ダライ・ラマ、伝統的手続きによる後継者選定を宣言

25年7月4日3 亡命中のチベット仏教の精神的指導者、ダライ・ラマ14世は90歳を迎えた7月2日、後継者選定を伝統通りの捜索と認定手続きで行うと正式に宣言し、「この件に他の誰も干渉する権利はない」と述べて中国への介入を牽制した。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が仏ル・モンド紙の情報として伝えた。

 背景には中国共産党が宗教を弾圧しつつ、清朝時代の「金瓶」くじによる認定権を根拠に、後継者選定への正当性を主張し、自らの「ダライ・ラマ」を立てようとする動きがある。

 習近平国家主席は6月に親中派パンチェン・ラマと会談し、後継認定への協力を期待し「宗教の中国化」を進めるよう促した。現パンチェン・ラマは1995年にダライ・ラマが認定した少年が行方不明になった後、中国が指名した人物で、全国人民代表大会(全人代=国会)のメンバーだが、宗教的カリスマ性を欠く。中国は宗教弾圧を正当化するため僧侶を「僧衣をまとった狼」と非難し、大寺院周辺では装甲車やドローンで監視を強化している。

 さらに、チベット人児童を家族から引き離し、標準中国語と愛国主義教育を徹底する寄宿学校に送る「児童送養政策」も進行中だ。一方で道路や5G通信網、消費財流通を拡大し、近代都市の生活を魅力的に見せている。これによりインド北部の亡命先への新規流入は減少している。

 ダライ・ラマは過去に転生が「雪の国」に戻れず制度が消滅する可能性も示唆し、存命中の指名も検討したが、最終的に伝統に基づく方法を選んだ。

 これは数年に及ぶ候補者捜索と教育を伴い、その間中国の情報統制は亡命先で生まれた後継者の消息を伝えにくくするだろう。中国側は自ら認定するダライ・ラマを国内外に浸透させる十分な時間を確保し、将来「二人のダライ・ラマ」が並立する混乱を招く可能性が指摘される。
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