モンゴル草原火災、約53万ヘクタール焼失 保護区の8割被災、中国国境にも迫る

 モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡のヌムルグ自然保護区で10月8日に発生した草原火災は、同国自然環境・気候変動省の20日時点の初期集計で、焼失面積が約53万ヘクタールに達した。保護区内の被災面積は約47万ヘクタールで、全体の79.8%を占める。火勢は中国・内モンゴル自治区との国境に迫ったが、中国側への延焼は阻止された。

車両下部から発煙、草地に燃え広がる

 出火には、KDDI傘下の現地通信会社モビコムの車両が関係した可能性がある。両社の説明によると、社員らは6~8日、通信網の開通式典への出席と4G通信品質の確認のため、国境警備隊の許可を得て保護区に入った。社員7人が乗る車両2台に当局の車両3台が同行していた。

 一行は車両下部に付着する枯れ草を除くため、20~30分ごとに停車していた。8日の移動中、停車した車両の下部から煙が出ているのを確認。社員と同行当局者が消火を試みたものの、周囲の草に燃え移り、延焼を食い止められなかったという。発煙の具体的な原因と火勢が拡大した要因は、モンゴル当局が調査している。

 新華社は現地の複数媒体を引用し、一行が狩猟や希少魚の釣りを計画していた疑いを伝えた。一方、KDDIは通信関連業務での訪問と説明し、社員によるその他の法令違反を否定している。訪問目的を巡る疑惑について、当局の最終判断は確認できていない。

中国側は3400人超を動員

 火災は強風などの影響で拡大し、内モンゴル自治区のシリンゴル盟、ヒンガン盟、フルンボイル市の国境沿いを脅かした。中国側は消防救援隊や地方の消火隊、林業関係者ら3400人超を動員。防火帯の拡幅や、前方の草を計画的に焼いて燃料を減らす迎え火などで延焼を防いだ。

 中国中央テレビによると、15日正午までに火勢を国境で食い止め、中国領内への延焼はなかった。モンゴル側の火は16日までに消し止められた。

保護区には草原のほか森林、河川、湿地が分布する。モンゴル当局は生態環境の損害評価を開始した。KDDIは23日に謝罪し、調査への全面協力と自然環境の回復に取り組む方針を示した。

 日本在住のモンゴル出身の男性によれば、今回の火災現場は1939年に日本軍・満州国軍(当時)とソ連軍・モンゴル軍の間で起きた大規模な国境紛争「ノモンハン事件」の戦場に近い微妙な地域。また、モンゴルのオチラル首相が9月27日から30日の日程で公式来日し、9月29日に高市早苗首相と首脳会談を行ってからまもなく起きた。

 この男性によると、天皇皇后両陛下が25年7月にモンゴルを訪問した際は、中国の王毅外相が直後にモンゴルを訪れた。中国は、日本とモンゴルの接近に神経を尖らせているという。

 ノモンハン事件は、1939年5~9月、現在のモンゴル東部と中国・内モンゴル自治区の国境付近で、日本・満州国軍とソ連・モンゴル軍が衝突した大規模な国境紛争である。国境線の認識の違いを背景に戦闘が拡大し、双方とも大きな損害を受け、9月に停戦した。モンゴルやロシアでは「ハルハ河の戦い」と呼ばれる。

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