
中国、古屋衆院議員に制裁 訪台理由に資産凍結
中国外務省は30日、自民党の古屋圭司衆議院議員(衆院憲法審査会会長、日華議員懇談会会長)に対し、資産凍結や入国禁止などの制裁措置を同日付で発動したと発表した。古屋氏が今月16日に台北で、台湾政府系団体が主催する「玉山フォーラム」に出席し、頼清徳総統と会談したことなどを「台湾独立勢力との結託」と断定。「反外国制裁法」に基づき、中国国内の動産・不動産の凍結、国内組織との取引禁止、香港・マカオを含む入国禁止を命じた。
中国外務省の毛寧報道官は30日の記者会見で、古屋氏の訪台を「中国内政への粗暴な干渉」と非難し、追加措置の可能性も示唆した。一方、古屋氏は30日、数十年訪中しておらず国内資産もないため「影響は大きくない」と述べ、価値観を共有する台湾との交流継続を強調した。
台湾外務省の陳明祺次長は31日午前、台北での取材に対し「国境を越えた弾圧による外交は無効であり、極めて悲劇的だ」と強く反発。頼総統も16日の会談時に、古屋氏を「最も堅実な友人」と称え、日米台の連携強化に期待を寄せていた。中国は2025年にも石平参院議員らへ制裁を課しており、高市政権下で親台派への圧力を強めている。
「反外国制裁法」の積極運用と標的となる親台派議連
今回の制裁の法的根拠となったのは、2021年に施行された「中華人民共和国反外国制裁法」である。同法第3条、4条、6条、9条、15条が適用され、資産凍結や取引禁止といった強力な経済的・物理的遮断が明文化された。中国側は古屋氏の言動が「一つの中国」原則および中日間の4つの政治文書の精神に著しく違反し、中国の主権と領土の完全性を深刻に損なうものであると主張している。
特筆すべきは、制裁の対象が「日華議員懇談会(日華懇)」という超党派の枠組みを牽引する人物に向けられた点だ。日華懇は日本の国会議員の約半数が所属する最大規模の議員連盟であり、台湾との実質的な窓口として機能してきた。古屋氏はそのトップとして長年君臨し、2025年7月には訪日した台湾の林佳龍外交部長(外相)と、当時の衆院議員であった高市早苗首相、木原稔内閣官房長官らと共に会談するなど、現政権の中枢とも極めて近い関係にある。
中国側が古屋氏を標的にしたのは、単なる個人の訪台に対する報復ではなく、日本の政権与党内に浸透する「台湾重視」の潮流に対する強い警告を意味する。特に、高市政権が「台湾有事は日本有事」という認識を継承・強化していることに対し、中国側は「新型軍国主義」や「内政干渉」という言葉を多用し、全方位的な外交的圧力を強めている。
玉山フォーラムと日米台連携への強い警戒感
制裁の直接的な引き金となった「玉山フォーラム」は、台湾アジア交流財団(TAEF)が主催する国際会議だが、実質的には台湾政府が提唱する「新南向政策」の成果を誇示し、国際的な支持を取り付けるための重要な外交プラットフォームである。古屋氏は今回で9年連続の出席となり、頼清徳総統との会談では自衛隊、台湾軍、米軍の軍楽隊による交流まで提案していた。
これに対し中国は、玉山フォーラムを「外部勢力と結託して台湾の国際的地位を不当に高める場」と厳しく糾弾している。毛寧報道官は、台湾問題は中国の「核心的利益の中の核心であり、越えてはならないレッドラインである」と繰り返し、古屋氏の行動を「竄訪(勝手な訪問)」と呼んで非難した。
同時期には米上院のジーン・シャヒーン議員ら超党派訪問団も訪台し、頼総統と会談を行っている。中国にとって、日米の有力議員が相次いで台湾を訪れ、安全保障や文化交流の深化を議論することは、台湾包囲網の形成に直結する懸念事項だ。そのため、まずは日本の「親台派の象徴」である古屋氏に制裁を科すことで、他国の追随を牽制する狙いがあるとみられる。
制裁の実効性と高市政権への国際的影響
古屋氏本人が「影響は大きくない」と一蹴したように、直接的な資産凍結の実効性は限定的との見方が強い。しかし、中国国内の組織や個人との取引禁止は、間接的に日本の企業や団体が古屋氏との関わりを再考せざるを得ない心理的障壁を生む可能性がある。これは中国が得意とする「長腕管轄」による威圧であり、経済的つながりを利用して政治的譲歩を迫る常套手段である。
今後の焦点は、高市政権がこの制裁に対してどのような対抗措置を講じるか、あるいは沈黙を守るかにある。中国側はすでに石平参議院議員や岩崎茂元統合幕僚長など、安全保障や言論の分野で影響力を持つ人物を次々と制裁リストに加えており、標的は今後さらに拡大することが予想される。
台湾外交部の陳明祺次長が指摘した通り、かつて制裁対象とした米国のルビオ国務長官と首脳会談のために接触せざるを得なくなった矛盾を中国が再び露呈するのか、あるいは対日強硬姿勢をこのまま突き進むのか。日中関係は、台湾という火種を巡って「対話と制裁」が複雑に交錯する、極めて不安定なフェーズに突入している。
[出典]
- 中国制裁日本众院宪法审议会会长古屋圭司 (RFI)
- 古屋圭司遭中國反制 外交部強烈不滿、不以為然 (中央社)
- 日美議員先後訪台 中國重彈舊調揚言再懲治古屋圭司 (中央社)
- 友台遭北京制裁 日眾議員古屋圭司:影響不大 (聯合報)
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