中国軍事費、2026年は7%増の1.9兆元 経済目標下回るも10年で倍増の軍拡鮮明に

中国軍事費、2026年は7%増 10年で倍増

中国の第14次全国人民代表大会(全人代)が5日開幕し、2026年の国防予算案が前年比7%増の1兆9095億6100万人民元(約41兆円)となることが公表された。経済成長目標を「4.5%〜5%」に下方修正し、政府全体に「節約志向」を求める一方で、軍事費は一貫して成長目標を上回るペースで膨張。この10年でほぼ倍増した。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などが伝えた。

李強首相は政府活動報告で「習近平強軍思想」の徹底を強調した。軍創設100周年となる2027年の目標達成に向け、最後の大詰めとなる重要課題の完遂に全力を挙げる方針だ。また、今年から始動した「第15次五カ年計画」において軍備増強を加速させるほか、民間の先端技術を軍事に転用する戦略を一段と強化し、国家を挙げて戦闘力を引き上げる姿勢を鮮明にした。

専門家は、公表額に海警局や準軍事組織への支出が含まれておらず、実態は公表額の1.4倍から1.9倍に達する可能性があると分析する。現在の軍拡は、習主席の4期目就任が予想される政治的節目とも連動している。米欧は、中国が実戦経験の不足をAIなどの先端技術で補いつつ、核戦力や艦隊規模を急速に拡大させている点に警鐘を鳴らしており、中国によるこうした急速な軍拡が、予算の数字以上に地域の安全保障環境を劇的に変貌させていることに警戒を強めている。

経済減速下でも「聖域」とされる国防支出

中国政府が発表した2026年の経済成長目標は、近年の「5%前後」から一段階低い「4.5%から5%」へと引き下げられた。不動産不況の長期化や地方政府の債務問題を受け、李強首相は「構造調整やリスク防止の余地を残す」として、慎重な舵取りを示唆している。特に政府機関に対しては「質素な生活(過緊日子)」を徹底し、一般支出を厳しく抑制する方針を打ち出した。

しかし、こうした緊縮ムードから完全に切り離されているのが国防支出である。今回の7%増という数字は、名目GDP成長率を上回る可能性が高く、国家予算における軍事の優先順位がいかに高いかを物語っている。2016年に軍事費の伸びが1桁台に転じて以降も、実際の支出額は右肩上がりを続けており、2016年当時の約9543億元から、10年間でほぼ2倍の規模にまで膨れ上がった。

この巨額予算を支える産業構造も変化している。中国は「軍民融合」戦略のもと、民間企業の先端技術、特にAI、量子コンピューティング、自律型システムなどを迅速に国防へと組み込む体制を構築した。これにより、従来の重厚長大型の軍備増強に加え、技術力による戦力の「質的転換」を狙っている。

第15次五カ年計画と2027年の節目

2026年は、中国の国家戦略の指針となる「第15次五カ年計画」の初年度にあたる。この5年間は、習近平主席が掲げる「建軍100周年奮闘目標」の期限である2027年をまたぐ極めて重要な時期である。李強首相が政府活動報告で「重要課題の完遂(攻堅戦)」に言及したのは、2027年までに人民解放軍を現代化し、台湾海峡を含む近海での紛争を有利に進める能力を確立させるという不退転の決意の表れと言える。

戦略的観点からは、中国はすでに世界最大の海軍戦力を保有しており、現在はその「質の向上」と「遠洋への展開能力」の強化に注力している。具体的には、空母打撃群の拡充や、核の三位一体(陸・海・空からの核攻撃能力)の完成を急いでいる。専門家は、2027年が習主席の4期目続投を確実にするための政治的象徴であると同時に、軍事的に台湾への行動能力を備える期限としても機能していると指摘する。

国際社会への影響と透明性の欠如

中国の国防予算に関する最大の懸念は、その不透明性にある。公表されている1.9兆元には、海洋進出の実効支配を担う中国海警局の予算や、研究開発費の一部、準軍事組織の運営費などが含まれていないとされる。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)や米国国防総省などの推計によれば、実際の支出は公表値の2倍近くに達しているとの見方が根強い。

こうした「隠れた軍事費」を含めた急速な拡張は、近隣諸国に深刻な軍備拡張競争を強いている。日本、インド、韓国、そしてオーストラリアなどは、中国の自信に満ちた遠洋実弾演習やグレーゾーン事態への対応を迫られ、国防予算の大幅な増額を余儀なくされている。

また、中国は実戦経験の不足という最大の弱点を克服するため、シミュレーション技術やAIによる意思決定支援システムに巨額を投じている。これは、米国が1980年代から培ってきた統合運用能力に短期間で追いつこうとする試みである。技術力と圧倒的な物量を背景にした中国軍の変貌は、アジア太平洋地域の軍事バランスを根本から崩しつつあり、国際社会は数字以上の脅威として注視を続けている。

[出典] ・彭博观点:中国的军费预算比你想象的更高,今次公布时机尤为敏感中國2026年軍費預算成長7%兩會2026|今年軍費預算增長7% 增速2022年來最低李強做政府工作報告 2026年經濟成長目標設4.5%至5%中共軍費今年破人民幣1.9兆元 增長7%

[関連情報] ・中国国防予算1.8兆元 3年連続7.2%増を維持中国軍事費の伸び7.5%、経済成長率目標上回る中国軍事費透明性に欠ける、米太平洋艦隊司令官が批判

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