西部航空でモバイルバッテリー発煙事故 機内安全とリチウム電池規制の課題

搭乗中の発煙、乗員が即時対応

 10月27日午前、深セン発済南行きの西部航空PN6333便で、乗客が持ち込んだモバイルバッテリーから突然煙が上がった。発生は地上での搭乗中で、客室乗務員が即座に緊急手順を起動し、煙を消し止めたうえで乗客を秩序立って降機させた。バッテリーは冷却後、安全に回収された。けが人はおらず、機体にも損傷はなかった。同便は安全確認後、午前11時45分に再出発し、後続便への影響はなかった。

 西部航空(重慶市)は「ご迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と謝罪し、利用者に対し「航空機ではできる限りモバイルバッテリーを持ち込まないようにし、持ち込む場合は3C認証を満たす製品を選んでほしい」と注意喚起した【出典:每日経済新聞新浪財経東網】。


リチウム電池の過熱リスクと安全基準

 今回の事故は発火には至らなかったが、リチウムイオン電池の熱暴走による火災リスクを改めて浮き彫りにした。過去にも中国国内でモバイルバッテリーや電動自転車用電池が発煙・発火する事故が相次ぎ、製造品質と安全管理体制への懸念が高まっている。

 中国ではモバイルバッテリーの製造に「3C認証」(中国国家強制性製品認証)取得が義務付けられているが、非正規製品や低品質品が市場に流通する例も多い。航空会社はこれを踏まえ、持ち込み制限を強化し、登機前の使用を避けるよう呼びかけている。

 関連報道では、電池の過熱が生じた場合、数秒以内に発煙・発火する可能性があると指摘されており、航空機という閉鎖空間では即時対応が不可欠だ。


航空各社で広がる安全対策

 中国民用航空局(CAAC)は近年、リチウム電池関連事故を受けて安全基準を段階的に強化してきた。特に2023年以降は「登機時の携帯電源管理マニュアル」を改定し、持ち込み可能な容量上限や発熱防止策を明確化した。

 主要航空各社も自主的な安全教育を進めており、西部航空のように発煙時に即座に消火・隔離を行う訓練が常態化している。こうした対応は、初期消火の成否が被害の大きさを決定づけるという過去事例から導き出されたものだ。

 民航当局はまた、乗客向けに「登機前は充電を控え、使用中の温度上昇に注意する」などの啓発活動を強化している。


中国製モバイルバッテリーの品質問題

 中国は世界最大のモバイルバッテリー生産国であり、国内外市場を合わせると年間出荷量は数億台規模に達する。その一方で、急増する小規模メーカーの中には安全基準を満たさない製品も存在し、発火や爆発事故の原因となっている。

 特に廉価モデルでは、保護回路設計の不備や劣化セルの使用が問題視されており、2024年には50万個以上がリコール対象となった(関連記事:モバイルバッテリー50万個リコール 航空火災に関係か)。

 専門家は「安全性検査の国際認証を取得していない製品を航空機に持ち込むことは極めて危険」と警告しており、消費者側にも選別意識が求められている。


今後の展望:安全規制と市場再編

 今回の西部航空の事例は、適切な初期対応により被害を最小限に抑えた好例といえる。今後は、航空会社・電池メーカー・監督当局が連携し、安全基準の統一と違反品排除の徹底が不可欠となる。

 すでに中国民航局は、航空会社に対して「電池製品の製造元情報の確認」「高温下での充放電試験の導入」を義務化する方向で検討を進めている(関連記事:中国国際航空機でリチウムイオン電池発火 中国民航局が安全規制を強化へ)。

 また、【特集: 中国製モバイルバッテリー問題 発火事故から経営危機へ】でも指摘されるように、事故を契機にメーカーの淘汰と再編が進む可能性が高い。安全性とブランド信頼の両立が、次の競争軸となるだろう。


[出典]
每日経済新聞(中国語)新浪財経東網

[関連情報]
特集:中国製モバイルバッテリー問題 発火事故から経営危機へ
モバイルバッテリー50万個リコール 航空火災に関係か
中国国際航空機でリチウムイオン電池発火 中国民航局が安全規制を強化へ

タイトルとURLをコピーしました