河北省で「放水区」指定に住民猛抗議、当局と衝突 台風直撃の中国華北で緊迫高まる

河北省三河市で、放水区への指定に反発した住民と当局が衝突した。**台風9号(バービー)**の影響で華北地域が記録的な豪雨に見舞われる中、治水対策として進められた放水計画を巡り、住民の抗議活動が激化した。一方、河北省や遼寧省では道路寸断や大規模避難など被害が拡大している。

■ 河北省三河市で「放水区」指定を巡り住民と当局が激しく衝突

台風9号(バービー)の影響で華北地方が深刻な暴雨に見舞われる中、河北省三河市において、豪雨への対応を巡り緊迫した官民の衝突が発生した。

香港の『明報』および中央社の報道によると、三河市内の複数の村の村人が、自分たちの地域が当局によって「放水区(洩洪区)」に指定されたことに激しく反発し、2026年7月12日(日曜日)の夜に堤防付近に集まって抗議集会を開いた。

インターネット上に投稿された複数の動画には、三河市皇荘鎮や後葛荘などの村の村人が堤防付近に集まり、当局がショベルカーを用いて河道を切り開き、洪水を村の中に流入させようとする計画に強く反対する様子が記録されている。その際、集まった住民から「後葛荘の男たちが車(ショベルカー)を持ち上げた(横転させようとした)」との声が上がり、村人と政府関係者との間で一時激しい衝突に発展した。現場には警察官が配備され、警戒に当たった。

■ 首都防衛の歴史と不十分な被災補償に対する根強い不信感

三河市の村人がこれほど激しい抗議活動に踏み切った背景には、河北省の多くの地域がかつて当局によって「首都(北京)を守るため」の放水区(蓄滞洪区)として利用され、住民が一方的に甚大な犠牲を強いられてきた歴史がある。

2023年8月、北京や天津を含む地域で深刻な暴雨が発生した際、北京の安全を確保するために河北省内の7箇所の蓄滞洪区が稼働し、放水が行われた。この放水により、河北省霸州市の広範囲が水没し、家屋の倒壊などで数万人が家を失う甚大な被害が発生した。この際、国営メディアが「水害は豪雨(降雨)によるもの」と報道したため、放水による人為的災害であることを隠蔽されたと感じた霸州市の村人たちが強く反発し、警察との間で物理的な衝突が発生した。その後、霸州当局は公開書簡を発表して放水が災害を引き起こしたことを認め、補償を約束している。

しかし、こうした災害に対する補償が極めて不十分であることが、住民の間に強い不満と警戒感を残す直接の要因となっている。現行の国務院の規定では、蓄滞洪区の住民の損失に対して全額の補償は行われず、被害を受けた住宅への補償は70%にとどまり、農作物や養殖などの損失に対する補償は最低でわずか40%となっている。今回の三河市における衝突も、こうした過去の苦い経験と補償問題への不信感が引き金となっている。

緊迫した状況が続く中、国務院の劉国中副総理は2026年7月12日(日曜日)に北京郊外の平谷区にある滑子ダムと彰作ダムを訪れ、土石ダム、余水吐き(溢洪道)、放水施設、および下流の河道を直接視察した。劉副総理は、現在は主汛期(大雨のピーク期)にあたり、全国のダムの安全対策は極めて重要な任務であると言及し、流域の上流から下流までを科学的に調整して洪水をコントロールする「ピークカット(削峰錯峰)」を実施すること、また都市部の浸水被害を厳格に防ぐために関係部門が連携して調整を強化することを求めている。しかし、この「首都を守るための分流・放水」という政府の方針こそが地方への負担集中を意味しており、首都優先の治水政策が招く周辺住民との摩擦は一段と深刻化している。

■ 周辺地域における台風9号(バービー)による深刻な豪雨被害

この抗議活動の背景にあるのは、台風9号(バービー)の直撃による華北地方一帯の極めて深刻な気象災害である。

同じ河北省の承徳市寛城満族自治県も極端な豪雨により深刻な打撃を受けた。寛城鎮、孟子嶺郷、桲羅台鎮、龍須門鎮の4つの郷鎮に位置する計9つの村で、洪水によって道路が破壊されて交通が完全に遮断され、1800人以上の村人の移動が困難となった。

動画の証言によると、寛城鎮西冰窖村では断水と停電が発生し、多くの住民が取り残された。寛城の市街地の道路は急流と化し、多数の自家用車が押し流された。一部の村や町では冠水により民家が軒先まで水没し、屋根しか見えない状態となった。ある金物店の店主は、豪雨が2026年7月12日午後7時から約6時間続き、店舗のシャッターやガラスがすべて押し流され、大量の在庫商品を失ったと語っている。また、東冰窖村 of 住民によると、一時は水深が4メートルに達して屋根まで迫ったため、村人たちは2026年7月12日の夜から屋根の上で夜を明かし、翌13日朝午前7時ごろになってようやく救出された。

国家防災減災救災委員会は2026年7月13日、河北省の豪雨水害に対して「国家四級救災緊急対応」を起動し、被災地にワーキンググループを派遣して被害状況を確認のうえ、現地政府による被災者の基本的生活保障などの救助活動の支援を開始した。

また、隣接する遼寧省の省都である瀋陽市では、2026年7月12日(日曜日)から8時間を超える激しい豪雨が続いた。市民からは「天に穴が開き、上から水を浴びせられているようだ」との声が上がるほどの雨勢であった。瀋陽市気象局は、今回の降雨強度が「百年一遇(100年に1度)」のレベルに達したと発表している。

気象台のデータによると、2026年7月13日(月曜日)の午前0時から午前9時までのわずか9時間で、瀋陽市街地の平均降水量は195.2ミリに達し、最大累計雨量は290.5ミリを記録した。これは特大豪雨の基準とされる「24時間降水量250ミリ」を大幅に上回るものである。

この豪雨により、瀋陽市街地の低地や立体交差のガード下(アンダーパス)など計73箇所で深刻な冠水が発生し、水深が自家用車の屋根を超える事態となったため、これらの地点は封鎖管理された。また、市内の冠水した道路で男性1人が感電したとみられる状態で倒れているのが見つかり、通行人に救助されて病院に搬送された。現地警察は現在、現場の調査を進めている。

瀋陽市内の全94箇所の観光地は2026年7月13日に緊急閉鎖され、防汛緊急対応レベルは最高段階の一級に引き上げられた。気象台の予測では、特大豪雨は2026年7月14日(火曜日)朝まで続き、一部地域では降水量が250〜400ミリに達し、落雷や秒速17.2〜24.4メートル(風力8〜10級)の突風を伴うため、極めて高い災害リスクが警告されている。

遼寧省全体では累計17万人以上が避難を余儀なくされ、瀋陽、撫順、錦州などの地域では2026年7月13日に休校、操業停止、営業停止(三停)の措置が取られた。瀋陽市では2026年7月14日も引き続き、この緊急避難措置が実施されている。

出典

巴威掀「百年一雨」 瀋陽成澤國 遼寧疏散逾17萬人 河北承德1800村民被困 – 明報

河北村民抗議村莊被劃為洩洪區 爆官民衝突 – 中央社

抗議遭列「泄洪區」 河北爆官民衝突 – 明報

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