
軍委員の45.5%が欠席する異常事態
星島日報の報道によると、2026年1月14日に閉幕した中国共産党中央規律検査委員会(中紀委)第5次全体会議において、軍事系統の委員22人のうち、10人が欠席するという驚くべき実態が明らかとなった。軍委員の欠席率は45.5%に達し、過去最高を記録している。中国当局は軍高層部の人事異動を秘匿する傾向にあるが、外部観測においては重要会議への出席状況からその内情を窺う手法が取られている。
今回の欠席者10人のうち、8人は中将という高い階級にあり、海軍、武装警察、中部戦区などの要職を務めていた政治工作幹部が中心である。具体的には、中紀委常務委員を務めていた陳国強中将や、海軍副政治委員の冷少傑中将、程東方中将らが主席台から姿を消した。中央社の指摘によれば、2025年10月に開催された「中国共産党第二十期中央委員会第四次全体会議(四中全会)」においても、軍の中央委員42人のうち63%にあたる27人が欠席しており、そのうち22人が上将であった。今回の事態は、上将クラスから中将クラスへと粛清の波が着実に拡大していることを示唆している。
苗華氏の影響力根絶と「東南幇」へのメス
中央社が伝えた専門家の分析によると、現在進行している大規模な粛清(清洗)の直接的な動機は、単なる腐敗撲滅にとどまらず、軍内に深く根を張る特定の派閥影響力を根絶することにある。
焦点となっているのは、すでに失脚した元中央軍事委員会政治工作部主任、苗華氏の存在である。淡江大学の掲仲助理教授の解析によれば、苗氏は習近平総書記以外で唯一、軍種や機関を横断する強大な人事影響力を持っていたとされる。その勢力は「東南幇(東南派)」とも呼ばれ、五大戦区の司令官や政治委員など、軍の職能機関の重要ポストを広範囲に掌握していた。習氏がこの広範な人脈を政権にとっての「隠れた脅威」であると判断した可能性が高く、習氏は苗氏の旧部下を排除することで、自らへの絶対的な忠誠を誓う勢力への再編を急いでいる。
独裁者が陥る「防衛者のジレンマ」と実戦能力への懸念
中央研究院の蔡文軒研究員は、この大規模な整頓の背景には政治学で「防衛者のジレンマ」と呼ばれる構造的な問題が潜んでいると指摘する。独裁者は自らの地位を保つために強力な軍隊を必要とするが、その軍隊の指導層が有能すぎたり、強い影響力を持ったりすることは、独裁者自身の安全を脅かす挑戦となる。かつてのスターリンによる赤軍大粛清と同様、習氏は軍が「戦いに強すぎて自らの安全に影響を及ぼすリスク」を許容できず、たとえ対外的な戦闘能力が一時的に低下したとしても、制御しやすい人物を重用する道を選んでいる。
実際に、習氏は東部・中部戦区の司令官を昇格させるなど軍の布陣を頻繁に入れ替えているが、現在登用されている指揮官や指導層は、先代の将官に比べて経歴や実戦経験が不足しているとの指摘がある。現代戦において不可欠な複数部門間の連携能力が低下し、重大な突発事態への応急対応に支障をきたす恐れがある。権力基盤の固め直しと引き換えに、中国軍の実戦能力低下という深刻なリスクを露呈させているといえるだろう。
蔡氏の予測によれば、習氏の健康状態が依然として中国政治の最大変数である中、2027年の第21回党大会に向けて、軍の「忠誠再編」はさらに加速する見通しである。
[出典]
[関連情報]
- 解放軍で前例なき大粛清 上将28人が失脚・消息不明、忠誠再編で「刮骨療毒」進行
- 習近平氏、東部・中部戦区司令官を昇格:空軍重視 of the 布陣で台湾有事と首都防衛を強化 軍内粛清は終結か?
- 中国軍、反腐敗で歴史的粛清 何衛東・苗華ら上将9人を同時処分 1976年以来最大規模
#中国軍 #習近平 #中紀委 #苗華 #防衛者のジレンマ

