中国で遺伝子編集治療後にDMD男児が死亡
中国で遺伝子編集治療の臨床試験を受けたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の男児が2025年8月に死亡していたことが分かった。米医療ニュースサイト「STAT News」が2026年8月5日に報じ、治療法を開発した上海のバイオ企業、輝大基因(HuidaGene Therapeutics)も同日、死亡を認めた。中国で遺伝子編集治療を受けた子どもの死亡が明らかになるのは約2週間で2件目となる。
DMDは主に男児に発症する進行性の筋疾患で、遺伝子変異によって筋肉を保護する重要なタンパク質「ジストロフィン」が不足し、全身の筋肉が徐々に萎縮する。現在の治療法では根治や病気の進行を完全に止めることはできない。
輝大基因の「HG302」、高用量AAVを全身投与
臨床試験は2024年12月、上海交通大学医学院附属上海児童医学センターで開始され、4~8歳で歩行能力が残るDMD男児を対象とした。「研究者主導臨床研究(IIT)」として実施された。
男児が投与を受けた「HG302」は、新型のCRISPR DNA遺伝子編集治療で、改変したアデノ随伴ウイルス(AAV)を運び役としてDNA編集に必要な成分を細胞内に送り込む。死亡した男児は「HG302-01」に登録された4人目で最後の被験者だった。
輝大基因は当初、低用量で投与していた。陸英明・前最高経営責任者(CEO)は2025年5月、米国遺伝子・細胞治療学会の年次総会で、最初の低用量投与を受けた男児からジストロフィンがごく微量しか検出されなかったと説明した。同社はその後、投与量を体重1キログラム当たり約100兆個のウイルス粒子に引き上げた。
重篤な免疫反応で急性呼吸窮迫症候群を発症
死亡した男児は2025年8月、高用量のAAVベクターを全身投与された後、補体系とサイトカインが著しく活性化する重篤な免疫反応を起こし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症して死亡した。高用量のAAVを使った治療では、世界の別の臨床試験でも致命的な免疫反応が起きた事例がある。
輝大基因は、臨床検査や免疫学的分析、病理学的分析、遺体の解剖による分析などを実施し、治療との因果関係を調査したとしている。研究施設は事案を把握後、「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」に従い、期限内に病院の倫理委員会や関係主管当局へ報告したという。
同社によると、残る3人の被験者には同様の重篤な症状は確認されておらず、現在も長期的な経過観察を続けている。調査結果は2026年1月に査読に提出し、詳しい科学的内容は論文発表後に公開するとしている。
遺伝子編集治療の子ども死亡、約2週間で2件判明
一方、死亡後も研究の進展について公式発表はなく、2025年5月の学会発表後、15カ月にわたり新たな情報は公表されなかった。2026年2月には臨床試験登録プラットフォームで研究の状態が「完了」とされた。
これに先立つ2026年7月23日、国際学術誌「Science」などは、希少遺伝性疾患を患う6歳女児が2025年3月、上海交通大学医学院附属新華医院で脳を標的とする遺伝子編集治療を受けた後、重篤な免疫反応で死亡していたと報じた。研究チームがその後発表した論文では、この人体試験と女児の死亡について明らかにしていなかった。関係当局や上海交通大学医学院が調査している。
2件はいずれもIITとして実施された。報道によると、中国では近年IITが大幅に増加しており、相次ぐ死亡事例を受け、監督体制や安全上の問題の報告、情報公開の仕組みに関心が集まっている。
出典
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(2026年8月7日)