英首相訪中にトランプ氏「危険」と警告、英高官は「無視は狂気」と猛反論

英国のキア・スターマー首相は1月31日、4日間にわたる中国訪問を終え、次なる訪問先である日本へと向かった。英国政府首脳として8年ぶりとなった今回の訪中は、冷え切った英中関係を「リセット」し、経済実務面での協力を再起動させる重要なターニングポイントとなった。しかし、この動きに対し、米国のトランプ大統領が「非常に危険だ」と公然と批判を展開。同盟国間の足並みの乱れが浮き彫りとなる中、英国は「国家利益」を掲げて独自の道を突き進んでいる。

経済実務の「再起動」と象徴的な勝利

スターマー政権が今回の訪中で最も重視したのは、イデオロギーの対立で停滞した経済関係の正常化である。北京での首脳会談や上海でのビジネスフォーラムを経て、英国は具体的な実利を手にした。

まず、対中輸出の柱の一つであるスコッチウイスキーの関税率が10%から5%へと引き下げられた。さらに、30日以内の滞在に対する英国市民へのビザ免除措置の実施や、2021年から続いていた英国会議員7名に対する中国側の制裁解除など、外交上の「象徴的な勝利」も収めている。習近平国家主席はスターマー首相に対し、全ての議員が自由に中国を訪問できることを確約した。

民間レベルでも大きな進展があった。英国の製薬大手アストラゼネカが2030年までに中国へ150億ドルを投資する計画を表明したほか、人気キャラクター「ラブブ(LABUBU)」を展開する中国のポップマート(Pop Mart)が英国に拠点を設立し、欧州展開の拠点とすることを決定した。ロンドン側の発表によれば、今回の訪問に伴う輸出契約は22億ポンド、投資額などは数十億ポンド規模に達するという。

トランプ氏の牽制とブライアント貿易相の猛反論

こうした英中の接近を、米国のトランプ大統領は苦々しく見守っている。トランプ氏はワシントンで記者団に対し、「彼らがこのようなことをするのは非常に危険だ」と述べ、中国との商業協力が英国やカナダなどの同盟国に不利益をもたらすと警告した。背景には、米国が進める対中デカップリング(切り離し)戦略を同盟国にも徹底させたい思惑がある。

しかし、英国側はこの「警告」を真っ向から否定した。クリス・ブライアント貿易担当国務大臣は、トランプ氏の主張を「誤り」だと切り捨て、「中国は世界第2位の経済大国であり、英国にとって第4位の輸出市場だ。世界舞台における中国の存在を無視しようとするなら、それは間違いなく狂気の沙汰だ」と猛反論を展開した。

さらにブライアント氏は、トランプ氏自身も4月に訪中を計画しているという矛盾を突き、中国との関わりを一切拒絶しようとする姿勢を「ナイーブで幼稚」と断じた。保守党政権下で「黄金時代」から「氷河期」へと極端に揺れ動いた対中政策を批判し、現実的な「安定した一貫性のある関係」の必要性を強調したのである。

「グローバルな不安定化」への現実的処方箋

スターマー首相が直面しているのは、米国からの圧力だけではない。英国内でも保守党を中心に「スパイ活動を行う国への融和」や「人権問題の軽視」を懸念する声が根強い。保守党のバデノック党首は、今回の訪中を「国際ルールを無視する国への安易な接近」と厳しく非難している。

これに対し、スターマー首相は「私の指導原則は英国の国家利益を維持することだ」と説明する。世界情勢が流動化する2026年において、貿易、気候変動、安全保障など、中国の関与なしには解決できない課題が山積しているという現実解だ。米国との緊密な同盟関係を維持しつつも、経済的には中国市場の果実を確保するという戦略である。

今回の訪中で「英中高官級安全対話」の再開も合意された。これは、単なる経済協力に留まらず、意見の相違がある分野こそ対話のチャンネルを確保すべきだという労働党政権の外交哲学を反映している。トランプ氏による「米国第一主義」の再来が予見される中、英国が示したのは、米中の間でバランスを取りながら自国の生存圏を確保しようとする実務的な生存戦略といえる。

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