
ファイブアイズ、「中国が求人サイト通じスパイ」と警告
米英など5カ国の情報機関でつくる機密情報共有枠組み「ファイブアイズ(5つの目)」は3日、中国の軍事情報機関がリンクドイン(LinkedIn)などのネット求人サイトを悪用し、政府や軍の関係者を標的にスパイ活動を行っているとする警告を発表した。ファイブアイズが求人サイトに関し共同で警告を発するのは初めて。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などが伝えた。
発表によると、中国の工作員は、ターゲットに接触したあと、まず「試験的なレポートの執筆」を指示して実力を試し、次いで「オンライン面接」を行って政府や軍とのつながりを調査する。その後、「暗号化された通信アプリ」へと移行させた上で、リポート1本につき数百から数千米ドルの報酬を支払うという、巧妙な「5段階の勧誘プロセス」を用いていた。
駐英中国大使館は4日、「完全な事実無根で悪意ある誹謗中傷」と強く反発。「ファイブアイズこそ世界最大の情報機関で真の脅威であり、自作自演の不器用な芝居だ」と批判した。中国外務省の毛寧報道官も同日の記者会見で、「世界規模で組織的スパイ活動を展開する同盟が中国を非難すること自体、極めて皮肉だ」と一連の主張を全面否定した。
ネット求人を隠れ蓑にする「5段階の勧誘プロセス」の業界構造
今回のファイブアイズの共同警告公告「我々の秘密を守る(Safeguarding Our Secrets)」が浮き彫りにしたのは、ビジネス向けSNSであるリンクドインや求人プラットフォームのインディード(Indeed)、アップワーク(Upwork)といった民間インフラが、国家規模の諜報活動の舞台として組織的に組み込まれている実態である。中国の軍事情報機関や情報部門の工作員は、自らの身分を完全に隠蔽し、民間コンサルティング会社、シンクタンク、あるいは大手人材紹介会社の社員を装ってターゲットに接近する。
このリクルート戦術は、通信環境の移行と、要求内容のエスカレートを組み合わせた巧妙な「5段階の勧誘プロセス」によって構築されている。工作員は、求人広告を通じてターゲットに初期接触したのち、オンライン面接によって政府や軍との繋がりを調査し、やり取りの場を足がつきにくい暗号化通信プラットフォームへと移行させる。これと並行して、提供させる内容のアップグレードが行われるのが最大の特徴である。当初はシンクタンク向けなどの「試験的なレポート」の執筆を要求し、無害な調査を装って能力を試すが、プロセスが進むにつれてレポート執筆や研究任務を口実に圧力をかけ、本格的な未公開情報の開示へと誘導していく。最終的に、提供された情報の機密性に応じて報酬を支払う仕組みであり、多くの人は当初、中国の安全部門に情報を提供しているとは気づいていない。
標的の拡大がもたらす国際影響と市場への脅威
この工作活動の真の脅威は、標的の範囲が防衛や外交の最高機密を握る中枢人員だけに留まらない点にある。セキュリティクリアランス(機密資格)を持つ政府職員や軍関係者はもちろんのこと、ジャーナリスト、学者、シンクタンクの研究員、さらには防衛産業の周辺で政府データに間接的にアクセスできる民間企業の従業員までが広範に狙われている。軍関係者に対しては、所属部隊の活動状況や駐屯地情報、所属艦艇の詳細といった具体的なデータが要求される。
ファイブアイズ側が強く警鐘を鳴らすのは、断片的な情報の集積による国家安全保障への影響である。たとえ応募者本人が国家機密を直接握っていなくても、提供された非機密の調査資料や内部データが他の情報と組み合わされることで、前線にいる軍人たちの生命の安全が直接脅かされ、経済的繁栄や技術的優位性が大きく損なわれる。さらに、西側諸国の意思決定プロセスを歪め、民主的な手続きへ介入するための格好の隙を与えることになる。すでにこの求人の罠に落ち、知らぬ間に情報を提供していた人物が複数特定されており、刑事訴訟や失職、機密資格の剥奪といった深刻な社会的破滅へと追い込まれている。
西方諸国の防衛政策と今後の見通し
今回の前例のない共同警告は、これまでの個別国による散発的な注意喚起から、ファイブアイズ全体による「防衛網の一体化」へと政策的な舵が切られたことを意味している。欧米の情報機関は近年、中国、ロシア、イランによる高度なスパイ活動に対して警戒水準を最大級に引き上げてきた。米国は現職・元政府職員への欺瞞的なアプローチを警戒し、英国のMI5も少なくとも2021年からリンクドインを悪用した手口に単独で警鐘を鳴らしてきた。2025年10月には、英国会議員を標的としたSNS経由のフィッシング攻撃への注意喚起が行われ、先月にはロンドンで中国(香港)と英国の二重国籍を持つ2人がスパイ容疑で有罪判決を受けるなど、司法的な摘発も本格化している。
今後は民間プラットフォーム企業側への規制や、国家安全保障上のセキュリティクリアランス保持者に対する私的デバイスの利用制限など、法的な義務付けがさらに強化される見通しである。これに対し、中国側は「自作自演の拙劣な芝居」「世界最大の情報組織による悪意ある誹謗中傷」と全面否認の姿勢を崩しておらず、主権国家間の情報戦とプラットフォームを巻き込んだサイバー空間の覇権争いは、今後さらに激化していくことが予想される。
[出典]
- 香港01:五眼聯盟稱中國間諜網上聘人 駐英使館斥無中生有 北京:很諷刺
- 德国之声中文网:五眼联盟:中国特工借招聘平台招募线人 中国:恶意诽谤
- 美国之音中文网:“五眼联盟”就中国利用求职平台从事间谍活动发出联合警告
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