中国の人権状況を調査する非政府組織「中国人権擁護者ネットワーク(CHRD)」は9月16日、中国各地で2016~2025年に報告された拷問・虐待疑惑209件を分析した報告書を公表した。警察や拘禁施設、刑務所の職員による殴打や電気ショック、睡眠・食事・水の剥奪、低温環境への放置、医療の不提供などが続いていると指摘した。
報告書は53ページで、209件の記録に加え、釈放された良心犯や家族、弁護士ら25人への聞き取りを基にまとめた。CHRDは、思想や信条、政治・社会活動を理由に収監された良心犯が特に被害を受けやすく、拷問や虐待が自白の強要に使われる場合があるとしている。
約35%で適切な医療を受けられず
CHRDによると、調査対象の5分の1に当局者による殴打の訴えがあった。単独での隔離や電気ショックのほか、鉄製のおりへの収容、手首をつり上げる行為なども報告された。
最も多かったのは、病気やけがを抱える拘禁者に適切な医療を提供しないケースで、全体の約35%を占めた。少なくとも16人が拘禁中、必要な治療を受けられずに死亡した疑いがあるという。ただし、これらの数字はCHRDが収集した疑惑事例の分析結果であり、中国の拘禁施設全体における発生率を示す統計ではない。
ドイツ国際放送ドイチェ・ウェレ(DW)が伝えたフランス通信(AFP)の取材では、湖北省の人権活動家、尹登珍氏の家族が、同氏が判決を待つ間にリンパ腫を患い、体重が約35キロまで減ったと証言した。当局はその後、健康上の問題はないと判断し、武漢女子刑務所へ移送したという。
裁判所が調査したのは2件
209件のうち、裁判所が拷問の有無を調査したとCHRDが確認できたのは、人権派弁護士の丁家喜氏と独立系記者の黄雪琴氏に関する2件だけだった。いずれも裁判所は拷問を裏付ける証拠がないと判断した。
活動家の季孝龍氏の裁判では、不当な取り調べで得られたとして供述が証拠から排除された。CHRDによると、対象となった209件で供述の排除が確認された唯一の例だったが、季氏には有罪判決が言い渡された。拷問を行ったとして刑事責任や懲戒責任を問われた当局者は、確認できなかったとしている。
中国政府はAFPの取材に回答せず
中国は1988年に国連の拷問等禁止条約を批准している。中国国内法も拷問や暴力を伴う取り調べを禁じており、2025年には最高人民検察院が、司法制度内に拷問や違法拘禁の問題が存在すると認め、取り締まりを強化する方針を示した。
一方、中国政府はこれまで、国連機関や人権団体などが示した拷問疑惑を否定してきた。DWによると、今回の報告書に関するAFPの取材要請に対し、中国政府は記事掲載時点で回答していない。
CHRDは、拷問の申し立てを調査する独立機関の設置や、国連の拷問等禁止条約に国内法と実務を適合させることを中国政府に求めた。なお、9月17日時点で、今回の報告書を詳しく扱った香港、台湾、中国本土の主要メディアの記事は確認できなかった。
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