
民泊施設を拠点とした前代未聞のスパイ工作
フランス・パリ検察庁は2月4日、中国のためにスパイ活動に従事した疑いで、中国籍の2名を含む計4人の身柄を拘束したと発表した。今回の事件で特筆すべきは、容疑者らが一般の民泊施設を拠点とし、高度な技術を用いて衛星通信データを直接標的にしていた点にある。
事件の発端は1月30日、フランス南西部ジロンド県に位置する民泊施設の近隣住民による通報であった。住民は施設に直径約2メートルの巨大な衛星アンテナが設置されていることに不審を抱き、同時期に地域一帯でインターネット通信障害が発生したことから警察へ連絡した。翌1月31日、捜査当局が家宅捜索を実施したところ、アンテナに接続された特殊なコンピュータシステムが発見された。この装置は特定の周波数を妨害し、軍事組織間の通信を含む衛星データを不法に傍受・取得できる機能を備えていたという。
スターリンクと軍事機密を狙う「エンジニア」の正体
検察当局の調査によれば、逮捕された中国籍の2名はビザ申請時、職業を「無線通信機器の研究開発企業のエンジニア」と自称していた。彼らの主目的は、イーロン・マスク氏率いるスペースX社が運営する低軌道衛星通信ネットワーク「スターリンク(Starlink)」のデータや、その他の軍事関連組織の機密情報を窃取し、中国国内へ転送することであったとされる。
スターリンクは、現代の軍事通信において極めて重要なインフラとなっている。そのため、このネットワークを標的とした傍受工作は、国家の重大な安全保障上の脅威とみなされる。事件に関与した残りの2名は、傍受に必要な特殊デバイスを不法に輸入した疑いが持たれており、サイバー犯罪部門による押収機器の解析が急ピッチで進められている。本件は「国家の重大な利益を損なう情報の外国勢力への提供」という重罪に該当し、有罪となれば最高で15年の禁錮刑が科される可能性がある。
欧州全域で激化する対中防諜戦の背景
今回の摘発は、欧州各国で相次いで表面化している中国関連スパイ事件の氷山の一角に過ぎない。中国外務省は5日、一連の容疑を「悪意ある誹謗中傷」と断じ、自国公民の権利保護を強く主張したが、実態として欧州での摘発事例は枚挙にいとまがない。
直近の事例を振り返ると、2026年1月にはチェコ警察が中国情報機関のために活動した容疑者を逮捕した。またフランス国内でも、2025年12月に応用数学の教授が中国代表団に機密性の高い場所への立ち入りを許可したとして、外国勢力との共謀罪で訴追されている。ドイツでも、米軍基地勤務経験のある人物が中国に情報を流したとして裁判が進んでいる。
こうした事態を受け、英国の保安局(MI5)は「中国政府の工作員が日常的に欧州の国家安全保障に対する脅威となっている」と警鐘を鳴らし続けている。従来の人的なスパイ工作に加え、今回のように最先端の通信技術を悪用したシギント(信号情報)活動が一般の居住区である民泊施設を隠れ蓑に行われている現実は、各国の防諜当局にとって新たな課題を突きつけている。
[出典]
- 涉嫌为中国从事间谍 四人在法国被捕 – DW
- 法拘4人涉為華從事間諜活動 包括2名中國公民 – on.cc東網
- 法國拘4人疑為中國間諜 住airbnb期間涉從Starlink竊軍事資料 – Yahoo新聞
[関連情報]
#フランス #中国スパイ #スターリンク #安全保障 #サイバー防衛

