中国AI企業、利用者データをClaudeへ転送 解放軍関連監視情報も、Anthropicが報告

米人工知能(AI)企業Anthropicは9月10日に公表した脅威情報報告書で、中国のAI企業が自社サービスに入力された利用者の問い合わせを、本人に明示しないまま同社の生成AI「Claude」に転送していたと明らかにした。転送された情報には、中国人民解放軍に関係するとみられる監視データや中国国有企業の内部情報、ロシア国防省関連機関のデータベース認証情報などが含まれていたという。報告書は同時に、中国を拠点とする別の主体がClaudeを対魚雷システムや電子戦・防空制圧システムの開発、外国兵器に関する情報収集に利用した事例も公表した。

Kimiの問い合わせをClaudeに転送

Anthropicによると、中国のAIスタートアップ、月之暗面(Moonshot AI)は、自社AI「Kimi」に送られた一部の問い合わせをClaudeへ転送し、その回答をKimiの回答として利用者に表示していた。10日間だけで約30万件の問い合わせが転送され、主にシンガポールと日本にあるように見せかけた5380件の不正アカウントが使われたという。Anthropicが5~7月に月之暗面に帰属すると判断したClaudeとのやり取りは2300万件を超えた。

その中には、人民解放軍と関係がある可能性が高いとAnthropicが判断した利用者による監視活動もあった。利用者はKimiを使い、特定人物について成都の数百台の監視カメラ映像を分析し、行動に異常がないか調べようとしていた。映像には軍施設、中国電子科技集団傘下の研究機関、大手国有企業の周辺に設置されたカメラのデータが含まれていたという。Anthropicは、利用者がデータがClaudeへ送られることを認識していたか確認できていないとしている。

DeepSeekについても、利用者の一部の問い合わせをClaude Opusに転送していたとAnthropicは指摘した。2026年7月の14日間だけで1210万件を超えるやり取りを確認したという。中国のある市の公安局向け事件管理システムを開発していた技術者の問い合わせや、ロシア国防省に関係する政府機関のデータを扱うIT担当者の問い合わせも転送され、後者ではロシア政府データベースの有効な認証情報がClaude側に送られたとしている。

Anthropicは、DeepSeek、小米、月之暗面などがClaudeの回答を自社モデルの訓練に利用する「蒸留」を行ったと主張。アリババについては5~7月に1億5100万件を超えるClaudeとのやり取りを確認したとしている。

中国拠点の主体が兵器開発にもClaude利用

今回の報告では、データ転送問題とは別に、中国を拠点とする主体によるClaudeの軍事利用も明らかにされた。

Anthropicによると、中国の防衛産業メーカーと関係するとみられる主体は、人民解放軍海軍への提案を目的に、対魚雷兵器の射撃管制システムの仕様書や200ページを超える技術提案書をClaudeで作成した。米海軍の対魚雷・対潜水艦システムとの比較や、射撃管制ソフトの一部開発にも使っていたという。

別の中国拠点の研究者は、Claudeを使って電子戦と敵防空網制圧のための約16モジュールからなるソフトを開発。途中でシミュレーション対象を台湾の12カ所に変更し、早期警戒レーダー、パトリオットと天弓ミサイル部隊、主要空軍基地、指揮施設などを分析対象とした。Anthropicは、アカウント情報などから、この人物が人民解放軍軍事科学院を含む中国の研究機関と関係していたと判断している。

さらに、中国の防衛情報関係者とみられる別の主体が、外国の高出力マイクロ波兵器について公開情報を集め、部品や供給企業を特定するためClaudeを利用していた。兵器の解析や対抗策開発、中国共産党・軍・国家安全機関上層部向けの内部資料作成が目的だったとされる。

Anthropicはこれらのアカウントを停止し、兵器開発などを検知する安全対策を強化した。

中国外務省はロイターの取材に、Anthropicの今回の具体的な報告について「承知していない」とした上で、中国はAIの健全な発展を推進しており、事実を歪曲して中国を攻撃、中傷することに反対すると表明した。中国外務省は9月9日にも米政府による中国AI企業への技術窃取批判について「不実な非難と中傷」をやめるよう求めている。

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(2026年9月14日)
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