米中首脳が電話会談 TikTokでほぼ合意 関税、台湾問題でも駆け引き 近く対面で会談へ

中米首脳通話、関係安定への布石に

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は19日に電話会談を行い、約2時間にわたって貿易やウクライナ戦争など幅広い議題を協議した。トランプ氏は会談後、「非常に良い会話だった」と強調し、10月に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に対面会談を行うことを明らかにした。さらに、来年初めには訪中する計画も表明した。

このやり取りは、緊張を繰り返してきた米中関係の安定化に向けた布石とされる。中国国内メディアも「率直な対話で指針を与えた」と肯定的に評価し、環球時報は「世界にとっても福音」と論じた。


TikTok合意の詳細:米国主導の管理体制へ

会談の主要議題の一つが動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」をめぐる合意だった。トランプ氏は「我々はTikTok合意を承認した。正式署名は残っているが、投資家も準備を進めている」と述べ、中国側もTikTokの米国での継続運営を望んでいると語った。

ホワイトハウスのレビット報道官は、合意の枠組みについて「取締役会は7人で構成し、そのうち6人を米国人が占める」と説明した。データとプライバシー保護は米オラクルが担当し、アルゴリズムも米国内で再訓練・運用され、バイトダンスは関与できない仕組みだ。

は米国で約1億7000万人の利用者を抱える。だが米政府は、中国当局がデータを利用して政治的影響を行使するリスクを懸念してきた。このため2024年に成立した法律では、25年1月までに売却か事業停止が求められていたが、トランプ政権は期限を12月まで延期している。


中国の戦略的計算:譲歩で交渉余地を確保

ニューヨーク・タイムズは、中国がTikTokを「交渉カード」として活用していると指摘する。長年、中国は売却要求を「白昼の強奪」と非難してきたが、現在は官製メディアが「双方に利益のある合意」と論じるようになった。その背景には、米国による関税や輸出規制、台湾問題をめぐる駆け引きで交渉余地を広げたいとの思惑がある。

ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの孫韻氏は「もし小さな譲歩で前向きな雰囲気と関係改善を得られるなら、中国はそうするだろう」と分析。シラキュース大学のディミター・グルギエフ氏も「TikTokはすでに犠牲にできる譲歩だ」と語り、アルゴリズムの独自性が薄れた今では中国にとって戦略的重要性が低下していると述べた。

さらに、中国は重要鉱物資源を握っており、APEC首脳会議での交渉に強いカードを持つとされる。清華大学の李稻葵氏は「中国は米国の要求もトランプの交渉スタイルも熟知している」と語り、大豆やボーイング機の購入を通じて譲歩する可能性に言及した。ただし、収穫期や受注枠の制約から迅速な対応が求められる。


今後の展望:中米関係は安定化へ

復旦大学の呉心伯教授は「第1に経済や他の分野で交渉を進め、成果を広げること。第2に双方が歩み寄り関係の安定を維持することが必要だ」と語り、今回の首脳通話が「方向性を定めた」と強調した。

中国商務部も「米国は約束を履行し、TikTokを含む中国企業に開放的で公平な環境を提供すべきだ」と発表。国内外でTikTok問題が交渉材料化するなか、中米関係は緊張と緩和のはざまで揺れ動いている。

米中関係の動向は、今後の世界経済や地域安全保障にも直結する。特に米中の対立や関税政策は過去にも揺れを生んできた経緯があり、今回の合意が新たな局面を開く可能性が注目される。

出典

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