
イラン外相が訪中、米中首脳会談控え外交攻勢
イランのアラグチ外相は6日、北京で中国の王毅外相と会談した。2月末の米イ開戦後、イラン外相の訪中は初めて。14〜15日に控えるトランプ米大統領の訪中を前に、封鎖が続くホルムズ海峡の開放などについて協議した。中国がホルムズ海峡の開放に向けてどのような役割を果たせるかに注目が集まっている。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などが伝えた。
会談でアラグチ氏は、海峡開放の早期解決は可能との認識を示した。王毅氏は「国際社会の強い呼びかけに速やかに応じること」を求め、通航の安全確保を促した。中国はイラン産原油の主要な買い手であり、海峡の不安定化は自国経済の直撃を意味する。
米側はルビオ国務長官が「対イラン軍事作戦は終了した」と述べ、外交解決へ舵を切る意向を示した。一方で、米政府が制裁対象に加えた中国企業5社に対し、中国商務省は米国の制裁を「認めず、執行しない」とする前例のない宣言で対抗。企業の制裁回避を事実上容認した。
アラグチ氏は習近平国家主席の平和的主張に賛同し、中国への強い信頼を表明。来週の米中首脳会談では、習氏がトランプ氏に対し、イラン側から引き出した譲歩をどう提示するかが焦点となる。
ホルムズ海峡の開放を巡る応酬とエネルギー安全保障
会談の最大の焦点となったのは、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の通航問題だ。2月末の開戦以来、海峡周辺では緊張が続いており、世界のエネルギー供給網は深刻な打撃を受けている。アラグチ氏は会談で「現在、海峡開放の問題を早期に解決することが可能である」と明言し、軍事的手段による解決の限界を指摘した。これは、経済的困窮に直面するイラン側が、海峡の開放を外交カードとして提示し、事態の打開を図る姿勢を見せたものといえる。
対する王毅氏は、海峡の安全な通行回復が国際社会の共通利益であることを強調した。中国にとって中東情勢の安定は、エネルギー資源の安定調達だけでなく、一帯一路構想における物流網の維持という観点からも極めて重要だ。王毅氏が当事者に対し「国際社会の強い呼びかけ」への応答を求めた背景には、イランに対して具体的な行動を促すと同時に、事態を主導する立場を誇示する狙いがある。
一方で、米国は依然として警戒を解いていない。トランプ政権はイランの港湾に対する海上封鎖を継続しており、経済的な締め付けを緩めていない。中国がどの程度イランに譲歩を迫れるか、あるいは米国との橋渡しを担えるかが、今後のエネルギー市場の安定を左右することになる。
米国の圧力と中国の「遮断令」による対抗措置
ワシントンではルビオ国務長官が、中国に対しイランへの圧力強化を公然と求めている。ルビオ氏は「イランの行動が国際的な孤立を招いている」と指摘し、中国が責任ある大国として振る舞うよう迫った。しかし、ベセント財務長官は、中国による継続的な原油購入が実質的にイランの戦費を肩代わりしていると批判し、米中間の溝は埋まっていない。
こうした米側の圧力に対し、北京は独自の法整備で対抗姿勢を強めている。中国商務省が5月2日に発動した「遮断令」は、米国の域外制裁を無効化し、中国企業に遵守を禁じる前例のない法的措置だ。これは、米国が自国の国内法を第三国に押し付ける「長腕管轄」に対する主権の主張であり、中国企業が米国の顔色を窺って取引を停止することを防ぐ狙いがある。
特に、イラン産原油の主要な受け皿となっている中国の民営製油所、いわゆる「茶壺(ティーポット)」を保護することは、中国のエネルギー安全保障に直結する。制裁を無視することを国として奨励するこの動きは、米ドルを基軸とした既存の国際貿易・金融システムへの挑戦とも受け取れ、今後の国際ビジネスのルールを根本から変質させる可能性を秘めている。
軍事から外交への転換点と「トランプ・習近平会談」の展望
米イ情勢は今、軍事的な衝突から外交的な駆け引きへと局面を変えつつある。トランプ氏は、対イラン軍事作戦「エピック・フューリー」の終了を宣言し、海峡での護衛作戦を一時停止した。これは、パキスタンなどを介した交渉に一定の進展があったことを示唆している。ルビオ氏が述べるように、米側は今や外交による核開発阻止や地域安定の構築に重心を移している。
アラグチ氏が習氏の「4つの主張」を支持し、中国を「信頼できるパートナー」と呼んだことは、イランが中国を唯一の盾として利用し、米国との交渉において少しでも有利な条件を引き出そうとする必死の試みだ。イラン側は核交渉再開には慎重だが、当面の戦争終結と経済制裁の緩和、そして海峡での対峙解消を最優先課題としている。
来週の「トランプ・習近平会談」は、こうした各国の利害が交錯する中で開催される。習氏がイランからどのような具体的な「譲歩案」を引き出し、それをトランプ氏にどのように売り込むのか。中東の安定という共通の利益と、覇権を巡る対立が同居する中で、両首脳の決断が世界の地政学リスクを大きく変動させることになる。
[出典] ・川習會前夕 王毅會伊朗外長談荷莫茲海峽重啟(中央社) ・伊朗外长出访北京 卢比奥吁中国促伊朗开放海峡(ドイツの波) ・视频 伊朗外长赶在“特习会”前到访北京(フランス24)
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