中国モバイルバッテリー、昨年140万台をリコール 機内爆発事故で安全規制が厳格化

中国国内で相次ぐ爆発事案、リコール台数は過去最大規模へ

2026年1月21日、国家市場監督管理総局は記者会見を開き、2025年度におけるモバイルバッテリーのリコール(回収・無償修理)状況を発表した。同局の督促により実施されたリコールは計10件で、対象台数は約140万台(139万7700台)という驚異的な数字に達した。中国メディアの央視新聞などが伝えたところによれば、これはモバイルバッテリーという単一品目において極めて異例の規模であり、当局が製品の安全性を「国家レベルの課題」として捉えていることを示している。

2025年は、中国全土でモバイルバッテリーに関連する発火・爆発事故が頻発した一年であった。特に象徴的だったのが、同年3月に発生した杭州発香港行きのHX115便における火災事故である。高度数万フィートを飛行中の機内で、大手ブランド「ROMOSS(ローマ仕)」製のバッテリーが熱暴走を起こし、機内は一時パニック状態に陥った。この事故を重く見た当局は、製品の安全性を確保するための「集中整備(一斉取り締まり)」と徹底した品質改善指導を断行。メーカー各社に対し、欠陥の有無を精査し、リスクが認められる場合は即座にリコールを実施するよう厳命した。

「3C認証」の義務化と航空業界の緊急措置

一連の事故を受け、中国政府は規制の「網」を急速に狭めている。その中核となるのが、中国強制認証制度(3C認証)の厳格な運用だ。従来、モバイルバッテリー市場は参入障壁が低く、一部の零細メーカーが粗悪なセルを使用した低価格製品を乱売する「過度な低価格競争」が常態化していた。

中国民用航空局は2025年6月28日から、3Cマークの表示がないもの、あるいは表示が不明瞭な製品、さらにはリコール対象となっているモデルやロットのモバイルバッテリーについて、国内便への持ち込みを全面的に禁止する緊急通知を施行した。これは旅客の安全を守るための実効的な措置であると同時に、市場から規格外品を排除するための強力なフィルタリング機能として働いている。

当局による一連の行政指導と規制強化の結果、関連する苦情件数は2025年7月のピーク時から85%も減少し、現在は沈静化の兆しを見せている。しかし、これはあくまで表面的な数字に過ぎない。市場監督管理総局の史新章副局長は、今後の課題として「製品のライフサイクル全体を通じた品質管理体系の構築」を挙げている。これは、単なる事後の回収にとどまらず、設計・製造・流通・廃棄に至る全工程で透明性を確保し、企業の技術革新を支援することで、業界全体の「質の向上」を図る政策意図が透けて見える。

淘汰される零細メーカーと企業の生き残り戦略

リコール台数の増加は、裏を返せば「不良品を許容しない」という当局の強い意志の表れでもある。今後は、リコール制度の適正な運用を監視する体制がさらに強化され、欠陥を隠蔽したり回収を怠ったりした企業には、事業停止を含む厳正な法的処分が下される見通しだ。

企業側には、低コストのみを追求する戦略からの脱却が求められている。江蘇省などの製造拠点では、バッテリーセル供給側の問題と発火事故が指摘されるケースも増えており、サプライチェーン全体での品質担保が急務となっている。市場は今、安全という付加価値を提供できる大手ブランドと、淘汰される小規模メーカーという二極化の局面を迎えている。モバイルバッテリーという日用品が、「便利さ」から「信頼」の時代へとシフトしたことを、2025年の140万台という数字は如実に物語っている。


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