中国当局、民間製油所へ新規融資停止を銀行に要請 米国の二次的制裁回避へ苦慮

Entrance gate to Hengli Petrochemical complex with security barrier and a parked car nearby

中国当局、民間精油所へ新規融資停止を銀行に要請

米ブルームバーグ通信によると、中国の金融規制当局が、国内大手銀行に対し、米国からイラン関連の制裁を受けた製油所5社への新規融資を一時停止するよう勧告したことが8日までに分かった。14~15日に控えるトランプ米大統領の訪中を前に、中国の主要金融機関が米国の「二次的制裁」に巻き込まれ、ドル決済網から排除されるリスクを回避する狙いがあるとみられる。台湾紙の経済日報などが伝えた。

関係者によると、国家金融監督管理総局は1日から始まった「労働節」の連休前、銀行側に対し、民間製油大手・恒力石化(大連)煉化などとの取引内容の点検とリスク評価を求める「窓口指導」を行った。人民元建ての新規融資を停止させる一方、既存融資の引き揚げは禁じている。

米国財務省は4月下旬、イラン産原油の主要な買い手であるとして恒力石化への制裁を発表。金融機関に対しても、制裁対象との取引を継続すれば制裁を科す準備があると警告していた。

一方、中国商務省は5月2日、企業に対し米制裁を無視するよう指示し、外国法の不当な適用を拒否する「阻断弁法」を初発動した。政府内で対米強硬姿勢を貫く商務省と、金融システムの安定を優先する監督当局との対応の差は、トランプ政権との対立激化に直面する中国当局の苦渋の選択を浮き彫りにしている。

二次的制裁の脅威とドルの武器化

今回の措置の背景には、米財務省が振りかざす「二次的制裁(セカンダリー・サンクション)」への深刻な懸念がある。二次的制裁とは、制裁対象国(今回はイラン)や制裁対象企業と取引を行う第三国の企業や金融機関に対しても、米国が制裁を科す仕組みだ。特に金融機関にとって、米国の金融システムやドル決済網からの排除は「死刑宣告」に等しい。中国の四大国有銀行である工商銀行、農業銀行、建設銀行、中国銀行は、過去に恒力石化への融資実績があり、米側の動向に神経を尖らせている。

米国のベセント財務長官はすでに、中国の銀行2行に対して警告文書を送付したことを明かしている。中国側としては、米中首脳会談という外交上の重要局面を前に、金融機関が連鎖的に制裁対象となる事態だけは避けたいのが本音だ。そのため、公には商務省が「米国の制裁を無視せよ」と強硬な姿勢を示しながらも、金融実務を司る金監総局が「新規融資の停止」という形で、事実上のブレーキをかけるという二重構造の対応を余儀なくされている。

中国民間製油「ティーポット」の苦境と産業構造

制裁の矢面に立たされている恒力石化は、中国の民間製油業界において第2位の規模を誇る巨大企業だ。中国では「ティーポット(茶壷)」と呼ばれる中小規模の民間製油所が乱立していたが、近年は恒力石化のような大規模な民間コンプレックスが台頭し、国有大手に匹敵する存在感を示している。これらの民間企業は、コスト競争力を維持するために割安なイラン産原油の輸入を継続してきた経緯がある。

米国財務省外国資産管理局(OFAC)によれば、恒力石化は数十億ドル相当のイラン産石油を購入しており、イランにとって最大級の顧客となっている。中国のエネルギー安全保障の観点からは、イランからの原油供給は不可欠だが、それを維持しようとすれば米国の金融制裁を招くという、極めて困難な舵取りを迫られている。

今回の新規融資停止は、民間製油業者にとって資金繰りの悪化を意味する。特に設備投資や運転資金を外部融資に依存する民間企業にとって、銀行の「貸し渋り」は致命的だ。中国政府は、既存融資の引き揚げ(貸し剥がし)を禁じることで企業の即時の倒産や連鎖的なデフォルトを防ごうとしているが、今後の米中交渉の行方次第では、中国の石油精製産業の構造そのものが変容を迫られる可能性も否定できない。

[出典] 彭博︰內地監管機構籲內銀 暫停向受美制裁煉油廠發放新貸款(香港01) 美伊衝突 大陸銀行傳暫停向遭美制裁煉油廠發新貸款(聯合報) 遭美制裁煉油廠 陸銀暫緩貸款(工商時報)

[関連情報] 米、イラン原油輸入で中国精製大手制裁 海上封鎖も強化 米、イラン「影の銀行」に新制裁 中国「ティーポット製油所」も標的 ホルムズ海峡を中国大型船が初通過 中国とイランの連携誇示 米軍がオマーン湾でイラン貨物船「トウスカ」号を拿捕 中国との往来も 中国の外交攻勢と「後ろ盾」の限界 王毅外相が団結訴え

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