ネクスペリア蘭本社が中国拠点のシステム停止 経営権争い激化で半導体供給網に新たなリスク

中国資本の半導体大手、ネクスペリア(安世半導体)の中国拠点は6日、オランダ本社が全従業員の業務アカウントを一括停止したと発表した。これにより主要システムが一時がまひし、生産工程の一部が中断した。親会社の中国電子機器大手、聞泰科技(ウィングテック)を巡る経営権争いの激化が背景にある。

同社によると、3日19時2分、オランダ本社(Nexperia B.V.)が中国拠点の全アカウントを無効化した。Office 365やSAPなどの基幹システムが利用不能となり、顧客支給ウエハーの生産指示登録などが停止した。現在は緊急対応により大半の業務が復旧しているというが、運用面での亀裂は決定的なものとなっている。

中国商務省は7日夜、オランダ側を強く非難する談話を発表した。中蘭双方が紛争解決に向けて協議を続ける中での措置を「新たな矛盾を招く行為」と断じ、世界的な半導体供給網に危機が生じた場合はオランダ側が全責任を負うべきだと警告した。

経営権争いの背景とオランダ政府の介入

ネクスペリアは、もともとフィリップスから分社化したスタンダード製品部門を前身とし、2018年から2020年にかけて聞泰科技が買収したオランダ企業である。しかし、米中対立の激化に伴う経済安全保障の観点から、欧州でも中国資本による戦略産業への支配を危視する動きが強まった。

2025年9月、オランダ経済・気候政策省は国家安全を理由に大臣命令を発出し、ネクスペリアの経営から聞泰科技側を排除する暫定措置を命じた。これを受け、アムステルダム企業裁判所は聞泰科技の実質的支配者である張学政のCEO職務停止や株主議決権の制限、独立管理人の任命を決定した。政府は同年11月に大臣命令を一時停止したが、裁判所は独自の判断で管理措置を維持。今年2月11日には、過去の管理不善に関する正式調査の開始を決めた。

今回のシステム停止措置は、事実上の運営権を掌握した欧州の管理チームと、資本を投じた中国側親会社の対立が、法廷闘争から実務面での実力行使へとフェーズが変わったことを示唆している。

世界の半導体サプライチェーンへの波及と産業構造のリスク

今回の事態が深刻視されるのは、ネクスペリアが担う産業上の役割が大きいからだ。同社は自動車産業や家電向けに不可欠な「基礎チップ(パワー半導体やディスクリート部品)」の世界的な供給源である。特に同社の製品は、最終的に中国国内の工場で封装(パッケージング)やテスト工程が行われる産業構造となっており、中国拠点のシステム停止は即座に世界の完成車メーカーや電子機器メーカーの部材確保に直結する。

中国商務省が「産供鏈(サプライチェーン)危機」という言葉を用いてオランダを牽制したのは、この供給構造を背景としたものだ。中国側は、オランダ本社の措置が自国産業を標的にした嫌がらせであると捉えており、対抗措置として中国側からの材料供給停止や輸出管理の強化を示唆する構えを見せている。

中蘭両国はこれまで、半導体製造装置大手ASMLの対中輸出制限を巡り緊張関係にあったが、今回のネクスペリア問題は「既存の中国資本企業」の運営権を剥奪するという、より直接的な資本衝突へと発展した。この僵局(デッドロック)が長期化すれば、世界的な半導体不足が再発する恐れがあるだけでなく、外資系企業の中国投資や中国企業の欧州投資における予見可能性を著しく損なうことになる。今回の業務システム一時停止措置により、中国拠点と本社の対立は一段と深まり、国際的な産業協力の枠組みそのものが揺らいでいる。

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