ドイツ外相が北京訪問 ウクライナ停戦へ協力と供給網安定化要請 首相訪中へ露払い

■ ウクライナ情勢で中国に停戦働きかけを要請

ドイツのワーデフール外相は2025年12月8日、中国・北京で王毅外相、王文涛商務部長、韓正国家副主席らと相次いで会談し、ロシア・ウクライナ情勢を最重要議題として取り上げた。外相は「ロシアに影響力を持つ国の中で、中国の役割は極めて大きい」と指摘し、停戦に向けた圧力や外交的関与を強めるよう求めた。

中国側は「対話こそ唯一の政治的解決策だ」と従来の立場を繰り返しつつ、関係国に対し「相向かって進む必要がある」と述べ、交渉環境の維持を重視する姿勢を示した。

欧州ではウクライナ戦争長期化が安全保障・経済の両面で深刻化しており、中国がどの程度影響力を行使するかが今後の外交戦略の焦点となる。ワーデフール氏は「プーチン政権が戦争を継続できているのは第三国の政治・経済支援があるからだ」と述べ、中国の役割の大きさを改めて強調した。


■ レアアースと半導体の供給不安を協議 欧州製造業への影響が拡大

会談のもう一つの中心は、欧州企業を揺るがすサプライチェーンの不確実性だった。ワーデフール氏は、中国が強化するレアアースや半導体の輸出管理が自動車・電子産業などの基幹産業に深刻な影響を与えていると説明し、「継続する不確実性は解消されなければならない」と訴えた。

特に12月上旬に中国が発表したレアアースの新規輸出許可リストに、ドイツ企業が一社も含まれていなかった点は、ベルリンと産業界に強い衝撃をもたらした。欧州の電動車、電子部品、防衛技術はレアアース依存度が極めて高く、供給の不安定化は産業構造そのものに影響を及ぼす。

中国側の王文涛商務部長はこれに反論し、「欧州各国が中国企業に対し不当な行政介入を行っていることが、供給網の不安定化を招いている」と主張。半導体規制をめぐっては、オランダ政府が中国資本の安世半導体(Nexperia)を事実上管理下に置いたケースを引き合いに出し、「世界の半導体供給網の安定を守るべきだ」と訴えた。

欧中の先端技術をめぐる規制競争は複雑化しており、サプライチェーンの緊張が続くことへの懸念は国際市場でも高まっている。


■ 台湾問題で中国が強硬姿勢 日本の対台発言にも反発

王毅外相は台湾問題をめぐり、ドイツ側に一つの中国原則の堅持を改めて求めたほか、日本の現職指導者による対台発言を名指しで批判した。

王毅氏は「一つの中国原則は中独関係の重要な政治基盤であり、曖昧な余地はない。台独支持は中国内政への干渉だ」と強調。
中国外交部は会談後、「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「国連総会2758号決議」などの歴史的根拠を挙げ、台湾の地位は“多重に法的確認されている”とする立場を発表した。

一方のドイツ側は、「一つの中国政策を堅持する」と述べながらも、台湾海峡の平和と安定、自由航行の重要性を繰り返し主張しており、中国との間に一定の立場差を抱えたまま対話を続けている。


■ 訪中延期を経て再始動 メルツ首相訪中への布石

ワーデフール外相の訪中は当初10月下旬に予定されていたが、直前に中止された。ドイツ外務省は「高官会談の調整が不十分だった」ためと説明したが、中国側が外相の台湾・ウクライナ発言に不満を示し、接遇レベルを下げたとの見方が広がっていた。

今回の訪中は、両国が複数の対立点を抱えながらも対話の継続を望む姿勢を確認する機会となり、2026年初頭に予定されるメルツ首相の訪中に向けた外交的地ならしとなる。

[出典]

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