オランダ経済相が訪中中止 ネクスペリアを巡る中蘭対立が長期化、欧州サプライチェーンに波紋

ネクスペリア巡る対立 オランダ経済相が訪中を中止

中国資本の半導体メーカー、ネクスペリア(Nexperia)を巡る対立が続くなか、オランダのビンセント・カレマンス経済相は2025年12月2日、同月予定していた訪中計画を中止したと発表した。理由は「日程の衝突」とされるが、安全保障と技術管理を巡る中蘭間の緊張が高まる中、協議の先送りは両国関係の改善を難しくするとの見方も広がる。

オランダ政府は同年9月下旬、重要技術が中国へ移転するおそれを理由にネクスペリアへの行政介入を決定した。介入後、半導体供給網には混乱が生じ、中国側は強く反発した。オランダは11月19日に介入の一時停止を発表したものの、10月7日の商事裁判所の判断は効力を維持し、親会社の聞泰科技(Wingtech Technology)がネクスペリアを全面支配することには依然制限が課されたままだ。

カレマンス氏は議会への書簡で、政府が介入に踏み切った経緯を説明した。9月18日に「ネクスペリア経営陣が事業の中国移転計画を進めていた」との情報を受け、欧州の経済安全保障に重大な脅威と判断したという。9月25日に介入を決め、その後に英国、ドイツ、米国、中国へ順次通知した。

政府間協議の停滞、供給網への影響拡大

一方、聞泰科技は商事裁判所の決定を不服としてオランダ最高裁へ上訴し、支配権回復を求めている。11月26日には中国の王文濤商務部長がEUのシェフチョビッチ委員とオンライン会談を実施し、ネクスペリアの事業運営や供給網の混乱を巡り、関係当事者が協議を再開できるよう両政府が後押しする方針を確認した。

ネクスペリアはオランダに本社を置き、前身はNXPセミコンダクターズの標準部品部門。アジア、欧州、米国に事業を展開し、顧客にはボッシュ、華為、アップル、サムスン、ASUS、デル、HPなど世界的メーカーが並ぶ。半導体供給網が自動車・電子産業の生命線となるなか、中蘭の政策対立が企業の調達計画や納期に影響を及ぼす可能性も指摘されている。

今回の訪中中止は、欧州の技術管理政策と中国の産業政策が交錯する対立が長期化することを示す象徴的な出来事となった。供給網の再編を迫られる企業側は、調達の多元化やリスク分散策を急ぐ必要に迫られている。


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