中国「民族団結促進法」が成立 少数民族の同化加速、台湾へも圧力

中国の第14期全国人民代表大会(全人代=国会に相当)第4回会議は12日、少数民族に「共通」の国家アイデンティティ形成を義務付ける「民族団結進歩促進法」を賛成多数で可決、成立させた。少数民族の言語や文化をさらに侵食するだけでなく、国外の組織や個人をも標的とする法の域外適用を可能にする内容を含んでおり、国際社会や台湾から強い懸念の声が上がっている。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などが伝えた。

新法は、中国共産党を中心とした「中華民族の偉大な復興」を掲げ、標準中国語を教育・公務の基本用語と規定。公共の場での少数民族言語に対する標準中国語の優先を法制化した。また、保護者には子供が党を愛するよう教育する責任を課し、宗教に対しても「中国化」の堅持を義務付けている。

特に警戒されているのが、国外の個人らが「民族団結を破壊」した際に法的責任を追及するとの条項だ。台湾で対中政策を所管する大陸委員会(陸委会)の沈有忠副主任委員は、これが台湾独立派への取り締まりや、海外の学者・文化人に対する「国境を越えた鎮圧」の根拠になり得ると指摘。かつての「独立反対」という消極的姿勢から、「積極的な統一支持」を強いる戦略転換の表れと分析している。

国家アイデンティティの強制と「家庭教育」への介入

今回の法律で最も特徴的なのは、民族のアイデンティティ形成を家庭内の教育レベルまで踏み込んで規定した点である。草案段階から議論を呼んでいた条項によれば、未成年者の保護者は、子供が中国共産党を愛するように教育・誘導する法的責任を負う。これは、個人のプライバシーや家庭の価値観よりも、党への忠誠心が優先されることを意味する。

また、宗教の「中国化」も加速する。宗教団体や学校、活動場所は、すべて中国共産党が定義する「中国化」の方向に沿わなければならない。これに反する動きは「テロ活動」や「宗教的極端主義」として犯罪化されるリスクを伴う。民族間の通婚を「干渉」することを禁じる条項も盛り込まれたが、これは事実上、漢族との混血を奨励することで少数民族独自のコミュニティや血統を希薄化させる狙いがあるとみられている。専門家は、こうした「互嵌式(互いに入り混じった)」コミュニティ環境の構築が、チベットや新疆における集住地域の解体と、さらなる同化政策の完成形であると分析している。

標準中国語の優先による「文化の根絶」への懸念

教育現場における言語政策の転換も深刻だ。新法は、標準中国語(普通話)を「国家共通言語文字」として確立し、教育の主要言語とすることを明文化した。公共の場で少数民族言語を併用する場合でも、位置や順序において標準中国語を「際立たせる(突出地位)」ことが義務付けられた。

既に内モンゴルやチベット、新疆では母語教育の機会が大幅に削減されているが、この法律はそれを全国規模で正当化する。南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)のエンフバト・トゴチョグ代表は、標準中国語の習得が就業や昇進の絶対条件となることで、独自の言語を話す少数民族が経済的に周辺化されると警鐘を鳴らす。教育を通じて子供たちの母語を奪うことは、歴史や文化とのつながりを断ち切り、国家の用意した単一のアイデンティティを植え付けるための「戦略的ツール」に他ならない。

台湾と国際社会へ伸びる「ロングアーム管轄権」

さらに重大なのは、この法律が中国国外の個人や組織を処罰の対象に含んでいることだ。境外で「民族団結を破壊する行為」や「民族分裂を煽動する行為」を行った者は、法に基づき責任を追及される。このいわゆる「ロングアーム管轄権(長臂管轄)」について、台湾の大陸委員会は、中国がこれまで展開してきた「法律戦」の新たな武器になると見て警戒を強めている。

陸委員会の沈有忠氏は、この法理が「中台問題の処理」へ外溢(波及)し、台湾独立派だけでなく、中国共産党の史観に沿わない研究を行う海外の学者や、宗教・文化関係者までもが制裁の対象になり得ると指摘する。実際に、香港出身の活動家や台湾の出版関係者が国外での言動を理由に拘束されるケースが相次いでおり、新法はその「跨境鎮圧(国境を越えた弾圧)」を法的に裏付けるものとなる。

かつて中国は、台湾独立を主張する者を罰する「反国家分裂法」などを武器にしてきたが、今回の新法は「積極的な統一支持」や「中華民族としてのアイデンティティ」を強制する色彩が強い。これは、単に反対意見を抑え込む段階から、全ての個人を党の理想とする「中華民族共同体」の枠組みに従わせるという、習近平政権の強権的な意志の表れである。国際社会は、この法の域外適用がもたらす言論の自由への威圧と、少数民族に対する人道的危機に改めて注視する必要がある。

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