
米比同盟の新局面:先端ミサイルと無人機の配備拡大
米国とフィリピンは2026年2月17日、マニラで開催された年次会合において、南シナ海における安全保障協力を劇的に強化する共同声明を発表した。この合意の柱となるのは、フィリピン国内への米軍の先端ミサイルシステムおよび無人機(ドローン)システムの配備拡大である。この動きは、同海域で「不法、強迫、侵略的かつ欺瞞的な活動」を強める中国を念頭に置いたものであり、地域の軍事的均衡を大きく変える可能性を秘めている。
共同声明では、2026年中の大規模な合同軍事演習の実施や、フィリピン軍の近代化に対する米国の包括的な支援が明記された。特に注目されるのが、地上発射型中距離ミサイルシステム「タイフォン(Typhon)」の追加配備である。タイフォンは、射程1600キロメートルを超える巡航ミサイル「トマホーク」や、多目的ミサイル「SM-6」を発射する能力を持つ。これにより、フィリピン北部から中国本土の主要拠点や南シナ海の人工島を直接射程に収めることが可能となり、米軍にとっての「対艦・対地攻撃のプラットフォーム」としてのフィリピンの価値が飛躍的に高まっている。
スービック湾の「再拠点化」と第一列島線の防衛戦略
ミサイル配備の拡大と並行して、米軍はかつての巨大拠点であるスービック湾の再活用を加速させている。米海兵隊のロジャー・ターナー第3海兵遠征軍司令官は2月10日、2026年夏季にスービック湾の戦略的拠点を正式に稼働させる方針を明らかにした。ここは単なる寄港地ではなく、車両や弾薬、予備兵装をあらかじめ配置する「物資事前集積拠点(Prepositioning site)」として機能する。
この拠点化の最大の狙いは、米軍の補給線を劇的に短縮することにある。有事の際、グアムやハワイからの増援を待つことなく、最前線である第一列島線内で部隊が即応展開できる体制を整える。ターナー中将は、中国が展開する海上民兵による「グレーゾーン」での組織的な嫌がらせについても、すでに効果的な反制手段を確立していると自信を示した。米海兵隊が進める「遠征前方基地作戦(EABO)」の一環として、小規模で分散した部隊が敵のミサイル網を回避しながら、スービック湾を起点に機動的に展開する構想が現実味を帯びている。
中国の経済的威嚇と比外務省の猛反発
一連の防衛強化に対し、中国側は激しい外交的・経済的圧力を強めている。在フィリピン中国大使館は、米比の軍事協力が二国間関係に深刻な損害を与え、「数百万人規模の失業を招く」として経済的報復を示唆する異例の警告を行った。しかし、マルコス政権下のフィリピン外務省は、これを「経済協力を人質にした露骨な脅迫である」と断じ、即座に猛反発した。
フィリピン当局のこうした強硬姿勢の背景には、国内世論の中国に対する不信感と、米国の防衛コミットメントへの信頼がある。ロムアルデス駐米比大使は、兵器配備は「純粋な抑止」が目的であるとした上で、「中国が侵略的行動を繰り返すほど、我々が対抗手段を持つ決意は強固になる」と言及した。中国による「力による現状変更」の試みが、皮肉にも米比同盟の結束をかつてないレベルまで引き上げている。
今後、フィリピン最北端のバタン諸島への対艦ミサイル配備や、スービック湾での反スパイ工作の強化など、多層的な防衛網の構築が進む見通しだ。第一列島線をめぐる米中の対立は、軍事技術と外交戦の両面において新たな段階に突入している。
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