王毅外相、米中首脳会談へ準備加速を強調 対日では「台湾有事」巡り強硬姿勢鮮明に

中国の王毅外相は8日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の記者会見で、今月末に予定されるトランプ米大統領の訪中に向け「議題はすでにテーブルの上にある」と述べ、準備が最終段階にあることを明かした。王氏は2026年を米中関係の「大年(重要な年)」と位置づけ、首脳間の戦略的引導による関係安定に期待を示した。

一方で、対日関係では極めて硬い表情を見せた。高市早苗首相が「台湾有事」を存立危機事態と見なす発言をしたことに対し、王氏は「日本に介入する何の資格があるのか」と激しく反論。集団的自衛権の行使は平和憲法の空洞化を招くとし、過去の侵略の歴史を引用して「日本はどこへ向かうのか」と強い警告を発した。

王外相が米中関係を重視する発言を行った背景には、中間選挙を控え経済・貿易面での実績作りを急ぐトランプ氏と、第15次5カ年計画の初年度に国内経済に注力したい中国側の思惑の一致がある。中国がボーイング機500機を購入するとの観測も浮上しており、今回の訪中は双方の利害が一致した政治的妥協の場となる様相を呈している。

王外相は、台湾問題については「核心的利益の中の核心」であり、越えてはならないレッドラインであると再三強調。会見に合わせ、中国軍は9日から渤海で5日間の軍事任務を開始しており、外交と軍事の両面で周辺国への圧力を強めている。

米中関係の「政治的妥協」とトランプ政権の経済戦略

今回の会見で王毅外相が米中関係を「大年」と呼び、融和的な姿勢を見せたのは、単なる外交辞令ではない。米国内では連邦最高裁がトランプ氏の課した関税に対して違憲判断を下すなど、通商政策において政権側が新たな成果を必要としている状況がある。中間選挙を控えたトランプ氏にとって、中国からボーイング機500機の購入といった巨大な経済的実利を引き出すことは、国内支持基盤を固めるための最優先事項といえる。

対する中国側も、2026年から始まる「第15次5カ年計画」の成功には安定した外部環境が不可欠だ。米国との極端な衝突を避け、ハイテク規制の緩和や消費復甦に向けた対話の継続を狙っている。中国が米中関係の改善に積極的なのは、技術革新を加速させ、産業構造の高度化を図るための時間を稼ぐという戦略的意図も透けて見える。王毅氏が「米中共治(G2)」の論理を否定し、多極化世界を強調したのも、米国の覇権を牽制しつつ、中国主導の国際秩序形成に向けた布石といえる。

対日強硬姿勢の裏にある「台湾レッドライン」と軍事圧力

米国への穏やかな語調とは対照的に、日本への批判が極めて激しかった点は注目に値する。高市首相による「台湾有事」への関与発言は、中国にとって最も敏感な主権問題への挑戦と受け止められた。王毅氏が連発した「日本に何の資格があるのか」という問いかけは、14億の中国人民の感情を代表する形をとり、歴史問題と絡めることで日本の安保政策の拡大を牽制する狙いがある。

この外交的な強硬姿勢を裏付けるように、中国軍は9日から渤海の一部海域で軍事任務を開始した。これは外交的な警告を実力行使の裏付けとして示す、中国伝統の「文攻武備」の姿勢である。特に米中首脳会談の直前というタイミングでの演習は、台湾問題において米国が日本と同調して介入を深めることへの強い拒否感の表れだ。

習近平政権は、トランプ氏が経済的利益を優先して台湾問題で一定の譲歩を見せる可能性に期待を寄せる一方で、日本に対しては一切の妥協を排する二面外交を展開している。今後、3月末の米中首脳会談に向けて、経済・貿易分野での大規模な合意と、台湾・安保分野での緊張が並走する複雑な局面が続くと予想される。

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