
南アフリカのケープタウン近郊、サイモンズタウン港で2026年1月10日に開幕したBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン等)による海上合同演習「平和の意志-2026」が、国際社会の大きな注目を集めている。BRICSの名を冠した初の海上合同演習は、中国主導のもとで加盟国間の安全保障協力を誇示する場となるはずだった。しかし、その実態は、米国のトランプ政権による強力な圧力と、加盟国内部の複雑な利害対立によって、当初の「結束」とは程遠い、乱れの露呈する場となっている。
中国による「イラン消し」と南アフリカの対米配慮
今回の演習において最も異様な現象は、中国メディアによる「イラン排除」の報道姿勢だ。新華社などの中国官製メディアは、自国海軍のミサイル駆逐艦「唐山」や総合補給艦「太湖」の活躍を強調する一方、2024年に新加盟したイランの参加については一切言及していない。これに対し、欧米メディアはイランの駆逐艦などが現地に到着したことを確認している。
この背景には、主催国である南アフリカが直面している深刻な外交リスクがある。南アフリカは現在、第2次トランプ政権との間で最悪の関係にあり、米国からの援助停止や関税引き上げといった経済制裁を受けている。トランプ大統領は最近、イランと取引を行う国に対し一律25%の追加関税を課す方針を表明しており、経済的困窮に喘ぐ南アフリカにとって、米国との決定的な対立は避けなければならない課題だ。現地報道によれば、南アフリカ政府は米国への特恵関税措置(AGOA)維持を優先するため、イラン側に対して海上フェーズへの実戦参加を見合わせるよう要請し、事実上の「オブザーバー参加」への格下げを求めたとされる。中国もこの南アフリカの窮状を汲み取り、演習の政治的色彩を薄めるためにイランの存在を報道から抹消したと考えられる。
BRICSの変質とトランプ政権の経済圧力
「平和の意志-2026」は、BRICSが単なる経済ブロックから、欧米主導の秩序に対抗する軍事・安全保障の枠組みへと変質しようとする中国の戦略を象徴していた。しかし、今回の演習で露呈したのは、その戦略の脆さだ。インドやブラジルといった主要メンバーが参加を見送り、中核を担うはずだったイランまでもが米国の圧力を受けて後退した事実は、BRICSが決して一枚岩ではないことを示している。
トランプ政権は、BRICS諸国が進める「脱ドル化」や西側諸国に対抗する金融枠組みの構築を「反米政策」と断じ、強力な経済的対抗措置を講じている。米アフリカ軍(AFRICOM)は、今回の演習を航行の自由を脅かす動きとして監視を強めており、南アフリカ国内の野党からも「ロシアやイランといったならず者国家との結びつきは国家の利益を損なう」との批判が噴出している。中国が進める軍事同盟化への道筋は、米国の執拗な経済圧力と加盟国内部の分断により、早くも戦略の修正を迫られる事態となっている。
[出典]
- 金磚國家首次海上聯合軍演登場 陸媒獨漏「伊朗」引關注 (中時新聞網)
- South Africa Risks Angering Trump by Hosting Navies of Iran, Russia, China (The Wall Street Journal)
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