
上海でガソリン12%値上がり 当局が価格抑制措置
米国・イスラエル対イラン攻撃をきっかけとする原油高騰を受け、中国国内のガソリン価格が過去最大級の上げ幅を記録している。上海市内のガソリンスタンドでは26日、最新の価格表が掲示され、92オクタンガソリンが1リットルあたり8.53元、95オクタンが9.07元へと上昇。前回の3月10日比で12%を超える異例の跳ね上がりを見せた。台湾の中央通信社などが伝えた。
国家発展改革委員会(発改委)は23日、製品油価格の改定を発表した。本来の計算式では、国際市場の原油価格変動を反映して1トンあたり2000元超の引き上げが必要な局面だったが、当局は民生への衝撃を緩和するため臨時調整を実施し、上げ幅を約半分に圧縮した。具体的には、1トンあたりガソリンを1160元、軽油を1115元の引き上げに留めている。ただ、この抑制措置を講じた後でも、イランとの戦争勃発からの累積上昇幅は約20%に達しており、エネルギーコストの増大は止まらない状況だ。
値上がり直前の22日夜には、北京中心部の崇文門などで給油を待つ車が100メートル以上の列を作り、一部店舗で在庫が完売する事態となった。上海市内でも、中国石化(シノペック)などの大手スタンドに従業員が「これまでにない混雑だった」と証言するほどの駆け込み需要が発生している。
産業構造と物流網を襲う「燃油高」の連鎖
今回の価格改定は、単なる自家用車オーナーの家計負担に留まらず、中国の産業構造全体に深刻な影を落としている。特に打撃を受けているのが物流業界だ。中国の物流網を支えるトラック運転手の多くは個人事業主であり、燃料費の高騰を運賃に転嫁できない構造的な問題を抱えている。SNSの微博(ウェイボー)では、コスト増に耐えかねた数百人の運転手が運行停止を宣言しており、サプライチェーンの停滞も懸念される事態となっている。
さらに、配車サービス大手の滴滴出行(ディディ)や物流企業の京東(JDドットコム)などのプラットフォームを利用するギグワーカーも窮地に立たされている。配送費の引き上げや燃油サーチャージの導入が遅れれば、これらの労働者の実質賃金は大幅に減少する。不動産危機の長期化や若者の失業率高騰という既存の国内問題に加え、エネルギーコストの急騰は消費マインドを冷え込ませる決定打となりかねない。
中国は海運で輸入する原油の半数以上を中東に依存しており、その4分の1はイランからの供給である。中東情勢の緊迫化は、中国のエネルギー安全保障に直結する。当局が価格メカニズムを曲げてまで「臨時調控」に踏み切った背景には、インフレ抑制と社会不安の払拭という強い政治的意図が透けて見える。
エネルギー安全保障と脱石油戦略の加速
中国当局はこれまで、石油依存からの脱却を国家戦略として推進してきた。現在、新車販売台数の半数が電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの「新エネルギー車(NEV)」であり、全保有台数の約12%を占めるまでに成長している。しかし、依然として国内には約3億台の純燃油車が存在し、その多くは低所得層や物流現場で稼働している。
皮肉にも、今回の中東紛争によるガソリン価格の高騰は、市場原理を通じてNEVへのシフトを加速させる要因となっている。しかし、急激な価格上昇は社会の許容範囲を超えており、政府は現行の価格制度を維持しつつも、非公式な介入を繰り返さざるを得ない矛盾に直面している。
中国のガソリン価格は10営業日ごとに調整され、2026年は計25回の調整が予定されている。今年に入ってからの値上げはすでに5回連続を数える。今回の1リットルあたり0.91元の上げ幅(全国平均)は、2013年に現行制度が始まって以来、単次では過去最大のものだ。
政府は「経済の安定運行と社会民生の保障」を旗印に掲げるが、国際的な供給不安が続く限り、国内価格の制御には限界がある。次回の4月7日の価格調整公告日に注目が集まっているが、市場関係者の間ではさらなる引き上げを懸念する声が根強い。
[出典] ・中東衝突民生有感 上海油價漲幅達12%(中央通訊社) ・中國油價將迎年內最大漲幅 加油站現百米車龍(中央通訊社) ・中國官方調控油價,限制漲幅減輕用油負擔(紐約時報中文網) ・解密:为何中东局势致我油价近9元,而日本与台海却在降价(百度百家号:在异乡找到同乡)
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