米科学誌サイエンスは10月22日、米国立衛生研究所(NIH)が進めた研究者の外国機関との関係を巡る調査について、元連邦捜査局(FBI)捜査官タム・ダオ氏の情報提供が端緒だったと報じた。研究費や所属関係の申告、研究審査の秘密保持を巡る問題が調査対象となった一方、中国系研究者への不当な疑念や研究交流の萎縮も問題となった。
ジェフリー・マービス記者によると、心理学の研究者から防諜捜査官に転じたダオ氏は2014年以降、NIH幹部と面会した。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が、NIHの研究費審査に関する秘密情報を中国の研究機関側に提供した疑いを伝え、捜査で得た情報を共有したという。
これを受け、NIH側は外国との関係の申告漏れなどを調べる体制を整え、研究費を受給する大学に調査を要請した。同誌が紹介したNIHの集計では、2026年6月までに未申告の所属関係238件が確認され、その中には未申告の研究費支援197件が含まれた。調査に関連して研究者122人が職を失い、216人が研究審査への参加を禁じられたという。これらの措置を受けた全員について、スパイ行為が刑事裁判で認定されたことを意味するものではない。
司法省は、中国系研究者を不当に標的にしたとの批判を受け、2022年に「チャイナ・イニシアチブ」を終了した。ただ、NIHの調査はその後も続いており、両者は区別する必要がある。
ダオ氏は無実の研究者の評判を損ねた事例や人材流入への悪影響を認める一方、研究安全保障のための調査には意義があったと主張した。現在はライス大学で安全対策などを担当し、外国政府による不適切な働き掛けの頻度を調べる研究を進めている。同誌は、研究保護の必要性と調査が研究者に及ぼす影響の双方を取り上げた。
出典:Jeffrey Mervis/Science、2026年10月22日。原題:The instigator。原記事。DOI:10.1126/science.zr9p2fz。
