中比が南シナ海で衝突 双方が大使召見、米豪も中国を非難

 南シナ海の仁愛礁(セカンド・トーマス礁、フィリピン名・アユンギン礁)周辺で2026年7月20日、中国海警局とフィリピン海軍が衝突し、双方に負傷者が出た。中国とフィリピンは21日、互いに相手国大使を呼んで抗議した。米国とオーストラリアも中国側の対応を「危険で地域の安定を損なう行動」と非難し、南シナ海を巡る緊張が高まっている。

中国海警とフィリピン海軍が仁愛礁で衝突

 フィリピン軍によると、中国海警局は20日、8人を乗せた硬式ゴムボートを海警船から発進させ、仁愛礁に座礁しているフィリピン海軍艦艇「シエラ・マドレ」に接近した。中国海警の隊員は同艦の周囲を航行しながら、写真や動画を撮影していたという。

 フィリピン海軍はゴムボート2隻を派遣し、中国側に対して「冷静かつ非対立的な方法」で退去を求めた。しかし、フィリピン軍は、中国海警隊員が木製の警棒でフィリピン海軍兵士の頭部を繰り返し殴打し、兵士を負傷させたほか、フィリピン側のゴムボートも損傷させたと発表した。

 フィリピン国防省は、中国海警による今回の行動について「挑発的かつ敵対的な行動の明確なパターンを示すものだ」と批判した。フィリピン軍も「いかなる威圧や攻撃も、西フィリピン海におけるフィリピンの正当な権利の行使を妨げることはできない」と強調した。

中国側はフィリピンが先に攻撃と反論

 一方、中国海警局は、フィリピン側の説明は「事実を逆さまにしている」と反論した。中国側によると、フィリピンのゴムボート2隻が中国海警の巡視艇に高速で接近し、包囲して衝突した。さらに、フィリピン側が先にオールや長い棒を使って中国側の法執行要員を攻撃したと主張した。

 中国国営新華社は21日、現場で撮影したとする映像を公開した。中国側は、フィリピン側がオールや棒を使って中国海警隊員を攻撃したため、警告や航路変更、対抗措置などを講じたと説明した。また、中国海警局は、仁愛礁を含む南沙諸島と周辺海域で法執行活動を継続すると表明した。

 これに対し、フィリピン軍は、中国側の主張は「虚偽で誤解を招くものだ」と反論し、フィリピン側が衝突を引き起こした事実はないと否定した。

フィリピン側2人、中国海警隊員1人が負傷

 フィリピン側によると、今回の衝突で2人が負傷した。1人は鈍器による打撃を受け、頭頂部の頭頂骨付近に裂傷を負ったほか、上腕内側に打撲による血腫が確認された。もう1人は鈍器で人差し指を負傷し、右手の握力が低下したという。

 フィリピン側が公開した写真では、医療スタッフが船内で負傷者の頭部にガーゼを当て、包帯で処置する様子が確認された。フィリピン側は、負傷者を搬送するため海警船2隻を派遣したが、中国海警の硬式ゴムボートが航行を妨害し、安全な搬送を妨げたと主張した。

 一方、中国海警局の姜略報道官は21日、中国側が「人道主義上の配慮」から、フィリピン側による負傷者の移送を認めたと発表した。フィリピン側は艦載小艇を使い、仁愛礁に座礁しているフィリピン海軍57号艦からフィリピン海警9702号船へ負傷者を移送した。中国海警はフィリピン船を確認し、移送の全過程を監督したとしている。

 中国側も負傷者の状況を公表した。中国中央テレビ系メディア「玉淵譚天」は21日夜、中国海警の法執行要員1人が右前腕を負傷したと発表した。公開された写真では、右肘に近い前腕内側にあざが確認されたが、明らかな裂傷や出血は見られなかった。

中国とフィリピンが互いの大使を呼び抗議

 中国外交部は21日、フィリピン駐中国大使を呼び、厳重に抗議した。中国側は、フィリピンが先に挑発しながら事実を歪曲し、中国側を非難していると主張した。

 フィリピン側も同日、フェルディナンド・マルコス大統領が中国の井泉駐フィリピン大使を呼び、今回の衝突について抗議した。南シナ海での衝突を受け、両国が互いの大使を呼ぶ外交上の応酬に発展した。

米国とオーストラリアが中国海警を非難

 米国務省のトミー・ピゴット報道官は、中国が20日にセカンド・トーマス礁付近でフィリピン海軍に対して行った「危険かつ攻撃的な行動」を非難した。中国に対し、地域の安定を損なう行動を直ちに停止するよう求めた。

 米国務省は、中国によるフィリピンの海上活動への挑発は、地域の平和と安定を損ない、紛争を平和的に解決するとの中国の表明にも反すると指摘した。また、2016年7月12日にハーグの常設仲裁裁判所が示した南シナ海仲裁判断を改めて支持した。

 オーストラリアのペニー・ウォン外相も21日、マニラのフィリピン沿岸警備隊本部で演説し、中国船によるフィリピン船への行動を「地域の安定を損なう危険な行為」と批判した。ウォン外相は同日、中国の王毅外相と会談し、地域の平和と安全、安全で専門的な軍事行動、透明性などについて協議した。

フィリピン軍艦シエラ・マドレを巡り対立

 仁愛礁はフィリピン・パラワン島の西約190~195キロに位置する環礁で、中国とフィリピンがともに領有権を主張している。フィリピンは1999年、老朽化した揚陸艦シエラ・マドレを意図的に同礁へ座礁させ、海軍兵士を駐留させる前哨基地として運用している。

 中国は仁愛礁を南沙諸島の一部とし、中国領土であると主張している。中国海警船は同海域を常時巡視し、フィリピンによるシエラ・マドレへの補給活動を監視している。双方は同礁周辺で繰り返し対峙し、衝突を起こしてきた。

 2016年にはハーグの常設仲裁裁判所が、中国の南シナ海における広範な海洋権益の主張に国際法上の根拠はないとの判断を示した。中国は裁判所に管轄権がないとして裁定を受け入れていない。

 南シナ海問題は、今週マニラで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議でも議題となっている。中国とASEAN加盟国は、南シナ海での衝突を防ぐための行動規範の策定に向けて交渉を続けている。

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