広東省掲陽市の犬虐待事件、世界で追悼活動が拡大
中国広東省掲陽市で2026年6月28日、4人の少年が野良犬の母犬「旺旺」と3匹の子犬を虐待し殺した事件が世界的な波紋を広げている。母犬は棒で何度も殴られた後、可燃性液体をかけられて焼き殺され、子犬も殴打や首を針金で締められるなどの虐待を受けた末に殺された。事件の映像がインターネット上で拡散すると、中国国内外で動物保護法制定を求める声が急速に高まり、米ニューヨークや東京・渋谷、台湾・台北などでは追悼広告が掲出されたほか、署名活動や募金活動も相次いでいる。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)、英国放送協会(BBC)、台湾の中央通信社(CNA)などが伝えた。
中国では動物保護法が未整備
掲陽市掲東区新亨鎮政府は6月30日、警察が事件として立件し捜査を開始したと発表した。加害者4人はいずれも14歳未満で、専門学校で教育を受けさせる措置を取るとともに、教育部門が学校に対し生徒への教育強化を指示したとしている。
中国では絶滅危惧種を対象とした「野生動物保護法」はあるものの、全国的な動物保護法や動物虐待防止法は整備されていない。また、16歳未満の未成年者は殺人や強姦など重大犯罪を除き原則として刑事責任を負わないため、現時点で加害少年が刑事責任を問われる見通しは示されていない。
事件後、中国国内では「旺旺に正義を」と訴える投稿が相次ぎ、映像を見たネットユーザーの中には「1週間眠れず、食欲もなくなった」とBBCの取材に語る人もいた。動物愛護に関心を持つ人々がオンライン上で連携し、立法を求める声が広がっている。
米国や日本、台湾など世界各地で支援活動
事件への反響は海外にも広がった。米ニューヨーク・タイムズスクエアでは「旺旺」の写真とともに、「彼女は愛されたことがある。生き続けたかった。本来なら今も生きているはずだった」と記した大型デジタル広告が放映された。
日本では東京・渋谷駅宮益坂口の電子看板で追悼映像が流され、台湾では台北101付近や台北市信義区、高雄市左営区、士林夜市などで市民が募金を集めて広告を掲載した。「地球は彼らの家でもある。一緒に旺旺と罪のない動物たちのために声を上げよう」「広東・掲陽『旺旺』事件に注目を」「動物虐待を拒否しよう」といったメッセージが掲げられた。
香港やマカオでは市民がバスや列車への広告掲載費を募り、カナダ・バンクーバーでも追悼広告が掲出された。中国の電子商取引サイト「淘宝(タオバオ)」では、「旺旺」と子犬を描いたステッカーなどの販売も始まっている。
さらに、市民有志は国際署名活動を開始し、掲陽市産製品のボイコットや事件の徹底調査を求めている。米国の動物保護団体「Lady Freethinker」も、中国政府に対し、保護者の責任を最大限追及するとともに、動物保護法の整備を求める請願を行っている。
SNS投稿削除相次ぎ、海外へ情報発信
一方、中国国内では関連投稿の削除が相次いでいる。小紅書(RED)や抖音(Douyin)では投稿の削除や表示制限、アカウント停止が報告され、俳優の杜江さんや台湾の女優・陳喬恩さんが動物保護を訴えた投稿も削除されたとされる。
中国当局は事件全体の議論を全面的に禁止してはいないものの、加害者が未成年であることを理由に関連情報の拡散を控えるよう呼び掛けている。7月下旬以降は「旺旺」や動物保護に関する投稿が相次いで削除されており、当局が「調和」を維持するために言論を管理する、いわゆる「河蟹(検閲)」の一環ではないかとの見方も出ている。
ネットユーザーはThreadsなど海外SNSへ情報発信の場を移しており、「中国国内では声を上げられないため、多くの人が海外で情報を広めてくれている」との声も紹介されている。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は7月23日、「平和的に怒りを表明することは国家安全保障への脅威と見なされるべきではない」として、中国当局に動物虐待に関する公共の議論への圧力をやめるよう求めた。また、「アムネスティ・インターナショナル」も7月27日、「過度な話題化の取り締まり」を理由とした言論の自由の制限をやめるよう中国政府に求めている。
学者はBBCに対し、中国では近年、動物虐待事件が相次いでおり、社会に蓄積した不満が今回の大きな反響につながったと分析した。その上で、この事件が動物保護法制定につながる契機となることへの期待を示している。
出典
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