中国のサプライチェーン安全規定に米商務会議所が強い懸念 経済減速が最大の経営リスクに浮上

Red gantry crane unloading containers at a busy port with a cargo ship below and stacked colorful shipping containers nearby

米商工会議所、中国サプライチェーン安全規定に懸念

中国米国商工会議所(AmCham China)は23日発表した「2026年度版アメリカ企業中国白皮書」で、中国政府が今月公布した「産業チェーン・サプライチェーン安全規定」について、企業の経営判断を不当に制限し、法的リスクを増大させる恐れがあるとの強い懸念を表明した。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などが伝えた。

新規定は4月7日に公布され、外国の組織や個人が中国のサプライチェーン安全に損害を与えたと見なされた場合、規制当局が調査や対抗措置を講じる権利を明文化した。当局は調査の過程で企業従業員への聞き取りや内部記録の開示を強制できるほか、関与した個人への出国禁止措置を課す権限も強化された。

同会議所のマイケル・ハート会長は、企業の「脱中国」を阻止する狙いがあるとの見方を示し、「正当なビジネス上の意思決定が安全保障上の脅威と解釈され、従業員が拘束される懸念がある」と警告した。また、同白皮書に付随するビジネス環境調査では、中国経済の成長減速が初めて最大の課題として浮上した。受訪企業の64%が「経済減速」を主要な課題に挙げ、これまで首位だった「米中関係の緊張」(58%)を上回った。市場参入の不平等に加え、実体経済の停滞が収益見通しに深刻な影を落としている。

中国側は新規定について、自国の産業を守る正当な法整備であると主張する。しかし、5月中旬の米中首脳会談を前に、安全規定による締め付けと景気失速という二重の逆風が、米企業の対中投資に影を落としている。

強まる規制当局の権限と「脱中国」への牽制

今月施行された「サプライチェーン安全規定」は、全18条で構成されており、中国当局が「産業の安全」を名目に外国企業の活動へ介入する法的根拠を大幅に強化した。国営メディアは、本規定を「産業チェーンの安全リスクを防止し、国家安全を維持するための措置」と位置づけているが、実質的には欧米諸国が進めるデカップリング(切り離し)やデリスキング(リスク低減)への対抗措置としての性格が強い。

特に米国企業が注視しているのは、サプライチェーンの移転に関する調査権限だ。新規定では、外国からの圧力や政治的意図によって中国内での製造や供給を停止・移転させた疑いがある場合、中国当局は当該企業や個人に対して詳細な調査を行うことができる。調査期間中、当局は従業員への直接の尋問や機密情報を含む社内記録の閲覧を求めることが可能であり、さらには担当者の出国を禁止する法的措置も視野に入れている。

マイケル・ハート会長は記者会見で、多くの米国企業が依然として中国市場を戦略拠点と見なしつつも、リスク分散のために拠点の多元化を模索している現状に触れた。同氏は、こうした「拠点の多様化」という純粋に商業的な判断が、中国当局によって「安全への実質的な損害」と恣意的に解釈されるリスクを懸念している。西側政府が懸念するレアアースなどの戦略物資において、中国が圧倒的なシェアを持つ現状を背景に、安全保障を盾にした締め付けは今後さらに強まることが予想される。

経済減速が最大の経営リスクに 構造的課題も山積

今回の白皮書で最も注目すべきは、米国企業の懸念事項の優先順位が変化した点である。長年、在華米国企業にとっての最大のリスクは、地政学的な「米中関係の緊張」であった。しかし、2026年度の調査では、中国経済の成長減速を主要な課題とする回答が64%に達し、首位に躍り出た。これは、中国市場における内需の低迷、国有企業との不公平な競争、そして業界全体の過剰生産能力が、米国企業の収益構造を直接的に圧迫し始めていることを示唆している。

サービス業を中心とした一部の業種では依然として収益性が維持されているものの、製造業やテクノロジー産業では市場参入の障壁が依然として高い。白皮書によれば、55%の企業が市場参入において不公平な待遇を受けていると感じており、テクノロジーや研究開発(R&D)業界ではその割合は88%に及ぶ。政府調達における「国産品」優先の基準や、データセキュリティ規制の不透明さも、長期的な投資意欲を削ぐ要因となっている。

さらに、米中関係については、83%の企業が良好な関係が事業継続に不可欠であると回答している。5月中旬に予定されているトランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談では、レアアースの輸出管理や航空、農業分野での輸出制限緩和が議論される見通しだが、米国経済界の視線は冷ややかだ。中国米国商工会議所のジェームス・ジマーマン主席は、「重大な突破口は期待できない」と述べ、政治的な緊張がもたらすコストを企業が負担し続ける現状に強い警戒感を示している。

中国政府は、軍事衝突のリスクや国際資本の流出を背景にサプライチェーンの自国抱え込みを法律で正当化する構えだ。しかし、こうした強権的な規制と経済の停滞は、外資企業の信頼をさらに損なう可能性が高い。米国企業は、世界第2位の経済大国という魅力と、不透明な法的リスクの狭間で、かつてないほど困難な経営判断を迫られている。

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