
自動運転タクシー、システム故障で一斉立ち往生
湖北省武漢市の三環線や光谷二環高架などの主要幹線道路で3月31日、中国検索大手、百度(バイドゥ)が展開する自動運転タクシー「萝卜快跑(アポロ・ゴー)」がシステム故障により一斉に立ち往生した。高架道路上などで多数の乗客が最長2時間にわたって車内に閉じ込められたほか、市内各所で深刻な交通渋滞が発生した。中国メディアの紅星新聞などが4月1日に伝えた。
武漢市公安局交通管理局の発表によると、31日午後8時57分から「複数の車両が路上で動かなくなっている」との通報が市民から相次いだ。現場の交通警察官は、故障車両が80台から100台に上ったと証言している。乗客によると、走行中に突然システム異常のアナウンスが流れ、ハザードランプを点滅させたまま停車した。特に高架道路上では、周囲を大型トラックが猛スピードで走る中、車内のSOSボタンが機能しなかったほか、カスタマーセンターも応答せず、恐怖を感じたという。警察と運営スタッフが救助にあたり、乗客は全員無事で負傷者はなかった。百度側はネットワーク原因によるシステム異常と説明しているが、賠償などの対応は未定としている。
現場の混乱と露呈した「無人」の脆弱性
3月31日の夜、武漢の主要道路は異様な光景に包まれた。光谷二環高架や月湖橋トンネル、雄楚高架といった交通の要所で、百度の自動運転車両が次々とハザードランプを点滅させて動かなくなった。後続車が急停車した車両を避けて走行する危険な状況が各所で発生し、二次被害の懸念が強まった。
乗客の一人は、三環線の道路中央で2時間近く孤立した恐怖を語っている。車外は大型車両が激しく行き交い、自力で脱出することは死を意味する。車内のSOSボタンは反応せず、スマートフォンを通じてアプリのカスタマーセンターに助けを求めたが、具体的な救助策が講じられるまで1時間半以上を要した。最終的に交通警察官の手によって救出されたが、この間、運営側からの有効な遠隔操作や現場への迅速な対応は見られなかった。
この一斉立ち往生は、単なる一台の車両トラブルではなく、クラウドネットワークや集中管理システムに起因する構造的な欠陥を示唆している。百度側の一部担当者は「ネットワークの問題」と認めているが、詳細な技術的原因は明らかにされていない。完全無人化を急ぐ中で、緊急時のバックアップ体制や人間による介入プロトコルが不十分であったことは否めない。
百度の「世界一」戦略と加速する社会実験
百度は、2021年8月に自動運転サービス「アポロ・ゴー」を発表して以来、武漢を世界最大の商業運営拠点と位置づけ、集中的な投資を行ってきた。現在、武漢市内には400台以上の車両が投入され、24時間体制でのサービス提供を目指している。百度の創業者である李彦宏(ロビン・リー)氏は、2025年11月の大会において「週あたりの完全無人注文数が25万件を超え、世界一になった」と豪語しており、同社にとって自動運転事業は検索エンジンに次ぐ収益の柱として期待されている。
中国政府もまた、自動運転を国家戦略の重要項目と位置づけている。武漢市はその先鋒として、複雑な都市環境下での実証実験を積極的に受け入れてきた。これは、テスラなどの米系企業に対抗し、次世代のスマート都市インフラにおいて主導権を握るという野心的な政策意図がある。しかし、今回の事件は、技術の進歩が法整備や安全確保のスピードを追い越している現状を浮き彫りにした。
産業構造の観点から見れば、自動運転は「車両」「通信(5G)」「クラウド」が高度に融合したシステムである。今回の事故で80台から100台という規模の車両が同時に制御不能に陥った事実は、システムの単一障害点(SPOF)が都市全体の交通インフラを一斉立ち往生させるリスクを証明した。
信頼回復への課題と今後の産業展望
今回の集団故障は、これまで百度が喧伝してきた「累計3億キロメートル以上の走行で重大な死傷事故ゼロ」という安全神話に冷や水を浴びせる格好となった。公式サイトでは「安全第一」を掲げているが、実際の緊急事態においてSOSボタンが機能せず、カスタマーサポートが放置に近い状態であったことは、ユーザーの信頼を著しく損なうものである。
今後、百度には原因の徹底究明とともに、ネットワーク遮断時でも安全に路肩へ退避できるフェイルセーフ機能の強化が求められる。また、当局による監視体制の厳格化も避けられないだろう。自動運転の普及は、利便性の向上やコスト削減というメリットがある一方で、一たびシステムが暴走・停止すれば、広範囲にわたる社会混乱を招く。
中国における自動運転の産業展開は、今後も加速し続けることが予想されるが、技術的な「凄さ」を競う段階から、いかに「社会的な信頼」を構築するかの段階へ移行している。武漢での事件は、技術至上主義に警鐘を鳴らし、真に安全なスマート都市のアプローチを問い直す重要な分岐点となるだろう。
[出典]
- 百度“萝卜快跑”在武汉疑因网络问题集体罢工,多辆车在高架桥上停滞
- 武汉警方通报“萝卜快跑”車両路上停止:システム故障造成 暫無人員受傷
- 百度無人車武漢集體故障 数千部「萝卜快跑」塞爆二環高架
- 武漢「萝卜快跑」疑システム故障集體癱瘓 乘客困高架2時間嚇壞
[関連情報]
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