米最高裁がトランプ関税に違憲判断 3月末の訪中を前に習近平政権が貿易交渉で優位か

米最高裁がトランプ関税に「待った」 3月末の首脳会談を前に交渉優位は中国か

米連邦最高裁判所が20日、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき実施してきた広範な追加関税を「大統領の権限逸脱」として違憲と判断したことで、米中貿易戦の構図が劇的に変化している。3月末に予定されているトランプ氏の訪中を目前に、対中圧力の最大の武器であった高率関税が法的に消失したことは、米中交渉の主導権が北京側に移る可能性を強く示唆している。台湾の中央通信社などが伝えた。

米最高裁の判断により、トランプ第2次政権が中国に対して課してきた追加関税はすべて無効となった。これにより、中国は米国の同盟国と同様に、米国が全世界に対して課す15%の一般関税に直面するだけで済む状況となった。さらに、この15%関税は通商法122条を根拠としているが、その有効期間はわずか150日間に限定されており、延長には議会の承認が必要となるなど、これまでの強硬な手法と比較して制約が極めて多い。

米ブルームバーグ通信は、トランプ氏がいかなる理由であれ迅速に関税を引き上げる能力を失ったことで、習近平国家主席はより多くの交渉カードを携えて会談に臨むことになると指摘した。首脳会談を目前に、米国の対中制裁の「武器庫」が司法によって大幅に削られた形だ。

司法の壁とトランプ氏の「プランB」 縮小する対中圧力の武器庫

最高裁は、トランプ氏が依拠していたIEEPAの適用を否定し、議会の承認なしに大統領が一方的な関税を課す権限はないと断じた。昨年には一時145%にまで達した対中追加関税という「巨大な大棒(こん棒)」が失われた影響は計り知れない。

トランプ政権は即座に反発し、国際収支の危機などを理由に大統領に関税権限を与える「通商法122条」による代替案を打ち出したが、これはあくまで一時しのぎに過ぎないとの見方が強い。元米通商代表部(USTR)代行次席代表のウェンディ・カトラー氏は、トランプ氏が今後301条(不公正貿易慣行への制裁)や232条(安全保障上の脅威)に基づく調査を再開することで関税を維持しようとする可能性を指摘するが、それらには数ヶ月に及ぶ法的手続きが必要であり、即効性は期待できない。

この法的な空白期間は、中国にとって絶好の機会となる。北京の智庫(シンクタンク)関係者は、米国の法的不確実性が高まったことで、中国側は米国の関税政策を「一方的かつ違法な措置」として国際社会にアピールする姿勢を強めている。

習近平政権に「大豆カード」が戻る 半導体や台湾問題で譲歩迫る北京

中国・復旦大学アメリカ研究センターの呉心伯主任は、関税撤廃を前提としていた米国産大豆の大量購入などの譲歩案は、関税そのものが違法とされたことで根拠を失ったと指摘する。これにより、中国は「大豆カード」を再び手中に収め、交渉においてより有利な立場を確保した。

習近平政権は今後、以下の項目で米国に対し強い譲歩を迫る構えだ。

  • 先端技術の獲得: 先端半導体やAI関連技術の輸出規制緩和、および中国企業に対するエンティティ・リスト(禁輸リスト)の適用除外。
  • 台湾問題の進展: 米国による台湾への武器売却の削減や、「台湾独立反対」の立場におけるより踏み込んだ表現の要求。
  • レアアースの武器化: 中国が世界の供給網を握るレアアースの安定供給を保証する見返りとして、米国側に経済的・政治的譲歩を求める。

特に11月の中間選挙を控えるトランプ氏にとって、農業州の票田を左右する大豆輸出の停滞は致命傷になりかねない。中国側はこのトランプ氏の政治的な弱みを突き、訪中時の合意内容を自国に有利な方向へ誘導する戦略をとっている。

展望:不透明な「150日間」の攻防と産業界への影響

トランプ政権が今後、301条調査などの代替手段を駆使して対中圧力を再構築する構えであることは間違いないが、司法の裁定による「武器庫」の縮小という事実は重い。産業界では、これまで高率関税を前提としていたサプライチェーンの再編に動揺が広がっており、米国への輸入コスト低下を歓迎する声がある一方で、中国製品の流入による国内産業への影響を懸念する声も根強い。

米中首脳会談を3月末に控え、主導権争いは司法の判断という予想外の変数によって、中国側に有利な局面が生まれつつある。トランプ氏が今回の司法の打撃をいかに跳ね返し、北京で習近平氏との「ディール」を成立させるのか、あるいは中国側の攻勢に屈する形になるのか。今後150日間の法的・政治的攻防が、今後の国際経済秩序の行方を決定づけることになる。

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