中国で9月15日、出入国管理を強化する新たな行政規則「国務院による出入国管理に関する規定」が施行される。中国国民の出国制限を明文化した内容で、台湾では台湾人への適用範囲が不明確だとして警戒が広がっている。一方、中国国内では新規則の施行前から、詐欺対策や国家安全などを理由に一般市民や公務員、国有企業職員らが出国を制限された事例が報告されている。
中国の出入国新規則、国家安全や技術流出で出国制限
新規則は全19条で、7月31日に公布された。中国国民について、海外で違法・犯罪行為に関与して国家安全や利益を損なった場合、帰国後6カ月から3年間、出国を認めないことができる。また、輸出管理や技術輸出入管理の規定に違反し、中国の産業安全や技術安全を損なう恐れがある場合にも出国を制限できる。
一方、台湾の中央通信社によると、東京大学東洋文化研究所の林泉忠特任研究員は、新規則が台湾人にどこまで適用されるかは今後の解釈を待つ必要があると指摘した。新規則には台湾住民に関する専用条項がなく、台湾住民が使用する「台湾居民来往大陸通行証(台胞証)」の所持者への適用方法も明確に示されていない。
台湾人の台胞証、新規則の適用範囲は不透明
台湾の対中政策を担当する大陸委員会(陸委会)は、中国側が台湾人を「中国人」と位置付けていることから、輸出管理や技術輸出入管理などへの違反を理由に台湾人の出国を制限する可能性があるとして注意を呼び掛けている。
林氏は、一般の台湾人が中国を旅行、親族訪問、短期交流する場合、9月15日以降に一律で出国審査や出国制限を受けることを示す証拠は現時点でないとする一方、新規則が台湾人と完全に無関係と判断するのも適切ではないと分析した。特に中国で勤務、投資、技術協力に携わる台湾企業関係者や半導体などの技術者、研究者、機密性の高い技術を扱う人は注意が必要としている。
林氏によると、台胞証は中国国籍を証明する文書ではないものの、単なる中立的な旅行証明書でもない。中国側の法制度では台湾住民は外国人とは異なる位置付けにあり、状況によって法的な扱いが変わる可能性があると指摘した。
新規則施行前から中国人への出国制限
BBC中国語版が報じた事例では、湖南省出身の25歳男性が今年6月、マレーシア滞在中に地元警察から帰国を求められた。帰国後、出入国管理当局のシステムで「通信詐欺に関与する危険性が高い人物」とされ、香港、マカオを含め出境できなくなったという。男性の説明をBBCは独自に確認できていない。
男性は警察への問い合わせや行政窓口への申し立てを続け、8月17日までに詐欺関連のリストから外されたと説明しているが、依然として自由に出境できないという。また、香港の反政府デモを巡り香港メディアの取材を受けた中国人男性は、2023年以降、旅券の申請を受理されない状態が続いているとBBCに証言した。
公務員や国有企業職員は旅券を職場で管理
出国管理は公務員や国有企業職員にも及んでいる。BBCによると、中国では公務員の旅券を勤務先が集中管理する制度が以前からあり、一部では公立学校教員、銀行員、国有企業職員などにも対象が広がっている。北京の国有金融機関で働く男性は、旅券を勤務先に預け、海外旅行には上司の段階的な承認が必要だと説明した。
新規則はこうした既存の出国管理に加え、海外での行為や輸出管理、技術流出などを理由とする出国制限を行政規則として明記した。台湾人については適用範囲が明確になっておらず、9月15日の施行後に中国当局が実際にどのように運用するかが焦点となる。
