米、イラン原油輸入で中国精製大手制裁 海上封鎖も強化し「資金源」を徹底遮断

米、イラン原油輸入で中国精製大手制裁 海上封鎖も強化

米財務省は24日、数十億ドル規模のイラン産原油を購入したとして、中国の石油精製大手、恒力石化(遼寧省大連市)を制裁対象に指定した。また、「影の船団」と呼ばれるイランの秘密輸送に関与した海運会社や船舶など約40の事業体も対象とした。5月中旬の米中首脳会談を前に、米政府はイランの資金源を絶つため、最大顧客である中国への圧力を最大限に強める見通しだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルや台湾の中央通信社などが伝えた。

制裁は、軍事作戦と連動した経済戦「エコノミック・フューリー」の一環。恒力石化は、航跡を隠した複数の船舶やイラン当局の管理下にある機関から原油を買い付けていた。米当局は同社に関連する約3億4千万ドルの暗号資産を凍結したほか、輸送に関わった船舶19隻を制裁リストに加えた。この中には香港旗を掲げる船舶も含まれる。

イランは長年、老朽タンカーを使い、海上で積荷を移し替える「瀬取り」により制裁を回避し、日量約140万バレルを中国へ輸出してきた。米軍は、インド洋で制裁対象タンカーへの立ち入り検査を実施するなど、物理的な遮断にも乗り出している。中国駐米大使館は「正常な貿易を損なう制裁の乱用だ」と強く反発しており、首脳会談を前に両国間の緊張が急速に高まっている。

「エコノミック・フューリー」が狙う資金供給網の壊滅

今回の制裁の核心は、単なる個別企業への打撃にとどまらず、イランの国家財政を支える「資金循環」そのものを機能不全に陥らせることにある。スコット・ベセント米財務長官は、「エコノミック・フューリー(経済の怒り)」と名付けられたこの一連の取り組みが、中東での侵略行為の阻止や核開発の野心抑制に直結していると強調した。

標的となった恒力石化は、中国国内で「ティーポット」と呼ばれる独立系精製業者の中でも第2位の規模を誇る。これらの独立系業者は、中国政府直系の国有石油大手とは異なり、制裁リスクを顧みずに割安なイラン産原油を大量に引き受けてきた経緯がある。財務省の調査によれば、同社は2023年以降だけでも数十億ドル相当の原油を買い付けていた。

さらに、米政府は暗号資産(仮想通貨)の動きにも目を光らせている。米財務省は中国、香港、UAE、オマーンなどの当局に対し、現地の金融機関が違法なイラン関連取引に関与した場合、米国の金融システムから排除する「二次的制裁」を課すと警告を強めている。

物理的封鎖と「影の船団」の限界

制裁の実効性を高めているのが、米軍による物理的な海上監視の強化だ。4月21日には、スリランカとインドネシアの中間に位置するインド洋上で、米軍が無国籍タンカーへの立ち入り検査を実施した。この船舶は過去1年半の間に10回以上も中国の港に寄港していたことが判明しており、典型的な「影の船団」の一隻と目されている。

イラン側が構築した「影の船団」は500隻を超えると推定され、それらは船籍の登録を取り消されたり、航行データを意図的に切断(ダーク航行)したりして当局の追跡を逃れてきた。しかし、米軍による公海上での臨検が常態化すれば、輸送コストの増大とリスクの急上昇により、民間業者がイラン産原油の取り扱いを断念せざるを得ない状況に追い込まれる。

現在、洋上のタンカーには約1億6000万バレルのイラン産原油が滞留しており、米国の封鎖が継続すれば、これらは行き場を失うことになる。中国国内では、こうしたエネルギー調達リスクの増大を受け、ロシア産原油へのシフトや代替エネルギーへの転換が議論され始めているが、供給網の再構築には多大な時間を要する。5月中旬のトランプ・習近平会談において、このエネルギー制裁が中国側に対する強力な外交カードとして機能することは間違いなく、北京がどのような対抗措置を打ち出すかが今後の国際情勢を左右することになるだろう。

[出典]

[関連情報]

#米制裁 #イラン原油 #恒力石化 #影の船団 #エコノミックフューリー #米中関係

タイトルとURLをコピーしました