中国軍、スカボロー礁で日米比豪を直接牽制 バシー海峡へ演習拡大

中国軍機、南シナ海演習中の日米豪比軍牽制

中国軍南部戦区は2月28日、南シナ海のスカボロー礁(黄岩島)領海・領空と周辺海域において、海空兵力による戦闘準備パトロールを行ったと発表した。早期警戒機、対潜哨戒機、戦闘機、爆撃機の4機種を投入した。公開映像には、南シナ海で演習中の日米豪比軍の視界に入る距離まで接近したことを示す音声が記録されており、強硬姿勢を内外に誇示した。台湾メディアの中時新聞網が伝えた。現在、南シナ海から台湾とフィリピン間のバシー海峡で日米比豪の4カ国による共同演習と、それに対抗する中国軍の軍事行動が激化している。

米国、日本、フィリピンの3カ国は2月23日から26日にかけて、南シナ海とバシー海峡付近で「海上協力活動」演習を実施した。演習範囲が台湾南方の要衝である同海峡にまで拡大されたのは今回が初めて。海上自衛隊のP-3C哨戒機や米軍のミサイル駆逐艦などが参加して対潜訓練や哨戒を行った。

フィリピン軍、米インド太平洋軍、オーストラリア国防軍(ADF)は2月15日から16日にかけて、南シナ海の「西フィリピン海」で第14回多国間海上協力活動を行った。

中国国防省の張暁剛報道官は2月28日の記者会見で、米国などの域外国家を「地域の緊張を生む原因」と批判し、国家主権を断固として守る姿勢を強調した。同日、中国外務省の孫衛東次官がフィリピン外務次官補と会見し意見交換を行うなど、軍事的なにらみ合いと外交的接触が交錯する局面に入っている。

バシー海峡への演習拡大と中国の戦略的焦燥

今回の事態で最も注目すべきは、日米比の演習範囲が「バシー海峡」にまで踏み込んだ点にある。バシー海峡は台湾とフィリピンを隔てる海域であり、中国軍にとっては太平洋へ進出するための「第一列島線」における死活的なチョークポイントである。ここでの日米による演習拡大は、中国による台湾封鎖や南シナ海での覇権拡大に対する直接的な軍事的圧力となる。

中国が早期警戒機や爆撃機を含む4機種をスカボロー礁周辺に集結させたのは、単なる主権誇示にとどまらない。スカボロー礁はマニラから約200kmという至近距離に位置しており、中国はここに軍事拠点を構築することで、フィリピン全土および米軍がアクセス可能なフィリピン国内の基地を射程に収めようとしている。今回、中国軍パイロットが相手の視界に入る距離まで接近したことを「音声付き」で公開したことは、現場の部隊に対して「一歩も引かぬ」という政治的意志を徹底させると同時に、米日豪比の連携に亀裂を入れるための威嚇工作といえる。

また、産業構造の観点から見れば、この海域は世界有数の海上交通路(シーレーン)であり、エネルギー輸送の動脈である。中国にとっては、この海域のコントロールを失うことは経済安全保障上の致命傷を意味する。そのため、軍事的な緊張を高めてでも「域外国家(日米豪)」の排除を試みる政策的意図が鮮明になっている。

国際秩序の再編と台湾を巡る力学

ハメネイ師の死に伴う中東情勢の激変や、トランプ政権による「反米枢軸」への圧力強化という世界的な文脈の中で、中国は南シナ海での優位性を維持することに躍起となっている。トランプ政権がイランやベネズエラに対して強硬な姿勢を鮮明にする中、中国は自国の影響力低下を防ぐため、周辺海域での「力の行使」を加速させている。

特に4月に予定される米中首脳会談を控え、中国側は南シナ海や台湾周辺での軍事的プレゼンスを強化することで、交渉におけるカードを増やそうとしている。しかし、米国が台湾南方のバシー海峡での演習を常態化させれば、中国の「内政問題」という主張は国際的な軍事バランスの問題へと事実上書き換えられることになる。

スカボロー礁における自然保護区設置などの行政的手段と、今回の軍事的な「直接牽制」を組み合わせる中国の「ハイブリッド戦」の手法は、今後さらに巧妙化するだろう。軍事的なにらみ合いが続く一方で、外交次官級の会見を同時に行う「和戦両様」の構えは、相手の出方を探りつつ、決定的な衝突を避けながら実効支配を固定化させる中国の常套手段である。国際秩序がルール中心から力中心へと傾斜する中、南シナ海の波風は地域問題を超え、大国間の力学再編を加速させる決定的な変数となっている。

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