
独首相訪中、経済協力の深化確認 政府間協議再開へ
ドイツのメルツ首相は25日、北京で中国の習近平国家主席と会談し、経済・外交の両面で戦略的パートナーシップを強化する方針を確認した。就任後初の訪中となるメルツ氏は、中国によるエアバス機最大120機の購入合意を発表。トランプ米政権による関税攻勢など、世界経済の不確実性が高まる中、対中関係を「実務的協力」へと再調整する姿勢を鮮明にした。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などが伝えた。
会談でメルツ氏は、中国を「包括的な戦略的パートナー」と呼び、中断していた政府間協議の早期再開を呼びかけた。習主席も両国関係を「新たなレベル」に引き上げる意向を表明。同行した独経済代表団は、自動車や先端技術分野での協力拡大を模索した。
一方で、メルツ氏は国内で見せる対中強硬姿勢とは異なり、北京では穏やかな口調を維持。台湾問題については「平和的解決」を求め、ウクライナ情勢では外交的解決の重要性を共有した。また、ドイツ企業が直面する市場開放の不十分さや補助金による競争歪曲について改善を求めたものの、過度な批判は控えた。米国の「保護主義」への懸念を背景に、独中双方が安定した国際秩序の維持に向けて歩み寄った形だ。
巨大な経済的成果と市場開放への要求
今回の訪問における最大の具体的な成果は、中国による欧州の航空大手エアバス機「最大120機」の追加購入合意だ。ドイツ経済は現在、ロシア産天然ガスからの脱却に伴うエネルギーコストの高騰に加え、米トランプ政権の関税攻勢による北米市場の縮小という「二重の苦境」に直面している。こうした背景から、メルツ首相は中国を経済発展における「不可欠な同行者」と位置づけざるを得ない状況にある。
2025年の貿易統計によれば、中独間の貿易総額は2518億ユーロに達し、中国は再び米国を抜いてドイツ最大の貿易相手国となった。この経済的現実が、メルツ首相の外交方針を規定している。同行した経済代表団には、フォルクスワーゲン(VW)、シーメンス、バイエル、メルセデス・ベンツ、BMWなど、ドイツを代表する巨大企業の首脳が名を連ねており、独産業界の対中依存度の高さと協力継続への強い意欲を裏付けた。
一方で、メルツ首相は「公平な競争環境(レベルプレイングフィールド)」の構築を強く求めた。特にドイツ企業が直面する市場アクセスの不平等や、市場を歪める中国政府の補助金政策、さらには知的財産保護の問題について、李強首相との会談で懸念を表明した。メルツ氏は、これらの構造的な問題が改善されない限り、欧州連合(EU)内部で保護主義的な反発や対抗関税の議論が加速することを警告した形だ。
「訪中版メルツ」に見る戦略的柔軟性
メルツ首相の今回の立ち振る舞いは、ドイツ国内で見せる強硬な対中批判とは対照的な「戦略的柔軟性」を象徴している。国内の党大会やミュンヘン安全保障会議において、同氏は中国を言論の自由や人権を認めない「制度的ライバル」と定義し、中国の戦略的忍耐による影響力拡大を「体系的な依存関係の利用」と厳しく批判していた。
しかし、北京の舞台では現実主義的な外交官としての顔を優先した。台湾問題においては、「一つの中国」政策を堅持する一方で、統一は軍事的手段ではなく平和的な方法でのみ実現されるべきだと主張。ウクライナ情勢についても、習主席との協議を通じて、平和の基礎を築くための外交努力の必要性を強調した。習主席はこれに対し、各当事者の合理的な懸念に応える必要性を説き、ドイツ側に一定の理解を求めた。
さらに、対米関係への懸念が独中を急接近させている側面は否めない。トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策による不確実性に対し、メルツ首相は「二国間関係において(米国の政策とは)逆の模範を示すことができる」と述べ、多国間主義の維持に向けて中国と足並みをそろえる姿勢を見せた。これは、米国の関税リスクを相殺するためのヘッジ戦略としての性格を強く帯びている。
イノベーションと先端技術への関心
今回の訪中では、伝統的な製造業に留まらない「テクノロジー濃度」の高さも注目された。メルツ首相の旅程には、北京のメルセデス・ベンツ工場のみならず、杭州のシーメンス・エナジーや、中国のロボット産業を牽引する新興企業「宇樹科技(Unitree Robotics)」への訪問が組み込まれた。これは、新エネルギー車や人型ロボットなどの分野で中国が先行している現状を直視し、将来的なイノベーション協力の座標を探る狙いがある。
ドイツ側は、中国の技術進歩が自国の産業競争力を脅かす「リスク」と捉える一方で、それを活用した共同開発が不可欠であるという客観的な認識を強めている。独産業界は「デカップリング(切り離し)」は自滅行為であると断言しており、メルツ首相もその意向を汲む形で、経済とイノベーションにおける対中関係の再定義を図っている。
今回の訪問による具体的な成果は、エアバスの受注以外にも多岐にわたる。ドイツのサッカー・ブンデスリーガや卓球の中国国内放送の継続、気候変動対策における協力、さらには中断していた豚肉や鶏肉の貿易再開などが合意された。政府内部では「画期的な大転換」とまでは見ていないものの、冷え込んだ独中関係に「新たな春」を呼ぶ一歩となったことは間違いない。
メルツ首相は、国内向けの「強硬な政治姿勢」と、訪中時の「実務的な外交姿勢」を高度に使い分けることで、不確実な国際情勢下におけるドイツの国益最大化を図ったといえる。
[出典]
- 独首相訪中、経済協力の深化確認 政府間協議再開へ – ドイチェ・ベレ(DW)等
- 默茨和习近平强调了中国和德国致力于发展更紧密的战略关系 – RFI
- 默茨访华:德中希望深化合作 – RFI
- 今年第3位西方大國領導人訪華 梅爾茨此行亮點一次看 – 中時新聞網
[関連情報]
- 独メルツ首相が初訪中 「中国依存」脱却と経済協力の板挟み
- ZTEの通信設備排除を本格検討 ドイツは交換費用補助か
- ドイツ企業、中国事業への自信低下=地政学リスク懸念
- 王毅氏、高市首相の台湾発言を猛烈批判「軍国主義の亡霊」
- ネクスペリア問題で欧州に圧力 半導体の供給網に再び緊張も
[ハッシュタグ] #ドイツ #中国 #メルツ首相 #独中関係 #経済外交 #エアバス #習近平 #国際政治

