごとの運用の違いや権限乱用のリスクが高まるとの見方を示した。

台湾メディアは、新規則によって出国審査が従来の「書類確認」から「渡航目的や動機の確認」へと変化する可能性があると報じた。また、AIや先端技術分野に対する管理強化と連動し、国家の産業安全や技術安全を理由とした人材・技術流出防止策の一環との見方も紹介している。

一方、中国共産党系メディアの環球時報は、西側メディアが中国の「鎖国化」を印象付けようとしていると反論し、中国を実際に訪れた外国人は報道とは異なる現実を見ていると主張した。新規則を巡る評価は、中国政府と海外メディア・法学者との間で大きく分かれている。


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