
パナマが運河2港接収 コスコは業務停止で対抗
パナマ政府が香港の長和グループ(CKハチソン)傘下企業からパナマ運河の2港の運営権を接収したことを受け、中国の海運大手、中遠海運(COSCO)が太平洋側のバルボア港での業務を停止した。パナマ最高裁判所が1月、長和側の港湾運営権契約を「違憲」と裁定したことが発端。中国政府は、運営を暫定的に引き継いだ欧州海運大手2社を呼び出し面談を行うなど、対抗措置を強めている。台湾の中央通信社などが伝えた。
中遠海運は顧客に対し、空コンテナの返却先を別の港に変更するよう通知した。業務停止の理由は不明だが、事実上の抗議行動と見られる。一方、パナマ政府はデンマークの海運複合企業、A.P. モラー・マースクとスイス海運大手、MSCの傘下の港湾会社2社に最長18カ月間の暫定運営を委託。今後、国際公開入札を実施する方針だ。
長和側は契約の有効性を主張し、パナマ政府に対し20億ドル以上の損害賠償を求める国際仲裁を開始した。中国外務省や香港政府も「企業の正当な権益を損なう」と強く反発している。背景には、米国による「中国のパナマ運河支配」への警戒感があるとされ、トランプ大統領も運河の統制権奪還に言及していた。戦略的要衝を巡る利権争いは、米中覇権争いの新たな火種となっている。
最高裁の違憲判決と接収の舞台裏
事態の源流は2026年1月に下されたパナマ最高裁判所の判決にある。同裁判所は、香港の富豪・李嘉誠氏率いる長和グループ傘下のパナマ・ポート・カンパニー(PPC)が保有していた港湾コンセッション契約を違憲とし、無効を宣言した。PPCは1997年からパナマ運河の両端に位置するバルボア港とクリストバル港を運営しており、2021年には2047年までの25年間の自動更新を取り付けていた。この長年にわたる独占的な運営権が突如として取り消された形だ。
パナマのムリーノ大統領は先月23日、両港の管理・運営権を国家海事局に移管することを正式に発表した。現在は暫定措置として、マースク傘下のAPMターミナルがバルボア港を、MSC傘下のTiLがクリストバル港の運営を担っている。パナマ政府側は「法的正当性の回復」を強調するが、事実上の接収劇に中国側は「政治的意図がある」として態度を硬化させている。
中国交通運輸部は10日、マースクとMSCの担当者を呼び出し「約談(指導を伴う面談)」を実施した。国家発展改革委員会(発改委)も同様の会談を行っており、中国当局が国家レベルで欧州の海運大手に対し、パナマでの事業継続について圧力をかけている構図が浮き彫りとなっている。
加速する米中覇権争いと戦略的要衝の行方
今回の問題は、単なる一企業の事業権紛争にとどまらず、パナマ運河を舞台とした米中の戦略的な対立が背景にある。米国のトランプ大統領は以前から、中国資本によるパナマ運河の「実質的な支配」に強い警戒感を示し、米国による統制権の奪還を公言していた。長和グループが昨年、これら2港を含む世界43箇所の港湾事業を米ブラックロックらの財団に売却しようとした際も、中遠海運が支配権取得を要求して介入したことで交渉が頓挫していた。
中国側にとって、中遠海運を通じた港湾運営は「一帯一路」構想における海上交通路(シーレーン)の確保という極めて重要な戦略的意味を持つ。一方の米国にとっては、自国の「裏庭」とも言える中米の要衝における中国の影響力拡大は、国家安全保障上の重大な脅威と映る。パナマ政府による今回の強硬措置は、こうした米国の意向を汲んだものとの見方が強い。
また、米中間の緊張は麻薬問題にも波及している。同時期にウィーンで開催された国連麻薬委員会の会合では、フェンタニルの前駆体化学物質の供給源を巡り、米中代表が互いに「内政干渉」「いじめ」と激しい言葉で非難し合った。港湾利権から麻薬対策に至るまで、米中の対立軸は多層化しており、パナマ運河の運営権を巡る法的・外交的闘争は今後も長期化する見通しだ。
[出典] ・巴拿馬新聞報:中國遠洋海運暫停巴爾博亞港營運(中央社) ・陸方出招?巴拿馬接管長和2港口 中遠海運暫停巴爾博亞港業務(聯合報) ・巴拿馬港營運爭議 陸約談2外企(旺報)
[関連情報] ・パナマ最高裁が長和の港湾契約を違憲と裁定、中国は「米国に媚び」と猛反発 ・李嘉誠氏のパナマ港湾売却、「国家安全法」適用の恐れ ・李嘉誠氏のパナマ事業売却、中国当局が調査開始か ・李嘉誠氏、パナマ港の持株権を米企業に売却 中国反発
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