万達集団の創業者、王健林氏に高額消費制限命令 債務不履行で かつては中国トップの資産家

中国大連万達集団の創業者で董事長の王健林氏が、未履行の債務1億8600万元を理由に甘粛省蘭州市中級人民法院から高消費制限命令を受けた。これにより同氏は飛行機のファーストクラスや高速鉄道の一等席を利用できず、星級ホテルやゴルフ場での高額消費、不動産購入や新築も禁じられた。この「高消費制限令」は人民法院が債務者の財産散逸を防ぐために用いる措置であり、債権者保護を目的としている。

強制執行と株式凍結が相次ぐ

万達集団はすでに北京や上海の金融裁判所でも計28億元の強制執行を受けており、執行総額は53億元を超える。さらに株式凍結も広がり、2025年8月末には大連万達商業管理集団の19.79億元分の株式が凍結された。9月には傘下の上海万達網絡金融服務や上海万達小額貸款の計94億元分の株式が再び凍結され、いずれも3年間の凍結措置となった。王氏名義の関連会社42社のうち、存続しているのはわずか10社にとどまる。

財務データによれば、大連万達商管は2024年第3四半期時点で1年以内に返済期限を迎える非流動負債400.84億元、短期借入38.89億元、長期借入1064.6億元、社債61.91億元を抱え、流動負債は合計914.2億元に達した。今回の1億8600万元の執行は氷山の一角にすぎず、債務危機の深刻さが浮き彫りになった。

王氏は資金繰り改善のため、23年から24年にかけて78超の万達広場を売却し、25年5月には48カ所を一括で手放した。取引総額は500億元規模とされ、買収側には太盟(PAG)、高和資本、テンセント、陽光人寿などが名を連ねる。売却対象は北京、広州、成都、南京などの大都市に加え、榆林、泉州といった地方都市の案件も含まれ、万達商業版図の中核資産に及んだ。

栄光と転落

王氏は2013年にフォーブス中国富豪ランキングで資産860億元を記録して首富となり、15年には胡潤世界華人富豪ランキングで2600億元を誇った。米誌『タイム』の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、フォーブスの生涯成就賞も受けた。だが不動産不況と債務拡大に直撃され、24年時点で資産は10年前から8割減少した。

中国不動産業界では恒大集団の許家印氏が勾留され、碧桂園が資金難に陥るなど混乱が続く。万達集団もまた、この逆風から逃れられなかった。

世論の反応

今回の制限命令が伝わると、中国のネット上では「首富の末路は良くない」との皮肉や、「潘石屹氏のように早く国外に逃げるべきだった」との意見が広がった。一方、前『環球時報』編集長の胡錫進氏は「王氏が逃げずに債務返済に努めている点を評価する」と述べ、責任を回避しない姿勢に一定の敬意を示した。

万達集団の行方

万達集団の主要事業は商業不動産開発と運営であり、「万達広場」は中国都市部で広く知られるブランドだ。しかし資金繰り難が続く中、今後の事業再建は不透明だ。中国経済の減速と不動産危機が長期化すれば、万達の存続戦略が試されることになる。


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