イランが中国製超音速ミサイル購入か 米軍集結で緊迫する中東情勢

イランが中国製超音速ミサイル購入か 米軍集結で緊張最高潮

ロイター通信によると、イランが中国製の超音速対艦巡航ミサイル「CM-302」の購入合意に近づいていることが、複数の関係者の話で明らかになった。米国がイラン近海に大規模な海軍力を集結させる中、この取引は地域の軍事バランスを劇的に変える可能性がある。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などが伝えた。

当局者らによれば、交渉は昨年6月の米国とイスラエルによるイラン攻撃を経て急加速した。昨夏にはイラン国防次官が極秘訪中し、交渉は最終段階に入ったとされる。CM-302は射程約290キロメートルで、低空高速飛行により艦載防御システムの回避が可能。専門家は「迎撃は極めて困難で、米艦艇にとって深刻な脅威になる」と分析する。

現在、米国は空母「エイブラハム・リンカーン」と「ジェラルド・R・フォード」を同海域に展開。計5000人を超える将兵と150機の航空機が実戦に備える。トランプ大統領は核問題を巡りイランに10日間の猶予を与えており、期限が迫る中での最新兵器導入は、米国の抑止力に対する直接的な挑戦となる。

中国は現在、イラン産原油の約90%を輸入しており、兵器代金も石油で支払われる見通し。4月に予定される米中首脳会談を前に、中東情勢は不透明感を増している。

交渉加速の背景と「12日間戦争」の影響

今回のミサイル購入交渉が急速に具体化した背景には、2025年6月に発生したイスラエル・イラン間の大規模衝突、通称「12日間戦争」がある。この際、米国はイスラエルを支援してイラン国内の核施設3箇所を標的とした攻撃を実施した。この衝突によりイラン側の防空システムや兵器庫は著しく損耗し、軍事的劣勢を覆すための即戦力確保が急務となった経緯がある。

イラン軍は、既存のロシア製「S-300」や国産の「バヴァル373」などの防空システムを保有しているものの、米軍の圧倒的な航空戦力に対抗するには攻撃的な打撃力の強化が不可欠と判断した。特に、米空母打撃群の接近を抑止できる超音速ミサイルの導入は、イランにとって戦略的な最優先事項となった。

交渉は少なくとも2年前から行われていたが、昨夏のマスード・オライ国防副大臣の訪中によって細部が詰められた。中国側は、国有企業である中国航空宇宙科学工業集団(CASIC)を通じてCM-302を供給する構えだ。同社はこのミサイルを「世界最高の対艦ミサイル」と位置づけ、空母や駆逐艦の撃破が可能であると宣伝している。

中伊の経済・軍事構造と国際的な波及

中伊両国の結束を支えているのは、強力なエネルギー依存関係である。中国は米国の経済制裁を無視する形でイラン産原油を輸入し続けており、イランの輸出原油の約9割が中国市場へ流れている。今回の兵器取引における決済手段として、現金ではなく石油による物資交換(バーター取引)が採用されている点は、ドル経済圏から排除された両国にとって合理的な産業構造の帰結といえる。

また、イランはCM-302以外にも、地対空ミサイル(MANPADS)や弾道弾迎撃システム、さらには宇宙空間での米軍の優位を切り崩すための対衛星兵器の取得についても意欲を示している。これらは、中国にとっても自国の軍事技術を実戦環境で検証する機会となり得る。

一方で、この取引は国際社会が課す武器禁輸措置に対する明白な挑戦でもある。2006年に課された禁輸措置は一時停止されていたが、核合意を巡る対立から昨年9月に再開されたばかりである。中国側は公式には「交渉については承知していない」との立場を崩していないが、習近平国家主席は昨年9月の軍事パレードにおいて、イランの主権と国家的尊厳を支持する姿勢を鮮明にしている。

ホルムズ海峡封鎖リスクと米中首脳会談の行方

軍事緊張の物理的な焦点となっているのが、世界の原油輸送の20%を担うホルムズ海峡である。イランは先週、同海峡を一時的に閉鎖した上で、中国・ロシアとの合同軍事演習を実施した。CM-302が海峡周辺に配備されれば、米海軍の活動範囲は極めて制限されることになり、エネルギー価格の暴騰を招くリスクが指摘されている。

興味深いのは、中国自身にとってもホルムズ海峡の封鎖は石油輸入の45%が影響を受けるという諸刃の剣である点だ。それでも中国がイランへの兵器供与を推し進めるのは、中東における米国の支配的な影響力を削ぎ、多極的な国際秩序を構築したいという政策意図があるためと考えられる。

4月に予定されている米中首脳会談において、トランプ大統領はこのミサイル問題を取引材料にする可能性が高い。しかし、イラン国内では「米国対ロシア・中国の戦場」と化している現状を歓迎する声もあり、大国間の思惑が複雑に絡み合う中で、中東の安全保障環境はかつてない激動の時代に突入しようとしている。

[出典]

[関連情報]

#イラン #中国 #ミサイル #中東情勢 #トランプ大統領 #軍事 #エネルギー安全保障

タイトルとURLをコピーしました