
米ブルームバーグ通信によると、欧州委員会が、加盟国に対して華為技術(華為)や中興通訊(ZTE)の通信設備を移動通信ネットワークから段階的に撤去するよう義務付ける法案の検討を進めている。ブルームバーグ通信の報道によれば、欧州委員会副委員長ヘンナ・ヴィルックネンは、2020年に提示された「高リスク供給者の排除」指針を拘束力のある法的義務へ転換する方法を協議している。
この議論には、固定ブロードバンド網における中国製機器の利用制限も含まれる。台湾の中央通信社(CNA)や香港01も同様の内容を報じており、議論は単なる助言段階を脱し、欧州全体の規制強化へと踏み込む可能性が高まっている。
出典:
- https://www.hk01.com/即時國際/60293226
- https://www.cna.com.tw/news/aopl/202511113001.aspx
- https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/5231382
◎欧州各国で足並みが乱れる通信設備政策
欧州では、ドイツやフィンランドが中国系供給者の排除へ動く一方、スペインやギリシャは依然として中国製設備の採用を続ける。こうした足並みの乱れは安全保障上のリスクを増幅させるとして、対中強硬派は警戒を強めている。
EU内部の政策統一が課題となる中、ドイツが最大の焦点となっている。ドイツは欧州最大の通信市場であり、同国の政策判断はEU全体の方向性に大きく影響する。
関連:
◎ドイツ政府、華為設備の交換費用を公的資金で補填する案を協議
ブルームバーグの別報道によれば、ドイツ政府は華為製設備の交換費用を公共予算から補助する案を検討している。交換コストは20億ユーロを超える可能性があり、国防予算または基幹インフラ予算の活用が俎上に載る。
ドイツテレコム(Deutsche Telekom)などの通信事業者は、価格競争力や品質を理由に中国製設備の使用を続けてきたが、安全保障上の懸念が強まる中で政府の姿勢が急速に変わりつつある。
米国では既に中国企業への規制強化が進んでおり、欧州も同様の流れに移行している。
関連:
ドイツ政府は昨年、
- 2026年以降、コアネットワークで中国製機器の使用禁止
- 2029年末までに5Gネットワークの重要部分から中国製機器を全面排除
という方針を発表した。基地局やアンテナなど無線アクセス部分の利用は現段階で継続可能とされるが、欧州全体で安全保障リスクへの再評価が進む中、中国製通信機器の使用範囲は段階的に縮小するとみられる。
EUが華為・中興通訊の排除を加盟国に義務付ける構想は、欧州の通信インフラ政策が大きな転換点を迎えていることを示す。ドイツの政策転換とEUの制度強化が重なることで、中国製通信機器を巡る規制は今後さらに加速する可能性が高い。
中国企業の技術力・価格競争力と、安全保障リスクの評価が欧州で激しくぶつかる中、欧州の通信インフラ戦略は新たな局面に入ったといえる。

