独メルツ首相が初訪中 「中国依存」脱却と経済協力の板挟み、新たな均衡点探る

メルツ独首相が初訪中、経済協力と「リスク低減」の均衡模索

ドイツのメルツ首相は25日、就任後初となる中国訪問を開始した。習近平国家主席や李強総理との会談を通じ、巨大市場での経済協力と、特定の国への過度な依存を抑える「デリスキング(リスク低減)」の両立という難題に挑む。今回の訪中はドイツの国際公共放送ドイチェ・ヴェレ(DW)などが報じた。

メルツ氏は出発前、中独の経貿関係について「公平で透明な競争」を基盤とすべきだと強調した。ドイツにとって中国は米国を抜いて最大の貿易相手国だが、近年は中国側の産業補助金や人為的な為替操作、輸出政策により、ドイツ側の貿易赤字は約890億ユーロ(約16兆3000億円)にまで拡大している。かつての重要輸出市場だった中国は、いまや欧州市場を脅かす強力な構造的競争相手へと変貌を遂げた。

産業構造の変化と「公平な競争」の要求

ドイツ政府内では、重要技術や原材料の対中依存を抑制する動きが加速しているが、実態としての「脱依存」は遅れている。2025年には中国からの輸入額が前年比8.8%増加するなど、むしろ依存が強まっている側面もある。特にレアアースなどの供給網は依然として中国に握られており、多くの技術分野で不可欠な原材料の確保はドイツ経済の急所となっている。

こうした中、メルツ首相は「デリスキング」を改めて掲げ、重要技術やサプライチェーンにおける単一市場への依存低下を主張した。ただし、この戦略は中国のみを対象としたものではなく、トランプ米政権による関税圧力など、不安定化する跨大西洋関係も念頭に置いたものだ。メルツ氏は、完全な経済断絶(デカップリング)には「世界を安全にせず、共通の課題に対処する機会を失う」として明確に反対している。

企業戦略と政治的和解の「幻想」

今回の訪中には、フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツといった自動車大手を含む約30社の経済代表団が同行している。ドイツ企業にとって中国は依然として不可欠な成長・革新の拠点であり、56%の企業が現地での事業拡大やパートナーシップ強化を検討している。政府の脱依存方針と、企業の拡張意欲の乖離をいかに埋めるかが大きな課題だ。

特に電気自動車(EV)分野では、中国勢による本土市場での攻勢と欧州市場への進出が加速しており、ドイツ車メーカーは防衛戦を強いられている。ドイツ政府は、公共調達において欧州製品を優先する「バイ・ヨーロピアン」戦略などを議論しているが、自由貿易の維持と自国産業保護の板挟み状態にある。

メルツ首相は、迅速な政治的和解には「幻想」を抱かないよう警告しており、中国の外交政策や人権状況、さらには台湾海峡のリスクについても言及する構えだ。

分析:地政学的リスクと「リアリズム」の再定義

地政学的な駆け引きと産業再編が交錯する中、メルツ氏の北京訪問は単なる外交行事ではない。それは、巨大な市場機会と激しさを増す構造的競争の間で、ドイツの対中戦略における「リアリズム」を再定義する試みである。

専門家は、ドイツにはまだ「欧州市場へのアクセス権」という強力な交渉カードがある。過剰生産能力を抱える中国にとって、欧州市場は死守すべき重要拠点だからだ。メルツ氏は今回の訪中を通じ、経済的利益を確保しつつも、一方的な依存関係を打破するための新たな均衡点を見出せるかが焦点となる。

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