広西の香港系玩具4工場が同時閉鎖、数千人が抗議 労働集約型産業の苦境と移転背景

Crowd of people wearing masks in a city street; man in a light blue shirt stands at the right, with subtitles about mass layoffs.

香港玩具メーカー系の広西4工場閉鎖 数千人が抗議

広西チワン族自治区玉林市で、香港の玩具メーカー「華盛玩具(ワサン・トイズ)」傘下の玉林英峰玩具製品など子会社の4工場が20日、突如として操業停止を発表した。この影響で1万人近い労働者が職を失い、21日以降、数千人規模の抗議活動が連日続いている。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)などが伝えた。

RFAなどによると、24日までに最大約5000人の労働者が工場外に集結。未払い賃金の精算と、労働契約法に基づく解雇賠償(通称「N+1」)の満額支払いを求めて集会を開いた。一部の工場では労働者が屋上に横断幕を掲げた。同市管轄の北流市の工場外では「血汗銭(汗水の結晶である賃金)を返せ」と記されたプラカードを掲げる姿も見られた。21日には同市容県などで一部の労働者が道路を占拠する事態も発生し、警察官が警戒に当たった。

会社側は、米中貿易摩擦の激化による海外経営環境の悪化と、海外顧客の支払い遅延に伴う資金難を閉鎖の理由に挙げている。しかし、同社が2025年末に広東省東莞市の工場を閉鎖した際、法定基準を下回る「0.5N」程度の補償しか行わなかった前例があることから、従業員の不信感は極めて強い。

地元当局が介入し調整に当たっているが、22日時点で具体的な解決策は提示されていない。当局は労働者に対し法的手段での解決を促しているが、抗議を抑え込むための策だとの反発も出ている。受注減や生産拠点の東南アジア移転が進む中、労働集約型産業における従業員の処遇問題が改めて浮き彫りとなった。

0.5N賠償への不信と加速する労働争議

今回の争議が激化した背景には、中国の「労働契約法」が定める法的補償を巡る企業と労働者の深い乖離がある。同法第47条では、企業都合による解雇の際、勤続年数1年につき1ヶ月分の給与を支払う「経済補償(N)」を義務付けており、さらに30日前の予告がない場合は1ヶ月分の追加給与(+1)を支払う「N+1」が一般的である。

しかし、華盛玩具が昨年末に東莞の常青玩具工場を閉鎖した際、実際に支払われたのは法定基準の半分に相当する「0.5N」であった。今回の広西における4工場同時閉鎖においても、会社側は「法的権利を優先的に保障する」と謳いながらも、具体的な金額やスケジュールを一切明示していない。10年以上勤務してきたベテラン従業員も多く、生活基盤を失うことへの焦燥感が、道路占拠や連日の集会という実力行使に繋がっている。

当局の対応も労働者の不満に拍車をかけている。労働部門に苦情を申し立てても明確な回答が得られない一方で、警察による監視が強化されており、現場の労働者からは「法的手段を促すのは、単に街頭での抗議を止めさせ、問題を棚上げにするための常套手段だ」との批判が相次ぐ。これは現在の中国各地で見られる労働争議における共通の構図であり、当局が経済安定を優先するあまり、労働者の権利保護が後回しにされている実態を反映している。

産業構造の転換と東南アジア移転の波

今回の華盛玩具の工場閉鎖は、単一企業の不祥事ではなく、中国の労働集約型産業が直面する構造的な限界を象徴している。華盛玩具は1970年代に香港で設立され、半世紀以上にわたり世界の著名ブランドの玩具をOEM(受託生産)で支えてきた老舗である。その同社が、広東から広西へ、そして今や東南アジアへと拠点を移さざるを得ない状況に追い込まれている。

背景には複数の要因が絡み合っている。第一に、米中関税貿易摩擦の長期化による輸出コストの増大である。米国市場を主要なターゲットとする玩具産業にとって、中国製への高関税は致命的な打撃となり、顧客である海外メーカーは「チャイナ・プラス・ワン」の戦略を加速させている。

第二に、中国国内のコスト増とサプライチェーンの変化だ。賃金上昇に加え、海外顧客による代金の支払いサイクルが長期化しており、受注減と相まって企業のキャッシュフローを圧迫している。華盛玩具の操業停止通知に記された「海外顧客による貨物の支払い遅延」は、世界的な消費低迷の波が中国の末端工場に直撃している現実を物語る。

企業側は生存をかけ、ベトナムやインドネシアなどより低コストな東南アジア地域への移転を急いでいる。しかし、その過程で置き去りにされるのが、長年工場を支えてきた熟練労働者たちである。かつて「世界の工場」と呼ばれた沿海部から内陸部(広西など)へ移転することで延命を図ってきた労働集約型モデルは、今や中国国内での維持が困難なフェーズに突入している。今後も同様の「夜逃げ型」閉鎖や賠償を巡る衝突は、他の中小・中堅製造業においても頻発する可能性が高い。

[出典] ・廣西4家港資廠同日關閉 數千工人連日追討賠償(中央通訊社) ・广西四港资厂同日关闭 数千工人连日追讨赔偿(自由亚洲电台)

[関連情報] ・中国沿海部の製造業で労働争議多発 米中摩擦や経済低迷反映国慶節連休中、各地で労働争議相次ぐ広東・東莞の日系パソコン部品OEM工場で争議

#中国経済 #労働争議 #香港企業 #華盛玩具 #広西チワン族自治区 #労働集約型産業 #米中貿易摩擦

タイトルとURLをコピーしました