中印国境で中国軍との対峙続く、インドが巡回活動を批判し中国反論

インド北東部アルナチャルプラデシュ州の中国との国境地帯で、インド側部隊と中国人民解放軍の対峙が複数地点で続いていることが明らかになった。インド政府は中国軍が従来の巡回方式から逸脱し、国境地域の平穏を乱していると批判している。これに対し、中国外務省の郭嘉昆報道官は10月26日の定例記者会見で、両国間の合意に従って通常の巡回・管理活動を実施していると反論した。両国は外交・軍事協議を続けているが、国境の実効支配線をめぐる認識の違いが改めて表面化した。

インド国境警察長官、複数地点での対峙継続を認める

 インド紙インディアン・エクスプレスによると、インド・チベット国境警察(ITBP)のシャトルジート・カプール長官は22日、ラジャスタン州アルワルで開かれた隊員表彰式で、アルナチャルプラデシュ州の複数地点で中国軍との対峙が発生し、現在も続いていると明らかにした。

 カプール長官は、ITBPが新たに編成した特殊部隊「シャウリヤ・コマンドー」が現地で重要な役割を果たしていると説明し、隊員の活動を評価した。インド政府の高官が今回の対峙の継続を公に認めたことで、国境地帯の緊張が改めて注目されている。

 インドの報道によると、対立が報告されているのはアルナチャルプラデシュ州アッパー・スバンシリ地区のタクシン、アサフィラ周辺。7月以降、中国軍の活動をめぐる緊張が伝えられており、中国軍がインド側の認識する実効支配線(LAC)から数キロの地点にテントを設置したとの情報もある。ただし、こうした活動の具体的な位置や領土への侵入の有無について、両国政府の認識が一致しているわけではない。

インド外務省、中国軍の巡回方式を批判

 インド外務省のランディール・ジャイスワル報道官は23日の記者会見で、中国軍が従来の巡回方式から逸脱することによって、国境地域の状況が時折不安定になると指摘した。

 ジャイスワル氏は、両国が外交・軍事ルートを通じて未解決の問題に対処し、実効支配線付近での誤解や判断の誤りを防ぐため、既存の協議制度を活用していると説明した。また、国境地域の平和と安定の維持は、中印関係全体の発展に不可欠だと強調した。

 一方、対峙が発生している具体的な地点や軍事的状況については、国防省に問い合わせるよう求め、詳細な説明を避けた。

 インド最大野党の国民会議派は、今回の対峙をめぐる報道を受け、モディ政権に説明を要求した。中国軍がアルナチャルプラデシュ州で活動範囲を広げようとしているとの懸念を示し、国境の安全保障について政府の対応を問う姿勢を強めている。

中国外務省「通常の巡回活動」と反論

 中国外務省の郭嘉昆報道官は26日の定例記者会見で、インド側の主張に反論した。

 郭氏は、中国側が両国間の関連協定や重要な共通認識を一貫して厳格に順守していると述べ、領土主権と国境地域の安定を守るため、通常の巡回・管理活動を実施していると説明した。

 また、中国とインドは外交・軍事ルートを通じて意思疎通を維持していると強調した。インド側に対しても、両国間の共通認識を共同で履行し、具体的な行動によって国境地域の平和と安定を維持するよう求めた。

 中国側は今回の対峙について、具体的な発生地点や時期、部隊の配置状況などの詳細を明らかにしていない。

9月には両軍が司令官級協議

 インディアン・エクスプレスによると、両国軍は9月6日、アルナチャルプラデシュ州の国境問題について司令官級協議を実施した。これに先立ち、現地の部隊指揮官らも複数回にわたって協議していた。

 インド軍は事態の悪化を防ぐため、問題となっている地域に引き続き多数の兵力を配置しているという。

 外交面では、8月25日にインドのアジット・ドバル国家安全保障担当補佐官と中国の王毅外相が北京で国境問題を協議した。両国は国境地域の安定維持と対話の継続を確認している。

 9月にはインドのモディ首相と中国の習近平国家主席も会談し、国境問題の解決と二国間関係の改善に向けた姿勢を示した。しかし、今回の対峙の継続によって、首脳間の関係改善と国境現場の緊張が並存している状況が浮き彫りになった。

2020年の軍事衝突後も国境問題は未解決

 中印両国の国境は長年にわたり画定されておらず、双方が実効支配線の位置について異なる認識を持っている。特にアルナチャルプラデシュ州をめぐっては、インドが自国領として統治する一方、中国はその一部を含む地域に領有権を主張している。

 2020年6月には、インド北部ラダック地方のガルワン渓谷で両国軍が衝突し、インド兵20人と中国兵4人が死亡した。その後、両国は軍事・外交協議を重ね、一部の対峙地点から部隊を撤収させるなど緊張緩和を進めてきた。

 今回のアルナチャルプラデシュ州での対峙については、新たな武力衝突や死傷者の発生は確認されていない。ただ、国境警備組織の長官が複数地点での対峙継続を認め、両国外務省が巡回活動の正当性をめぐって異なる立場を示したことで、国境管理の難しさが改めて明らかになった。

出典・参考資料

関連記事

タイトルとURLをコピーしました