重慶市長が失脚 閣僚級の摘発は今年4人目、止まらぬ「トラ退治」の衝撃

胡衡華・重慶市長が失脚、一族ぐるみの腐敗疑惑

中国中央紀律検査委員会・国家監察委員会は20日、重慶市ナンバー2の胡衡華・重慶市共産党委員会副書記兼市長(62)を重大な規律・法律違反の疑いで調査していると発表した。省長や中央政府の次官以上の摘発は今年15人目に達し、その中でもトップエリートである正省部級(閣僚級)の失脚は4人目となる。 中国メディアの界面新聞などが伝えた。

消息筋によると、胡市長は17日午前に重慶で身柄を連行された。同時に、少なくとも4人の近親者も湖南省などで紀律検査当局に拘束されており、今回の失脚の主要な原因は「家族式腐敗(一族ぐるみの腐敗)」にあるとの見方が強い。胡市長には、特定の民営企業に国有資産を注入して電気自動車(EV)の充電施設を建設させた上、その運営益を20年間にわたり独占させるなど、職権を乱用した利益誘導を行った疑いも浮上している。

胡市長は湖南省の鋼管工場から叩き上げで昇進し、長沙市長や陝西省党委員会副書記を歴任。2021年12月に重慶市長に就任した。第20期共産党中央委員も務めるが、長沙市長時代の2022年に発生した54人死亡の自建房(住民による自力建築物)倒壊事故で組織指導責任を問われ、2023年5月に党内警告処分を受けていた。当時からその政治的前途には暗雲が立ち込めていたが、今回の摘発で完全に断たれることとなった。

EVインフラ事業を巡る不透明な利益供与

今回の失脚劇で注目されているのは、重慶市長としての在職中に行われたとされる新エネルギー分野への不透明な介入である。重慶市の知情筋によると、胡市長は特定の民間新エネルギー企業を強力に後押しし、国資(国有資産)系統に対して、EV用充電設備の建設資金を提供するよう要求したとされる。

このスキームの問題点は、建設資金を公金や国有企業の資産から捻出させながら、完成した設備の運営権および収益の分配権を、特定の民間企業に付与したことにある。しかも、その提携期限は20年という異例の長期にわたっていた。中国は国家戦略としてEVシフトを強力に推進しており、充電インフラ整備には多額の補助金や利権が絡む。ここに親族が介在する形で利益を誘導していたとすれば、習近平指導部が進める「反腐敗」の標的となるのは避けられなかったといえる。

また、胡市長は今年2月に失脚した易煉紅・元湖南省党委員会書記と長沙市で約3年間、市政を共に担っていた。二人の関係は当時から芳しくなく、政策を巡る分歧(意見の相違)も多かったとされるが、失脚の理由は奇しくも「一族ぐるみの腐敗」という共通項で結ばれることとなった。

「官界の蟻地獄」重慶が抱える政治的宿命

重慶市は、過去10数年にわたり中国政界において「官場万人坑(官界の蟻地獄)」という不名誉な呼び名で語られてきた。直轄市である重慶は、北京の中央政界へとつながる重要な足掛かりである一方、権力闘争の最前線となることも多い。

過去には、いずれも共産党政治局委員を務めた薄熙来、孫政才という二人の市党委員会書記が相次いで投獄された。さらに、歴代の公安局長である王立軍、何挺、鄧恢林の3名も失脚。北京での転落死を遂げた任学鋒・元市党委員会副書記など、異常なまでの幹部摘発が続いている。北京当局が「薄・孫の余毒の一掃」を掲げて進めた整粛は10年近くに及ぶが、その傷跡は今なお深い。

歴代の重慶市長に目を向けても、その歩みは多難だ。薄熙来と蜜月関係にあった黄奇帆氏は「灰頭土臉(不名誉)」な形で第一線を去り、現在は経済論客としての活動を余儀なくされている。唐良智氏は安徽省政治協商会議主席へと事実上更迭された後、一線を退いた。現在、国務院副総理として中央で活躍する張国清氏を除き、過去4代の市長のうち3人が不遇、あるいは失脚という末路を辿っている。

今回の胡市長の失脚は、単なる地方官僚の汚職摘発に留まらない。習近平指導部が第20回党大会以降も、閣僚級であっても容赦なく「虎」を叩く姿勢を堅持していることを示すと同時に、重要拠点である重慶市の安定がいかに困難であるかを改めて浮き彫りにした。中国の産業構造転換の柱であるEV事業において、公金が私物化されていた事実は、今後の産業政策に対する監視の目も一層厳しくさせることになるだろう。

[出典] ・界面新闻:重庆市长胡衡华被查,4天前最后一次露面RFI 华语:重庆市长胡衡华落马主因:应与家族腐败有关中央通訊社:重慶市長胡衡華落馬 4近親傳被帶走

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