北京「両会」開幕へ、華北の製鉄所に3割減産要請 背景にある環境対策と市場への波及効果

「両会」開幕へ 華北の製鉄所に3割減産要請

 中国北京で3月4日から全国人民代表大会と全国政治協商会議(両会)が開幕する。これに伴い北京周辺では、空気の質改善と安全確保のための厳格な規制が始まった。台湾の中央通信社などが報じている。

 世界最大の鉄鋼生産・消費国である中国では、3月は気温上昇に伴い建設現場が再開する需要回復期にあたる。例年、この時期は建築プロジェクトの本格化により鉄鋼需要が急増するが、政治的に最重要視される両会の開催が重なることで、当局は環境対策と経済活動の維持という極めて難しい舵取りを迫られることとなる。

 複数の報道や鉄鋼産業コンサルティング機関のMysteelによると、北京に近い華北地区の複数の製鉄所に対し、3月4日から11日にかけて高炉の生産量を少なくとも30%削減するよう通知があった。この減産要請は、会議期間中の「青空」を確保するために例年、慣例的に行われているものである。

産業構造と政策意図

 この「自発的」とされる減産措置の背景には、中国政府が掲げる環境保護政策と、国家行事におけるメンツの維持という強固な意図がある。北京を取り囲む河北省や山東省などの華北地区は、重工業が集中する地帯であり、冬から春にかけての気象条件によっては深刻な大気汚染が発生しやすい。世界中から注目が集まる両会期間中に澄み渡った空を演出することは、政府の統治能力を内外に示す象徴的な意味合いを持つ。

 一方で、製鉄企業にとっては、需要期における強制的な生産調整は経営上の大きな制約となる。しかし、近年の過剰生産問題や環境規制の厳格化の流れを考慮すると、こうした短期間の集中減産は、業界全体の需給バランスを調整し、低迷する鋼材価格を安定させるための「マクロコントロール」の一環としても機能している側面がある。

 また、北京市公安局交通管理局は、市内の安全と交通の円滑化を目的とした交通規制を発表した。3月2日午前0時から13日深夜24時まで、北京市全域で劇毒物を含む危険化学品を運搬する車両の走行を全面的に禁止する。これはテロ対策や事故防止といった安全保障上の観点から、毎年最高レベルの警戒態勢が敷かれる両会ならではの措置といえる。

市場分析と今後の展望

 今回の規制に関し、鉄鋼情報サイト「蘭格鋼鉄網」の葛昕副主任は、市場への肯定的な側面を指摘している。同氏は、この減産が季節的な在庫増加を抑え、鋼材価格の下支えになると分析した。需要期に生産を抑えることで、市場に供給過剰感が出るのを未然に防ぐ効果があるという。

 さらに葛氏は、会議後に経済刺激策が打ち出されるとの期待感から、閉幕後には原料補充と生産拡大に向けた動きが活発化するとの見通しを示した。市場関係者の間では、両会で不動産市場のテコ入れやインフラ投資の拡大といった具体案が出るかどうかが注視されており、その結果次第では、閉幕後の鉄鋼市場が急速に過熱する可能性も秘めている。

 両会に向けた準備は最終段階に入っており、昨日も全国人民代表大会常務委員会第21回会議が開催されるなど、北京の緊張感は高まっている。環境対策という大義名分と、春の需要期という経済実態が交錯する中、今回の減産規制が中国経済に与える影響は、今後の市場動向を占う上で極めて重要な先行指標となるだろう。

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