上海オフィス空室率なお24% 中国当局はローン緩和で商業不動産市場のてこ入れ狙う

上海オフィス市場の現状:供給過剰と需要構造の変化

2025年の上海商業用不動産市場は、歴史的な供給過剰と経済構造の転換が重なり、厳しい調整局面が続いた。不動産サービス大手JLL(ジョーンズ ラング ラサール)の最新報告によると、上海のグレードA(甲級)オフィスビルのネット吸収量は約50万平方メートルと前年比で微増したものの、新規供給がそれを上回るペースで続いた。その結果、市全体の平均空室率は24.3%に達し、前年から1.1ポイント上昇する結果となった。

賃料についても下落基調に歯止めがかかっていない。中央ビジネス地区(CBD)では1日1平方メートルあたり6.4元(前年比12.1%減)、非CBDエリアでは4.2元(同11%減)と、二桁の下落を記録している。しかし、詳細に見ると変化の兆しも現れている。2025年第4四半期の賃料下落幅はそれまでの四半期平均を下回っており、市場関係者の間では「需要収縮が終盤に入り、底打ちに向けた足固めが始まった」との見方が広がっている。

需要の柱となっているのは依然として金融業界(23%)だが、特筆すべきは人工知能(AI)を中心としたテクノロジー業界(17%)の躍進だ。既存の製造業や伝統的IT企業の需要が停滞する一方で、生成AI関連のスタートアップや半導体設計などの先端分野が、上海の科学技術イノベーションセンターとしての機能を背景にオフィス面積を拡張させている。

中国当局による異例の金融緩和:頭金比率30%への引き下げ

市場の沈滞を受け、中国政府は異例の速さでテコ入れ策を講じた。中国人民銀行と国家金融監督管理総局は1月17日、商業用不動産(商住両用物件を含む)の購入ローンにおける最低頭金比率を、従来の50%から30%以上に引き下げると発表した。これまで、商業用不動産は住宅以上に投機抑制の対象とされ、一部の優良プロジェクトでは60%以上の自己資金を求められることも少なくなかった。

今回の政策変更の意図は明確だ。第1に、高止まりしていた自己資金の負担を軽減することで、企業の資産購入や個人投資家の参入を促し、市場に流動性を注入することである。第2に、積み上がった不動産在庫の処分を加速させ、開発デベロッパーの資金繰りを改善させる狙いがある。特に上海のような一等地の物件は、価格の下落によって利回りが改善しており、この緩和策が呼び水となって大口取引が活発化する可能性がある。

北京市場の苦境と、問われる「十五五」計画の実行力

上海と同様の課題を抱えるのが首都・北京の市場だ。北京の甲級オフィス空室率は2025年末時点で15.89%と、上海に比べれば低い水準で推移し、第4四半期には微減を見せた。しかし、これはテナント誘致のための大幅な賃料引き下げの結果であり、収益性は悪化している。TMT(テクノロジー・メディア・通信)セクターが需要を支えているものの、今後も大規模な新規供給が予定されており、賃料の下落圧力は2026年以降も続く見通しだ。

中国メディアは、今回の金融緩和策が単なる一時しのぎに終わるのか、あるいは市場の転換点となるのかを注視している。2026年は中国の「第15次5カ年計画(十五五)」の初年度にあたり、政府はAIや量子技術などの未来産業への投資を加速させる方針だ。これらの新興産業がどれだけ実需としてオフィス市場を支えられるかが、上海や北京といった大都市の商業不動産が復活するための鍵となるだろう。

今後は、単なる面積の拡大ではなく、ストック(既存資産)の質向上や運営の効率化といった「質的転換」が不動産各社に求められる。

[出典]

[関連情報]

#上海不動産 #オフィス空室率 #中国経済 #商業用不動産 #AI需要

タイトルとURLをコピーしました