
米の対イラン攻撃、中国産レアアースが鍵 在庫2カ月
英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは10日、消息筋の話として、米国の対イラン軍事行動が、北京にレアアース(希土類)供給問題における新たな交渉力を与えていると伝えた。トランプ米大統領の訪中を約3週間後に控える中、米軍の先進兵器システムが中国産鉱物に高度に依存しており、紛争の継続期間を左右する「切り札」になる恐れがある。台湾の聯合新聞網などが伝えた。
同紙によると、米国のレアアース在庫は現在約2カ月分しかなく、2月28日に開始された攻撃の当初2日間だけで約56億ドルの弾薬を消費した。米地質調査局(USGS)の報告では、米国のレアアース輸入の71%を中国が占め、特にミサイル誘導部品に不可欠な重レアアースは代替困難な唯一の供給源となっている。専門家は、この依存関係が米国の弱点となり、中国側が紛争のコストや期間を制御できる「間接的なレバレッジ」になると分析する。
トランプ政権は120億ドルを投じる重要鉱物備蓄政策「プロジェクト・ボールト(Project Vault)」を始動したが、十分な蓄積には数年を要する見通し。3月末からの訪中では、安定供給を求める米国に対し、北京側が関税撤廃などの譲歩を迫る強力な交渉カードとして機能するとみられる。
先進兵器の生命線握る中国の圧倒的シェアと産業構造
米国が直面しているのは、単なる資源不足ではなく、ハイテク兵器の「心臓部」を他国に握られているという構造的な脆弱性である。中国は世界のレアアース採掘の60%、精錬生産の90%を支配しており、特に重レアアース永久磁石においては世界シェアの94%という圧倒的な独占状態を維持している。
これらの鉱物は、F-35戦闘機や巡航ミサイル、高度なレーダーシステム、ミサイル誘導装置、さらには原子力潜水艦の推進システムに不可欠な部材である。例えば、1機のF-35を製造するためには約417キログラムのレアアースが必要とされる。シドニー工科大学の張越(マリーナ・ジャン)副教授は、中国が供給を絞ることで米国の軍事行動の「持続可能性」を直接的に脅かすことができると指摘する。
米国地質調査局(USGS)の最新データによれば、2021年から2024年にかけて米国が輸入したレアアースの7割以上が中国産であった。特にテルビウムやジスプロシウムといった重レアアースは、高温下での磁力維持に欠かせないが、これらは中国以外での商業規模での生産が極めて困難である。ワシントン・ポストが報じた弾薬の急速な消費スピードを考慮すれば、補充用の部品製造が停滞した場合、米軍の作戦遂行能力は数カ月以内に限界を迎える計算となる。
トランプ政権の焦りと北京の「時間稼ぎ」戦略
トランプ政権はこの危機を打開すべく、先月「プロジェクト・ボールト」を打ち出した。120億ドルという巨額を投じ、国内の採掘・精錬拠点の再整備と戦略備蓄の構築を急いでいる。しかし、採掘から分離・精錬、そして磁石などの最終製品加工に至るサプライチェーン全体を再構築するには、環境規制への対応や技術者の確保を含め、最低でも5年から10年の歳月が必要とされる。
北京の調査機関トリビアム・チャイナのコリー・コームズ氏は、米国が自給自足体制を整えるまでの「空白期間」こそが、中国にとって最大の交渉機会になると分析する。中国側は昨年4月に関税措置への対抗として、一部の重レアアースの輸出管理を強化した。その後、一時的な「貿易休戦」により一部の管理を停止しているが、輸出許可制度そのものは維持されており、いつでも供給を停止できる準備を整えている。
3月31日から予定されているトランプ大統領の訪中において、習近平国家主席は、米国が求めるレアアースの安定供給と引き換えに、対中関税の完全撤廃や先端技術の輸出規制緩和など、極めて高い条件を提示する可能性が高い。北京側は合意形成を急ぐそぶりを見せておらず、イラン戦事の長期化によって米国の在庫が減少するほど、自国の交渉力が高まることを熟知している。
国際的な地政学リスクと今後の展望
この問題は米中二国間にとどまらず、世界の産業構造全体に波及している。中国のレアアース支配は、米国と同盟を組む日本や欧州諸国にとっても共通の脅威である。米国軍事産業への部品供給が滞れば、世界の安全保障バランスが大きく崩れるリスクがある。
一方で、北京も過度な輸出制限が「諸刃の剣」になることを懸念している。極端な供給制限は、国際社会による「脱中国依存」を加速させ、代替技術の開発や他国での資源開発を促す結果となるからだ。しかし、現時点でのイラン情勢の緊迫化は、中国にとって「最も有利なタイミング」でレアアースというカードを切る絶好の機会となってしまった。
復旦大学米国研究センターの趙明昊副主任が指摘するように、今後の焦点は、トランプ氏が軍事的な面子を保つために経済的な譲歩を行うかどうかにある。今週パリで開催される高官級交渉の結果が、月末の首脳会談の行方を占う試金石となるだろう。米軍の弾薬消費が続き、在庫のカウントダウンが進む中、北京は静かに次の出方をうかがっている。
[出典] • Could China’s rare earth supplies dictate how long US strikes on Iran go on? • 美打伊朗還能撐多久 恐要靠陸稀土王牌決定 • 影響伊朗戰事?港媒:美軍依賴大陸稀土 北京在川普訪陸前握談判籌碼
[関連情報] • 中国のレアアース輸出規制で世界供給網に衝撃 欧州・米国・日本が脱中国依存を加速 • 中国、レアアース関連技術に包括的な輸出規制を発表 • 中国の対日レアアース輸出審査厳格化とサプライチェーンへの影響
#レアアース #中国 #輸出規制 #アメリカ #イラン #トランプ大統領 #安全保障

