中国共産党中央は2026年7月14日、前新疆ウイグル自治区党委員会書記で党中央政治局委員だった馬興瑞氏を、党籍・公職剝奪(双開)処分とし、収賄容疑で検察当局へ送致したと発表した。航空宇宙分野出身の「技術官僚」で、習近平総書記が将来の党・国家指導者候補として重用した人物の失脚である点に加え、軍需・航空宇宙分野への反腐敗が最高レベルに及んだ象徴的な事件として注目を集めている。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)、ドイツ公共放送ドイチェ・ヴェレ(DW)などが報じた。
馬興瑞氏に「双開」処分 組織的腐敗を認定
党中央紀律検査委員会と国家監察委員会は、馬氏が政治規律と政治上のルールに重大に違反し、党内統治の責任を十分に果たさず、側近による重大な規律・法令違反や犯罪行為を黙認・放置したと認定した。
さらに、人事で他人に便宜を図ったほか、本人や親族による不正な就職あっせん、贈答品や現金の違法な受領、親族への不動産取得支援、「権銭交易」「権色交易」「銭色交易」、一族ぐるみの腐敗なども処分理由に挙げられた。企業経営や工事受注、人事昇進などで便宜を図る見返りとして、本人や親族、特定の関係者を通じて巨額の財物を受け取ったと認定され、党籍・公職の剝奪と違法所得の没収、検察当局への送致が決定した。
航空宇宙出身の「技術官僚」が失脚
馬氏は航空宇宙分野の研究者から政界入りした技術官僚で、中国有人宇宙プロジェクト「神舟」の開発・打ち上げに携わった。中国航天科技集団幹部、国家国防科技工業局局長、広東省長などを歴任し、2021年12月に新疆トップへ就任。2022年10月の中国共産党第20回党大会で党中央政治局委員となり、副国級指導者へ昇格した。
新疆ではインフラ整備や経済発展を重視する一方、社会統制政策を継続したと評価される。2025年7月に新疆トップを退任した後、重要会議への欠席が続き、2026年4月3日に重大な規律・法律違反の疑いで調査を受けていることが公表された。
軍需産業への反腐敗が政治局委員級へ拡大
BBCは、馬氏の失脚について、習近平政権が軍需産業出身者を重用してきた流れの中で起きた象徴的事件と位置付けた。第20回党大会では、馬氏のほか、袁家軍氏、張国清氏、劉国中氏の4人が軍需産業出身者として政治局入りしていた。
米ニューヨーク州立大学オールバニ校の陳澄教授は、馬氏の失脚は中国軍が進める大規模な反腐敗運動と密接に関係している可能性が高いと指摘した。ロケット軍幹部の粛清から始まった反腐敗は国防産業へ広がり、中国航天科技集団を含む軍需系中央企業11社の幹部が相次いで摘発対象となっているという。
DWも、中国では国防・宇宙分野への反腐敗が一段と強化されていると報じた。今年2月には国家国防科技工業局元副局長の張建華氏が起訴され、国防・航空宇宙・原子力産業に関係する全国人民代表大会代表3人も代表資格を失った。また、中国軍制服組トップ級の張又侠氏や劉振立氏らについても調査が続いている。
RFI「政治事件ではなく組織的腐敗が中心」
RFIは、中国共産党の通報には「政治的野心」「党への不忠誠」「派閥形成」など政治事件で多用される表現が見当たらないことに注目した。政治評論家の鄧聿文氏も、今回の事件は政治闘争ではなく、権力、金銭、家族利益が結び付いた組織的腐敗事件との見方を示している。
一方でRFIは、中国では高級幹部の事件が最終的に経済犯罪として公表され、政治対立は表面化しない傾向があるとも紹介した。また、習近平総書記が自ら登用した幹部の失脚が相次ぐ中、党の人事審査制度や最高指導部の人材登用の妥当性を疑問視する見方も出ていると伝えている。
出典
- 在任中共政治局委員馬興瑞為什麼被雙開(RFI)
- 技術官僚落馬 中央政治局委員馬興瑞被雙開(DW)
- 前新疆書記遭「雙開」被指大搞家族腐敗、權錢色交易
- 馬興瑞被「雙開」 中共軍工系統隕落(中央社)
- 前新疆書記遭「雙開」被指大搞家族腐敗、權錢色交易(中国時報)
