中国の感染症リスク最新動向 狂犬病・HIV・梅毒・インフルエンザ・チクングニア熱【2026年版】

中国の感染症を伝える情報図。中央に大きな地図と赤い警戒エリア、周囲にウイルス・マスク・病院などの映像が組み合わさった collage。

中国では狂犬病やHIV/AIDS、梅毒など死亡リスクや社会的影響の大きい感染症が依然として存在する。さらにインフルエンザやチクングニア熱、デング熱などの流行性感染症も発生しており、在中邦人や旅行者には継続的な注意が求められている。

新型コロナウイルス流行の終息後も、中国では多様な感染症が公衆衛生上の課題となっている。肝炎や結核、性感染症といった慢性的な疾病に加え、近年は狂犬病患者数が再び増加傾向を示しているほか、南部地域では蚊媒介感染症への警戒も続いている。本稿では、中国で発生している主な感染症の現状と注意点をまとめた。

中国で患者数が多い感染症 肝炎・結核・梅毒の現状

中国国家疾病予防控制局の統計によると、法定感染症の報告件数上位はウイルス性肝炎、肺結核、梅毒、新型コロナウイルス感染症、淋病などが占めている。

ウイルス性肝炎と肺結核は依然として患者数が多く、中国の公衆衛生上の重要課題である。また梅毒や淋病など性感染症も高水準で推移している。

2025年の全国の梅毒報告患者数は59万人を超え、過去最多だった2024年の59万7000人に次ぐ水準となった。1997年以降では2番目に多く、中国における主要な感染症の一つとなっている。

梅毒は梅毒トレポネーマによって引き起こされる慢性感染症で、主に性的接触によって感染するほか、血液感染や妊婦から胎児への母子感染も起こる。感染初期は症状が軽く、自覚しないまま感染を広げるケースも少なくない。

治療せずに放置すると、皮膚や粘膜だけでなく、脳、神経系、心血管系、骨など全身に障害を及ぼす可能性があり、重症例では後遺症や死亡につながることもある。特に先天梅毒は胎児や新生児に深刻な障害を残す恐れがあり、中国当局は妊婦検診の徹底を進めている。

中国でHIV・エイズ感染拡大 高齢者層にも広がる理由

中国では近年、HIV/AIDS(ヒト免疫不全ウイルス感染症・後天性免疫不全症候群)が高齢者層にも広がっていることが問題視されている。

中国の法定感染症統計では、HIV/AIDSは死亡者数が最も多い感染症の一つである。特に独居高齢者や配偶者と死別した高齢男性の感染増加が指摘されている。

一部地域では20~50元程度の低価格な売春サービスが存在し、コンドーム使用率の低さが感染拡大の一因とされる。高齢者の中には「性感染症は若者の病気」「コンドームは避妊のためのもの」という誤解も根強い。

またHIV感染を家族や地域社会に知られることを恐れ、検査や治療を避けるケースもある。その結果、発見時にはすでにエイズを発症している患者も少なくない。

医学的には高齢者ほど免疫機能が低下しているため重症化しやすく、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を抱える患者も多い。中国の専門家は、高齢者向けの検査体制や相談体制の整備が急務だと指摘している。

中国の狂犬病患者が増加 2025年は発症244人・死亡233人

中国では狂犬病患者数が長年減少していたが、2024年以降は増加傾向がみられている。

中国国家疾病予防控制局が公表した法定感染症統計によると、2024年は狂犬病の発症者と死亡者がともに16年ぶりの増加に転じた。さらに2025年の狂犬病死亡者数は233人となり、過去5年で最も高い水準となった。

狂犬病は狂犬病ウイルスによる急性伝染病で、一度発症すると致死率はほぼ100%に達する。患者は恐水症、水を飲もうとするとけいれんが起きる症状や、恐風症、嚥下障害、麻痺などの神経症状を示し、多くは呼吸不全や循環不全で死亡する。

世界では毎年約5万9000人が狂犬病で死亡しているとされ、中国でも依然として重要な公衆衛生課題となっている。

感染源の約95%は犬、約5%は猫とされる。近年、中国の都市部では犬・猫の飼育数が1億2600万匹を超えた一方、2025年の狂犬病ワクチン接種率は犬が69.1%、猫が30.9%にとどまった。

日本では狂犬病の国内感染例は長年確認されていない。しかし2020年にはフィリピンで犬に咬まれて感染した日本人男性が帰国後に発症し、国内では約14年ぶりとなる狂犬病患者として確認された。発症後の致死率がほぼ100%に達することから、日本でも改めて狂犬病の危険性が注目された。

狂犬病は発症後の致死率が極めて高い一方で、発症前に適切な処置を行えばほぼ100%予防できる。犬や猫に咬まれたり引っかかれたりした場合は、直ちに石けんと流水で15分以上傷口を洗浄し、速やかに医療機関でワクチン接種や免疫グロブリン投与の必要性について相談することが重要である。

中国でインフルエンザ流行継続 A型H3N2が拡大

2025年末から2026年にかけて、中国ではA型H3N2を中心とするインフルエンザが全国的に流行した。

北京や東北部を中心に患者が増加し、一部地域では医療機関の混雑も発生した。大型連休前には国家疾控局が注意喚起を行い、ライノウイルスとの同時流行も確認されている。

中国南部でチクングニア熱・デング熱に警戒

近年、中国当局が特に警戒しているのが蚊媒介感染症である。

広東省ではチクングニア熱の感染拡大が確認されており、デング熱とともに重点監視対象となっている。広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省などでは今後も感染拡大リスクが指摘されている。

南部地域へ渡航する際は、防蚊対策が不可欠である。

動物由来感染症も散発

2026年には広東省や浙江省でオウム病患者が確認された。

また中国では過去に四川省で鳥インフルエンザH5N6型の重症患者が発生したほか、チベット自治区では肺ペストによる死亡例も報告されている。生きた家禽を扱う市場や野生動物との接触には注意が必要だ。

中国各地でSFTS発生 マダニ媒介感染症にも注意

江蘇省や山東省などでは、マダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)が毎年報告されている。

発熱や血小板減少を引き起こし、重症化すると死亡する場合もある。農村部や山間部では長袖・長ズボンの着用や虫除け剤の使用が推奨される。

在中邦人が注意すべき感染症

現在、中国を訪れる日本人が特に注意すべき感染症は以下のとおりである。

  1. インフルエンザ
  2. チクングニア熱
  3. デング熱
  4. HIV/AIDSを含む性感染症
  5. 狂犬病
  6. SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
  7. ノロウイルスなど感染性胃腸炎

中国の感染症リスクは新型コロナだけではない。肝炎、結核、梅毒、HIV/AIDSといった慢性的な感染症から、狂犬病やSFTSなど致死率の高い感染症、さらにインフルエンザやチクングニア熱などの流行性疾患まで、多様なリスクが同時に存在している。

特に狂犬病は日本ではほぼ忘れられた病気となっている一方、中国では毎年多数の死者が発生している。HIV/AIDSや梅毒などの性感染症も依然として深刻な状況が続いており、中国の感染症リスクは日本とは大きく異なる。

中国への渡航や駐在を予定している人は、最新の感染症情報を確認し、ワクチン接種、防蚊対策、安全な性行動、動物との接触回避など基本的な予防策を徹底することが重要である。

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